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*6*
*徹side*
4月を迎えた俺は高校1年生となった。
受験戦争を勝ち抜いて、憧れの高校に入学できる今日。
この日をどれだけ夢に見て、待ち侘びていたことか…。
そんなことを思いながら世界でも有名な桜並木を歩いていると、女の子の声が聞こえた。
「今年も綺麗に咲いたのね」
とても澄んだ綺麗な声だった。
声の主を探して後ろを振り返ると、そこには桜が似合う、とても綺麗な女の子がいた。
多分、その姿を見た瞬間、俺は恋に落ちた。
段々鼓動が高なるのを自分でも感じていた。
話しかけようか、話しかけまいか、と迷っていると、俺にとっては好都合な状況がやってきた。
そう、彼女の視界が桜吹雪によって奪われたのだ。
ここで彼女を助けることが出来れば、少なくとも印象付けられるはず、と思いながら彼女の傍まで行き、彼女の細い腕を引っ張った。
そして、桜吹雪からようやく脱出した彼女は暫く俺の顔を見て、キョトンとした顔をしていた。
どうやら状況が理解できていないようだ。
俺はとっさに嘘を吐いた。
「大丈夫?困っていたようだったから、つい助けちゃったんだけど…迷惑じゃなかった?」
そう言って、いつもの癖で彼女の顔を覗き込んだ。
ふと気付いた時に、彼女と俺の距離が近いことに気付いて、慌てて飛びのきそうになったが、いきなり飛びのくと不自然に思われそうだったので、そのままの状態を貫いた。
「えっと、あの、その、ありがとう、ございました」
「あはは、いいよいいよ。嫌われてなくて良かった」
うん、今度こそこれは本音だ。
ごめんね、さっきのは嘘だったんだよね…。
そう思いながらも、笑っている俺。
そんな俺を見てか、笑顔になる彼女。
そんな笑顔にも見とれそうになった、というより見とれていた。
「あ、そーだ!君、この制服ってことは同じ学校だよね?名前なんて言うの?俺はね、逢坂徹」
平然を装いながら何気なく彼女の名前を聞き出す。
「私は…綾川真奈です」
案外簡単に名前を手に入れることが出来た。
「綾川真奈さんね!真奈…。いい名前だね!これからよろしく」
心の中で、何度も”真奈”を呟いてみる。
凄く良い響きだな…
「えっと、よろしく、です」
綾川さんは少し困ったような顔をしながらそう言った。
「そんな暗い顔しなーい!あ、それと敬語使わなくていいから!多分綾川さん、1年生でしょ?」
「あ、はい、じゃなくて、うん」
「俺も1年だからさー、同級生ってことで、っね?」
「は、はい」
こうして俺は、綾川さんと友達、にはまだなれなかったにせよ、赤の他人から知り合い程度には昇格できたと思う。
そんな状況に満足しながら、綾川さんと高校へと向かう。
そして、高校の校門をくぐると、1か所だけ、人だかりができている所があった。
どうやらそこでクラス発表をしているらしい。
俺たちの横を通り過ぎていく先輩の会話を聞いてそう判断した。
「あ、あそこにクラス発表あるじゃん!俺、綾川さんの分も見てくるよ!ちょっと待ってて」
そう言って、俺はクラス発表が張り出してある所へと向かった。