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*11*
第二話 【宣戦布告】
*真奈side*
逢坂くんが人を掻き分けて、クラス発表を見に行ってくれている間、私はある人を探していた。
そのある人というのは…
「よぉ、真奈」
そうこの男の子、浅井凜だ。
「凜!」
私はそう言いながら、凜の所へ駆け寄った。
凜は面倒くさそうな顔をしながらも、笑っていた。
「相変わらず、お前ちいせーなぁ?」
「関係ないでしょ?というか、私156センチになったもん!1センチ伸びたもん!」
「中学の時とあんま変わんねーんじゃねぇか?俺は中3の時から10センチ伸びたぞ?」
「う、うるさい」
私は懸命に抗議するが、177センチもある凜に言い包められては、反論のしようがない。
「あ、それよりさぁ、お前のこと紹介したい奴がいるんだよなぁ」
「え…」
「大丈夫だ。俺が隣にいてやっから。名前言うくらいでいいしさ」
「う、うん…」
私はそう言われながらも、心の中で心配していた。
先程、逢坂くんに会った時に皆さんもわかっただろうが、私は自分の意思や思いを人に伝えるのが苦手なのだ。
コミュニケーション障害というわけではない。
重度の人見知りといったところだ。
だから、慣れ親しんでいる凜とは普通に話すことが出来るし、嫌なことは嫌、好きなものは好きと言い切ることが出来る。
「そういやお前、この学校来たことねーよな?」
「えーっと、そうだね。来てないなぁ。凜が桜田中学にいるから、っていう理由だけでここを受験したからね」
「ははは」
「何が可笑しいのよ?」
「いやー、そんな理由だけでこの難関高校を受験してくる奴はお前だけだろーな、と思って」
「また貶された」
「貶してねーよ。褒めてるんだ」
「絶対褒めてない」
こうして再び私たちが言い合っていると、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、綾川さーん!俺たち同じクラスだよー!!」
私は凜との会話を中断して、声のした方を振り向くと、逢坂くんが人を掻き分けてこちらへ戻ってくる途中だった。
「あ、逢坂くんだ」
「誰だ、それ?」
私が逢坂くん、と言った瞬間に不機嫌になった凜。
何か言葉の選択ミスをしたのかな?と思いつつも、逢坂くんに向かって大きく手を振った。
「逢坂くん!こっちー!」
凜と少し話したからか、言葉がスムーズに出てきた。
「あ、綾川さん!聞こえたかもしれないけど…って、その人誰?」
逢坂くんは先程まで笑顔で私の所へ駆け寄ってきたのに、凜の姿を見た途端、怪訝な顔をした。
「えっと、あの、その二人とも何で怒ってるのかはよくわかんないけど、一応紹介しとくね!」
私は睨み合う二人を見ておろおろしながらそう言うと、勝手に紹介を始めた。
「凜。この人はね、逢坂徹くん。通学中にちょっとアクシデントがあって、そこを助けてくれた人なの。で、逢坂くん。こっちはね、幼稚園の頃からの付き合いの浅井凜。いつも人見知りの私を助けてくれるの」
私がそう言い終えると、二人は急に表情が変わって、にこやかな笑顔になった。
そして、誰も何も言ってないのに、お互いに進んで手を出して握り合った。
「よぉ、よろしく。徹くん?」
「どうも初めまして凜くん。君とはあまり仲良く出来なさそうだけどね」
こうして逢坂くんと凜は出会ったのだった。