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*80*
「いいね!」
「やろうやろう!情報屋もいることだしね!」
涼香ちゃんと優那ちゃんは大賛成。
私はただ一人
「やっぱり、恋話は夕食の後でも…」
反抗中。
しかし、その努力も儚く散って消えた。
「駄目だよ、真奈ちゃん。夕食前に聞いて、夕食後にさらに考えるの。
女子の常識だよ?修学旅行って言ったらこうでしょ!」
なんて優那ちゃんに押されて、折れてしまった。
「わかったよぉ…。ちょっとだけだからね」
私が拗ねたように言うと、美樹が笑いながら「ちょっとあれば十分」と言った。
そして、そんなこんなで皆がベットに座り、スタンバイ出来たところで、恋話が始まった。
司会は勿論…
「はいはーい!では、まず好きな人がいる人手を挙げて!」
美樹である。
「じ、実は…」
「あたしも…」
そう言いながら、優奈ちゃんと涼香ちゃんが恥ずかしそうにしながら手を挙げる。
それを見て、私も勇気を出して手を挙げた。
美樹も私と同じタイミングで手を挙げた。
「おっと!?これは皆好きな人がいるパターンですね!ではでは公表しちゃいましょ〜!勿論、このことはこのメンバー以外に口外禁止だよ!?」
「それでも公表はちょっと…」
「うんうん。優那の言うとおり、それは少し恥ずかしいよ」
優那ちゃんと涼香ちゃんが真っ向から否定。
しかし、今日の美樹は粘り強い。
「駄目だよ〜!そりゃあ、あたしだって恥ずかしいけど公表するんだから、2人とも公表しなくちゃいけないよ!?」
「え!?あの美樹が公表してくれんの!?」
涼香ちゃんが目を見開いて、心底驚いた、というような顔をする。
「失礼ね。あの美樹って何よ…」
美樹が怪訝そうな顔で聞き返す。
「いや、その、悪い意味ではなくて、自分のことを一切語らないってい有名な情報屋さんが凄い大胆な事を言い出すな、と思って…」
涼香ちゃんがそう言って目を逸らす。
それに対して美樹は溜め息を吐いて「何だ、そのこと?」と返した。
「そのこと、って結構大きいよ?」
優那ちゃんも参戦。
「んー、あたしだって人間なわけだし?女子なわけだし?たまにはそういうのもいいかなって思うわけじゃん?何か問題が?」
段々と喧嘩腰の口調になって行く美樹。
すこし疎外感を感じているのだろう。
「ううん、そんなことない!美樹のコト聞かせてもらえるなんてみんなに自慢でき…」
優那ちゃんがそう言った瞬間、美樹が冷たい声で
「口外は禁止、だからね?」
と釘をさすように遮った。
そのあまりの迫力に優那ちゃんも
「はい、すいません」
なんて素直に謝っている。
「って、こんなことしてる場合じゃないじゃない!それじゃあ、公表してくよ〜!?じゃあ、まずあたしから!」
そう言って、深呼吸する美樹。
一気に場の緊張感が高まる。
そして美樹が口を開いた。
「あたしの好きな人は…浅井凜です」
暫くの沈黙の後、優那ちゃんと涼香ちゃんが「信じられない!」と叫びだした。
「確かにいつも仲が良いな〜、とは思っていたけど、それは中学の時からだったし、そんな素振りも全くなかったじゃん!」
「優那の言うとおり!全くそんな噂、聞いたことなかった!ねぇ、いつから好きなの!?」
「え…?いつって聞かれてもなぁ〜。多分、一目惚れだけど、これが恋ってのを自覚したのは中2の秋かな?文化祭の時に色々あって…」
「うっそー!?何があったの!?その文化祭で!」
涼香ちゃんが身を乗り出して聞いている。
ベッドから転げ落ちそうだ。
「はい、これ以上は言わなーい!」
「え〜!?」
「涼香、文句言わない!全員の好きな人聞き終えてから答えるから」
「本当!?それじゃあ、次はあたしね!…あたしの好きな人は、C組の篠田斗真(しのだとうま)くんです!」
「やっぱりね〜」
美樹はうんうんと頷きながら聞く。
「え!?美樹、知ってたの!?」
「そりゃあ、このあたしは桜田高校一の情報屋ですから」
「そうだった!それじゃあ、優那の好きな人も知ってる?」
「大体は。でも、あたしの中では候補が3人いるから断定はできない。でも最近はこの人かなって思う人はいるよ」
「え〜?そんなこと言われたら、言うの恥ずかしくなってくるじゃん!」
優那ちゃんが赤くなった方を両手で押さえながら俯く。
「自分だけ逃げるのは無しだぞ〜?あたしだって篠田くんのこと、白状したんだから」
「は〜い。…私の好きな人は、B組の石島くんです!」
「石島くん!?」
私は驚きを隠せずに叫んだ。
すると、優那ちゃんは俯きながら小さく頷いた。
「確かに面白いし、ルックスも成績も普通だけど…。優那ならもっと上の方、狙えたんじゃない?」
美樹が腕を組みながらそう言う。
すると、涼香ちゃんがそれに対して口を挿んだ。
「あたしも初めて優那からそれ聞いた時ね、美樹と同じこと思った!でもさ、優那から色々話聞いてると、優那にとっては、石島は全然違う視点から見えるんだよ。きっと優那にしか見つけられない石島の良い所を、優那は把握してるの。だから、お似合いカップルだとあたしは最近思うようになったね〜」
「まぁ、そうだね。恋の形は色々だし」
美樹も納得したように頷く。
そして、話が途切れた瞬間、一斉にみんなが私の方を向いた。
「な、何…?」
冷や汗を掻いてきた。
「何、じゃないよ?真奈ちゃんも白状しなきゃ」
優那ちゃんが言う。
それに涼香ちゃんも便乗してきた。
「そうだよ。あたしだって白状したわけだしさ。ていうか、天下の美少女の好きな人って一体どんな人なのか気になる!」
興味津々、と言った目で2人に見詰められる中、私は白状することになった。
「…白状します〜。私の好きな人は…逢坂徹くん」
美樹の時と同様、暫くの沈黙の後、なぜか喜び合う2人の姿が目に映った。
「やったー!これってさ、世紀の美男美女カップル誕生ってことだよね!?」
「うん、そういうことだよ!涼香!早く見たいねー!」
「ちょ、ちょっと待って!まだカップルとかじゃないし、気が早いよ…」
私の声も興奮状態の2人の耳には聞こえない。
ふと時間を見ると、夕食時間まであと10分だった。
「あと10分で夕食だから行こうよ」と私が言うも、それも彼女らの耳には届かず、仕方がないので私と美樹は2人を放って置いて、先に夕食会場へと向かった。
その後、2人は十分騒ぎまくった後、夕食時間まであと5分ということに気付き、慌てて用意をして夕食会場に向かったことは言うまでもない。