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*114*
そんなわけで、私達一行は7月26日、プールにやってきたわけなのだが…
「何で常葉と佐藤、お前らがここにいるんだ!」
「浅井と逢坂こそ!」
何と体育館で”26日”について話をしていた男子と遭遇してしまったのだ。
「てか、綾川さんと枝下とか…マジお前ら羨ましいんだよ!」
「ふふふ。まあね?」
「逢坂、喧嘩売ってんのか?」
「え?喧嘩?とんでもない!」
そう言って、逢坂くんは手を左右に激しく振る。
「まあ、それはさておき、常葉と佐藤こそ、すんげぇ数の女子連れて来てんじゃん?」
凜が常葉くんと佐藤くんの後ろのほうを見ながら言う。
彼の目には派手な水着を着た、私と同じクラスの女の子達が映っていた。
「だろだろ〜?中々可愛い子もいるんだぜ?」
「え?どの子どの子?」
逢坂くんがノリノリでその男子たちと喋り始めた。
「こりゃあ、終わりそうにないね」
美樹が肩を竦めながらそう言ったので
「それじゃあ、2人で遊ぼうよ」
と私が言い、男子4人の会話が終わるまで、美樹と2人で遊ぶことになった。
「ねぇ!真奈!あのウォータースライディング乗りに行こうよ!」
「いいね!行こ行こ!」
私達は走りながら目的の場所まで走っていく。
さすが夏休み。来場者は物凄い数だ。アトラクションに並ぶも、乗るのに少なくともあと30分は掛かりそうだ。
「あっついねー」
美樹が手でぱたぱたと扇ぎながら言う。
「本当〜!今日の最高気温、30度超えでしょ?」
「だろうね〜。あ〜、絶対日焼けする〜」
美樹は惜しそうに自分の肌を見やる。まだまだ白い。少し沖縄の修学旅行で焼けたところがある程度だ。
桜田高校にはプールがないため、私も中学生の頃よりは焼けていない。
というか、ほとんど焼けていないに等しい。
「あ、前進んだ」
着々と迫るアトラクション。あと階段を4段上りきれば、それに乗ることができるのだ。自然と私の胸が高鳴る。
「ドキドキしてきた〜」
「あたしも!あの直角のところ、絶対怖いよ〜?」
「あ〜、言わないでよ!もっとドキドキしてきたじゃんか」
そう言ってクスクス笑っていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。
私は体を強張らせながら後ろを振り向くと、そこには息を切らした逢坂くんと凜がいた。
「逢坂くんと凜!常葉くんと佐藤くんは?」
「適当に途中で話をやめてきたよ。それより急に居なくならないでよね?本当すっごい心配したんだから」
逢坂くんが心底よかったというような眼差しで私を見る。
「ご、ごめんなさい」
「いいよいいよ」
「それよりさ、あんた達…超ずるくない?」
「え?どこが?」
「あたし達、これに乗るために少なくとも15分以上は並んでるんだよね〜?君たちは今、何分でここまで到達したのかな?」
逢坂くんが備え付けの時計を見ながら答える。
「…7分です」
これに対し、美樹は意味ありげな目で男子2人を見る。
「これはこれは早いこと。何か代償は…」
「分かったよ。かき氷、奢ればいいんだろ?」
凜が面倒くさそうに言う。
「本当!?やったー!」
「凜が奢ってくれるのか。助かる…」
「お前は自腹だ、徹」
「え…?」
「真奈も仕方ないから俺らで奢ってやるよ」
「いいの!?」
「…ああ。たまには、な」
少し恥ずかしそうに俯いた凜。それを見てクスクス笑う美樹。何で俺だけ自腹?と腑に落ちない様子の逢坂くん。そして、私。
まだ始まってばかりだけど、こんなに楽しい夏休みを過ごしたことはない。
「次の方どうぞ〜。何名様ですか?」
係員さんに尋ねられ、凜が答える。
「4名です」
「このアトラクションは2人乗りですので…そうですね」
そう言って係員さんは私と逢坂くん、美樹と凜という風に分けて左右に分かれさせた。
「え?…あのぉ?」
私が驚いて係員さんのほうを振り返ると、ただニコニコっとだけ微笑まれた。
一体それはどういう意味なのですか!?
私が心の中で突っ込んでると、「早く乗らないと」と逢坂くんが私の手を引いて、ボートのような乗り物のところまで行った。
それは係員さんの言った通り、2人乗りで前後に座るような形だった。
逢坂くんが前に座り、私は後ろに座った。
間にいる係員さんを挟んで右隣を見ると、美樹・凜ペアも同じような構成となっていた。
「それでは出発いたしまーす」
係員さんの掛け声とともに、ベルが鳴りゆっくりとボートが急降下地点に向けて滑り出した。