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*39*
*美樹side*
あたしは、永遠の片思い。
この恋が叶うはずがない。
だって、あんたはあの娘に惚れてるんだもの…。
あたしは憂鬱な気持ちを押しのけるように、桜並木を走っていた。
普通なら世界でも有数の桜並木なので、観賞するのだろうが、なんせあたしはこの道を通って3年も経つ。
だから、そんなことをする必要はない。
ただ今は急ぐことだけに集中する。
あいつと同じクラスになれますように…
ただそれだけを願って。
無我夢中で走っているとあっという間に校門前に辿り着いた。
あたしは一度そこで止まると、深呼吸をして門をくぐった。
これから新たな生活が始まる。
そう思った。
内部生が居ると言っても、実力がこの高校に入るのに達していないと判断された者は落とされるので、外部と同じ位優秀な子しか残っていない。
「よし!」
あたしはそう言って再び気合を入れると、人だかりがある所に目を向けた。
そして、それがクラス発表だと知っているあたしはそこへ向かって走り始めた。
「美樹ちゃん!おはよ!」
「おはよ!」
「おはよ、美樹。どしたの?そんな慌てて。情報屋らしくないぞ〜」
「あー、名瀬!おはよう。それは悪かったね〜!」
あたしは、クラス発表場所に辿り着くまでに色々な人に声を掛けられた。
案外こう見えて真面目なあたしは1人ずつ顔を見ながら返答する。
すると、あたしに声を掛けてくる人数があたしが返答できる可能人数をだんだん超えてきた。
そして、いつの間にかあたしは包囲され、色々な所から話しかけられていた。
「枝下!この間頼んだ情報、持ってきてくれたか?」
「この前はありがとう!情報料、何すればいいかな?」
「美樹〜!依頼したいんだけどさ!」
「あ、頼まれてた情報、持ってきたんだけどどうしたらいいんだ?」
あー、あたしは聖徳太子じゃないんだからそんなに一度に言われても何言ってんのかわかんないわよ!
「ちょ、ちょっと今急いでるからまたあとで、一件一件回るね〜!」
「あ、美樹!」
「ちょ、枝下!?」
「美樹ちゃん!?」
「いつ来るんだ?俺、今日の昼は彼女とデートで居ないんだが!?」
くそ。何気最後の奴、のろけてるぞ?多分、この彼女溺愛っぷりは黒川圭だろうなぁ。
あたしは皆の声を背にしながら、そんなことを思う。
だが、すぐにクラス発表!と思い直し、クラス発表場所へと今度は振り向かずに行った。
そしていよいよクラス発表表が目の前に見えてきた。
あたしは皆に囲まれていた所為か、皆より少し遅くこの場所に辿り着いたらしい。
ほとんど混んではいなかった。
これは好都合!
そんなことを心の中で思いながらも、目は一生懸命自分の名前とあいつの名前を探してる。
そして…見つけた。
”枝下美樹”はもちろんのことだが、あいつの名前も同じクラスの一覧に載っていた。
あたしはその時の喜びを生涯忘れることはない。
きっと、これほど喜ぶのは後にも先にもほとんどないだろうから…。