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*81*
散々夕食中に、私と美樹は優那ちゃんと涼香ちゃんに咎められた。
が、しかし不思議なものだ。
夕食を終えると、2人ともすぐに怒るのをやめた。
どうしたんだろう?
と先程のことを思い出して身震いしながら考えていると、私の視界にふと入ったものがあった。
篠田くんと石島くんだ…。
私の予想では、この2人は内部生だ。
そして、中学時代からの親友とも言えるだろう。
食堂でよく一緒に昼食を取っている姿をよく目にする。
「何?あたし達お邪魔虫ですか?それじゃあ、あたし達、どっか行こうか!」
美樹が場の空気を読んで、私の手を握って、真っ先にエレベーターへと向かい始めた。
「あ、ちょっと!美樹!?」
涼香ちゃんが慌てたように、私の肩を掴もうとするが、私もその場の雰囲気を読んで、思わず避けてしまった。
そんなことに罪悪感を感じながらも、そのまま歩みを進める私達。
暫くしてエレベーターが見えたところで振り返ってみたが、追いかけてくる様子はない。
どうやら、あの2人に話しかけることを決意したようだ。
「…なんか進展、あるといいよね」
美樹が下向きの矢印のボタンを押しながら呟く。
私もそれに賛同した。
「そうだね。優那ちゃんにも涼香ちゃんにも幸せになってほしいもん」
「本当に、真奈ってふわふわしてるよねー」
「私が?どこが?」
「もう全て。昔からそんなんだったの?」
「昔…?」
私は過去を振り返ってみた。
特に今とは変わらない気がす…。
否、昔の私はもう少し活発だった。
でもある時を境に私は支えを失ったかのように人見知りになってしまったんだ。
ある時?
それはいつ?
思い出そうとすればするほど、記憶に靄がかかって見えない。
なんだっけ?
とっても大事なことを忘れてる気がするの。
そんな時に思い浮かんだのは、あどけない笑顔を惜しみなく向けてくれる”彼”の顔。
あの子…。
私と恋をするって言ってた子だっけ?
でも、何で今更思い出すの?
一人悶々と考え続けていると、いつの間にかエレベータ―が到着していたようだ。
先に美樹が乗り込んで不思議そうに私を見つめている。
「ごめん!」
私は慌ててエレベーターに乗り込む。
「大丈夫?さっきからずっと頭抱えてたけど…。なんかあたし、不味いこと言った?」
「ううん」
「そっか」
そう言って、それ以上は深入りしようとしない美樹。
ここに、彼女の優しさが感じられる。
美樹を、信じてみようかな?
そう思って私は口を開いた。
「実はね…」
私はこうして美樹に私の過去を打ち明けた。
全てを包み隠さずに。
その時の美樹の反応は、いつもと変わらなかった。
「あはは!すっごい過去の持ち主ね!真奈って!そんなの、少女漫画とかにしかないと思ってた!」
「ば、馬鹿にしないでよ…」
「馬鹿になんかしてないわよ。素直に感動してるの!」
美樹はエレベーターの中で笑い続けた。
そして美樹の笑いが止む頃に、長く感じられたエレベーターでの降下も終わりを告げた。
「これから部屋に帰って〜お風呂入って〜恋話だね〜!真奈!」
「私は最後のは要らないと思うけどなぁ」
「まあまあ、そう言わずに。ていうか、この後の恋話は主に優那と涼香にさっきのこと喋ってもらうんだからね〜」
なんて楽しそうにしながら美樹は部屋へと入って行った。