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*55*
「生、贄……。」
「もう貴方達に、鍵を渡したほうが楽ですかね。」
暗い雰囲気の中、暗い魔力が増える。
その魔力のする方を振り向くと、黒いローブを身に着けた複数の人間がいた。
『あくまのゆみ、めいずる。』
「悪魔の、弓…!」
「こいつ等が!」
男は辺りを見わたし、シエルに近づいた。
シエルは来るなと叫ぶが、それは駄目だったようだ。
『われわれ、あくまをしんじる、などではない。』
「…悪魔宗教の、こと?」
じゃあ、何故ここの子供達を殺したんだ。
そう問おうとした瞬間、腕を縛っていた布が解ける。
前を見ると、シエルが膝をつく。
「シエルッッ!」
「……ごめん…、嘘なんです…!」
「え?」
唐突な事に、目を見開く。
シエルの目からは、涙が零れ落ちていた。
「こいつ等は、確かにここの孤児院の子供の親を殺しました。」
昔の事だ。
この孤児院で、鍵を護っていた。
なのにメイキースがいきなり現れ、死ぬ間際だからと子を持たされた。
メイキースの子らしい。
いっそ殺そうか。
メイキースには、恨みがある。
人を生贄にして、呪いをかけて。
だが、子は殺したくなかった。
正しくは、殺せなかった。
「悪魔の弓は……呪いの番人です。ちゃんと、僕が使命を果たせるかって。」
「あ、そっか…ソリタリオは使命が終わったから…。」
「はい、それで…僕は、」
育てて、しまった。
もう独りじゃなくなった。
それが楽しかった。
それは今まで、ずっと続いた。
最初は孤児院ではなく、幼児の遊び場となった。
孤独に耐えられなかったから、嬉しかった。
悪魔の弓は、それをギリギリ許してくれた。
―――その子供達の親の命と引き換えに。
それからここは、孤児院となった。
ここに入る子供は全員、悪魔の弓によって親を殺された。
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