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*27*
「お!ここが会場だね!あたし達、どこに並べばいいんだろう?」
そう言って、私の腕を引っ張りながら歩く美樹。
そう、私たちは今、入学式の会場である講堂の前にやってきたのだ。
「1-B、1-B、1-Bは…あった!あそこだ!真奈、行こっ!」
「う、うん」
私は半ば強制的に、美樹が指差した”1-B”と書かれた紙が貼られている壁の前へと向かった。
すると、そこには私たちより後に教室を出たはずの逢坂くんと凛がいた。
「逢坂くん!それに凜!」
「それに、ってなんだよ」
「あはは、可哀想に。凜くん」
「他人事みたいに思ってんじゃねーよ、この色男!」
「俺は色男なんかじゃないよ?ただなぜか女の子に好かれるだけで…」
「お前、今の発言で全国の男子を敵に回したぞ?」
「え?そうなの!?それは不味いな。皆とは仲良くしたいんだけどなぁ。ただ一人を除いて」
「あ?それは俺のことか?俺のことなのか?」
「さぁ、どうだろうね」
「ちょ、ちょっと、二人ともやめようよ!」
私がさらに状況が悪化しそうな気配を感じたので、喧嘩の止めに入った。
すると、先程までの険悪のムードがまるで嘘だったかのように逢坂くんは屈託のない笑顔を向けてきた。
凜はというと、拗ねたようにそっぽを向いているけどね。
「やぁ、綾川さん。会いたかったよ」
「会いたかった、ってさっきも話してた気がするんだけど…」
「それでも会いたかったのさ」
う…。そんなこと言われたら、勘違いしちゃうよ。
「ん?どうかしたの?無言になっちゃって。顔、赤いよ?」
「え!?」
私は驚きながら、自分の頬をぺたぺたと触ってみた。
すると、指先から物凄い熱量を感じた。
「嘘!?私…!?」
「どうしたんだ?熱でもあんのか?」
私が両頬を両手で押さえながらあたふたしていると、凜が私の顔を覗き込んできた。
その距離驚いて、慌てて顔を逸らす。
「う、ううん。なんでもないの」
「…そうか」
そう言って、凜は列に戻っていった。
何となくその様子を私が見ていると、美樹が脇腹を肘で突いてきた。
私は何事か、と思い美樹の方に体を傾けると、美樹が耳打ちしてきた。
「今のはさすがの浅井も傷つくって!」
「え?何か不味かった?」
「だって、逢坂くんとは普通に話してたのに、浅井に話しかけられた途端、真奈ってば顔を逸らしちゃうんだよ?そりゃあ、嫌われちゃったのかな?って思うわよ」
「そ、そういうものなの?」
「そういうもの!だから浅井ん所行って、誤解、解いてきたら?」
「…そうだね。凜とはずっと友達でいたいもの!」
私はそう言って、凜のところへと向かった。
美樹の寂しげな視線にも気付かずに。