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*5*
サーヤは目を見開き、必死に何があったのかを思い出そうとした。
すると、断片的にだが映像が流れ込んでくる。
魔王の力が放たれたあとだった。
「サーヤ!!」
レイヤが叫ぶ声が聞こえたのと同時に、サーヤは力を解放していた。
激しく強い風がサーヤにたたきつける。
体が動くままに、母から受け継いだ破魔の笛を口元へ近づける。
次の瞬間、立て続けに驚くことが起きた。
破魔の音色が紡ぎだされ、魔王の動きが止まった。
今まで嫌というほど感じていた悪魔の気が、あっという間に消えていく。
きっと、城にも犇いていたのだろう、上級の悪魔達も断末魔を上げ消えていく。
それは魔王にも同じことが見られた。
「う・・・あああああっ!!!!」
かつて、自分達の母親をだまし、傷つけ、最後には罵った張本人。
怒りが収まることはなかった。
激情のまま音色を紡ぎ続ける。
「あああああああ!!!!」
魔王は、魔界の崩壊とともに霧となり消えていった。
「おわ・・・った・・・・」
サーヤが崩れるようにすわり込む。
もう、何の力も残っていなかった。
でもここで頑張らなければ、魔界の崩壊に飲み込まれるかもしれない。
そう考え、サーヤはマテリアルたち、ルナたちのところへフラフラと歩みよっていく。
「紗綾ッ!バカ・・・心配かけるな・・・!」
魔梨が、今までこらえていただろう心配の言葉を、サーヤに言う。
「ごめん、魔梨・・・」
「急ごう、サーヤちゃん。」
「このままだと飲み込まれるぞ」
ルナとタイの言葉に頷き、サーヤ、レイヤ、ユウヤ、魔梨は力をこめる。
すると、程なくして人間界への道が現れた。
マテリアルたちも、ルナたちも、次々に飛び込んでいく。
足元が危うくなっていた。
気をつけて入って行く皆のあとを、サーヤは最後にはいろうとする。
気を抜きすぎたのだろうか。
目の前にいた霧亜が、フラリと足を滑らせた。
「あっ・・・・・」
そのままグラリと傾き、魔界の闇に吸い込まれ・・・・そうになった。
何故落ちなかったのか?
理由は簡単だ。
もう足場もないし、落ちればそのまま巻き込まれる。
それを解ってのことだろうか。
サーヤは、自分を犠牲にして・・・・・・・
霧亜の背を、押し・・・・
闇に落ちていった。
+++
第一部 完