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*79*
「何これ!?カンカン照りじゃないですか!もう夕方の5時なのに!」
美樹が頭を抱えながら叫ぶ。
私もそうしたい気持ちは十分わかるが、
ホテルまでの距離は数十メートルなわけだし、そこまで走ればいいじゃない。
と考えている自分がいるため、美樹と同じような行動はとらない。
「はい、バス降りた人からすぐにホテル行って、下村先生から部屋のカギを部屋長が受け取るように〜」
日野先生の声に皆が――否、女子が首が捥ぎれるのではないか、と思えるくらいに縦に振る。
そんな様子に私と美紀は苦笑いしながらも、足をホテルへと向かわせた。
「…うわぁ〜!すんごい綺麗なんですけど!」
美樹が感動しながら、ホテル内の装飾を見渡す。
リゾートホテルとは聞いていたが、ここまで綺麗だとは思ってもみなかった。
「これは、部屋も期待できるね」
私が笑顔で美樹に言うと、
「そうだね!」
と笑顔で返してくれた。
これが、なんだか新鮮だ。
今までは、こんな会話をするのは凜だけだったからなのかな?
そんなことを思いながらも、階段を上り、下村先生が待っている場所へ向かう。
途中、キャリーバックを受け取るため、荷物は増えてしまったが、なんとか下村先生の所へまでは無事に到着した。
そして部屋長である私は部屋の鍵を貰って、早速階段を上って部屋へと向かう。
私たちの部屋は5階にあるようだ。
私の掌に収まっている鍵には”504”と表示されている。
ちなみに、部屋のメンバーは私と美樹、部活が同じ優那ちゃんと、優那ちゃんと仲が良い涼香(りょうか)ちゃんだ。
「はい、504の人〜!行くよ〜!」
私がほかのお客さんに迷惑が掛からない程度に声を張り上げると、人波を掻き分けてやって来る2つの姿が見えた。
人と人との間から見えるその顔は、紛れもなく優那ちゃんと涼香ちゃんだった。
「やっと着いた〜」
涼香ちゃんが、最後の人波を掻き分けて私と美樹の前に現れた。
その後に続いて涼香ちゃんも到着。
「よし、全員揃ったことだし、階段上がろう!」
私の掛け声とともに階段を上がり、部屋へと到着した私達。
「部屋、開けま〜す」
ガチャリ、という音と共に開いた扉。
扉の向こうには見晴の良いバルコニー付きの部屋が広がっていた。
「広〜い!」
「綺麗!」
「リゾット!」
「リゾートの間違いね」
そんな声が飛び交う。
あぁ、これが修学旅行なんだね。
そんなことを改めて思う。
中学時代にも修学旅行へは行ったが、地元中学校に通っていたため、話が噛みあわず、幾度となく衝突してしまった。
そのためつまらなかった、という印象しか残っていない。
「あ、そーだ!夕食までには時間があるわけだし…」
そう言って、美樹はニヤリと笑う。
嫌な予感がするのは私だけですか?
「恋話しよ!」
予感は的中してしまった。