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*110*
那覇空港から飛び立った私たちは、沖縄を訪れる時に使用した空港へと到着した。
「やっと着いた〜」
美樹が伸びをしながらそう言う。
「飛行機、疲れたね〜」
私は美樹と肩を並べながら、キャリーバックをごろごろと転がす。
そして、そのまま学校直通のバスへと乗り、学校に到着した。
「えー、皆さん。お疲れ様でした。今回の修学旅行は…」
学級委員代表が前に出て、小さなメモを読み上げている。
それを聞き終えた後は、皆で拍手をし、流れ解散となった。
「真奈〜、帰ろ」
美樹が真っ先に私の元を訪れる。
そのあとに、凜と逢坂くんがやってくる。
「今日は部活ねーし、久しぶりに真奈と帰ろうかな」
「凜!」
そんな遠回しの言い方も、小学生の頃の私は照れていたけれど、もうそんなこともなくなった。
「綾川さん、俺も忘れないでよね〜。凜に負けたみたいじゃん?」
そう言ってほほ笑む逢坂くん。
本当、私の心臓は彼を見るだけで高鳴る。
どこかにスイッチでもあるのだろうかと疑いたくなるほどに。
「わ、忘れてないよ!一緒に帰ろ?」
「そうだね」
こうして私たち4人は一緒に帰ることとなった。
そしてそのあと、逢坂くん、美樹という順に別れていき、残るは私と凜だけとなった。
「久しぶりだね〜、こうやって2人で帰るの」
「ああ。久しぶりだな。お前が小2くらいの時に引っ越ししてから家、遠くなったもんな〜」
凜がどこか懐かしそうに目を細める。
「そういえばそうだね〜。家、引っ越したこともあったな〜」
「まあ、だんだん進路とかも離れて行ったわけだけどさ、今は一緒にいられるし俺は満足だぜ?」
そう言って、溌剌と笑う凜。
あぁ、本当だ。中学生の頃、どれだけこの光景を夢見たんだろう。右隣には凜がいて、左には土手と川が広がり、夕暮れの中、ただまっすぐ道を歩いていく。
でも、今私が望んでいるのは、私の右隣にいてほしいのは…。
「……」
「どうした?真奈」
しばらく無言だった私を不思議に思ってか、顔を覗き込んで心配そうにする。
「俺、なんか不味いこと言った?」
「ううん。違うの。何でもない」
「そうか」
前に向き直った凜。
そんな彼を見ていると、罪悪感ばかりが募る。
ごめんね、凜。私があなたの左隣にいる資格はないのかもしれない。
私が一人で心の中で謝罪していると、急に凜が足を止めた。
「…どうしたの凜?」
「いや、なんか…真奈が言いたいことわかったような気がして」
「え…?」
「だから、俺は…気にするなって言ってんだ」
「だから何を?」
「その、俺が2番目だってこと」
「2番目?」
「物分りが悪いやつだなー。お前の右隣!」
そう言って駆け出した凜。
私はただただ驚いて目を見開くばかりだった。
…凜は私の心に気付いている。
そう実感した修学旅行終わりだった。