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*17*
「アステリオン、ご苦労様。」
擦り寄ってくるアステリオンを愛おしく撫で、閉門する。
アイリは、儚げに笑った。
「……。」
アリアとアイリは、人形だ、――人形だった。
昔、とある少年に渡された。
少年はとても大切にしてくれた。
いつも大切にしてくれた。
ある日―――少年は誰かに連れ去られた。
人形は動かない、そこにいるだけ。
少年を呼ぼうとしても、声だってない。
瓦礫の下にいるだけ。
そのとき、シャロットという人物が、魂を打ち込んでくれた。
これで少年を探せる。
そう信じていた、なのに。
少年の顔を、思い出せない。
どうしよう、どうしようと考えていたら、一つの結論にたどり着いた。
「少年を取り戻すために…『兆年孤独唄』を使って…。」
それから、仲間を集めた。
精一杯、情報を集めた。
そして一生懸命、過去を探した。
今まで幸せだったから、辛い過去なんて無かった。
だから、だから。
そして、あれから十年。
辛い過去が集う場所を見つけた。
『フェアリーテイル』。
ここなら、大丈夫。
過去がある。
シャロットにお願いして、依頼をまわしてもらった。
一人の青年を犠牲に、『兆年孤独唄』が動く。
一人の犠牲なんて、なんて容易い。
だから、龍がでると嘘をついたが。
駄目だった。
シャロットは―――死んだ。罪悪感で、最後グレイに微笑んだらしい。
でも、もういらない。
シャロットはもういらない。
青年―グレイがいるから。
目的の人物が見つかったから。
「これでっ!復活するのよ!!兆年孤独唄ぁ!!!!」
嬉しい、の一言に尽きる。
やっと、長年の苦労が結ばれるのだ。
願い事はただ一つ。
アリアとアイリを人形に戻して、そして少年の下へ帰して。
これでいい。
グレイなんて知らない。
ただの生贄だ。
その生贄に――
懐かしさを感じるのは何故だろう。