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*25*
「あの、お誘いはありがたいんですけど、私、あなたのこと、知らなくて…」
「やだ!なんて謙虚なの!?浅井の言う通りじゃん!綾川さん!あなた…絶対モテるわよ?」
「は、はい!?」
「もー、超可愛い!あ、それじゃあ、あたし達友達ってことで!それじゃあ、男子ども、GOODBYE!」
そう言って、私の腕をしっかり掴んで歩き出したボブヘアの少女。
私はこの子の名前知らないのに、この子は私の名前を知ってる風だった。
それに凜のことを浅井、って呼び捨てしたってことは、凜と同じ中学だったということだから…この子も内部生ってことか。
「あの、えーっと、あなたは内部生、なんですか?」
「そうだよー?」
「凜とは友達、なんですか?」
「うん、男友達だね!あ、もしかして綾川さん、浅井と付き合ってんの!?」
ボブヘアの少女が目を輝かせながら、私の顔を覗く。
「う、ううん!そういうわけじゃないの。ただの幼馴染だよ?」
「そっかぁ。それは残念だぁ」
そう言って、肩を落とす少女。
この少女は私に一体どういう返答を期待していたのだろうか…。
「あ、それよりさ!」
「はい!?」
「あぁ、そんなに硬くならなくていいよ!普通にタメでいいから!」
「た、タメですか…」
「そう!あ、そうそう!あたしの名前は枝下美樹!美樹って呼んでくれてもいいし、ミキティーって呼んでくれてもいいし…とにかく何でもいいよ!あなたの下の名前は確か…」
そう言って、ボブヘアの少女は顎に手を添え、考える素振りを見せた。
私は、それを見て慌てて自分の名前を名乗った。
「私は、真奈。綾川真奈、です」
「そうそう!真奈ちゃん!真奈って呼んでもいいかな?」
「う、うん」
「よーし、それじゃあ真奈、手始めにちょっと質問していい?」
「私が答えられることならば何でも」
「OK。えーっと、それじゃあ、浅井とは本当にただの幼馴染?」
「うん」
「逢坂くんって知ってるよね?」
「うん。今日一緒に登校したよ?」
「マジで!?やるね、真奈!」
「え?なんか不味かったかな?」
「不味いも何も、あの男子超モテモテだよー?もう噂になってるくらいだからね。学校来て数分しか経ってないってのに。やっぱイケメンは違うのねー」
そう言って、一人で頷く美樹。
今までの私の友達に、このタイプの少女はいなかったので、何だかとての新鮮だ。
「あ、話を戻すね!他に何か聞きたいことあったかな…?あ!思い出した。ねぇ、真奈には彼氏いるの?もしくは好きな人とか!?」
「か、彼氏なんて滅相もない!」
「えー!?真奈、すっごく可愛いのに彼氏いないの?」
「う、うん。てか、そんなお世辞要らないよー」
私はそう言って頭を左右に激しく振った。
って、あ…!私、普通に話せてる!
「お世辞なんかじゃないって!…で?」
「で、とは?」
「好きな人はいないの?」
「す、好きな人!?」
「お!その反応は…居るわね。誰なの誰なの?」
「そ、それはちょっと…」
「そーだよね!また言いたくなった時に、話してくれたらいいし!」
案外あっさり引くんだね。
もっと粘るのかと思った。
「うん、分かった」
私はそう言って、美樹に微笑んだ。
すると、美樹も微笑み返してくれた。
「よーし、質問も済んだことだし、後は入学式だねー!第一印象は大切よね!」
「そうだね!」
「よっしゃ、あたし、超笑顔でいっちゃおう!って言っても、内部生だからあんまり変わり映えしないんだけどねー」
「それでも、その努力はいいと思うよ?」
「…わー!なんか嬉しい!」
「え?」
「だって、いっつもあたしの言葉って皆に流されがちなんだよねー!だから、まともに答えてくれたのって真奈くらいっていうか…」
そう言って、寂しそうに美樹は笑った気がした。
でも、すぐに先ほどまでの明るい笑顔に戻った。
「ま、とにかくこれからもよろしくね!」
「うん!」
こうして私たちは廊下を駆けて行った。
まさに、私たちの”青春”の幕開けだった。