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*76*
(意識が、保て…ねぇ…、)
もう、ここまでか。
諦めかけて、意識を投げ出そうとした瞬間、
『お母さん、その人形なぁに?』
小さい頃の自分の声がした。
(え…?これ、俺の記憶・・・・・・?)
『このお人形さんね、不良品だからって捨てられたのをもらってきたの。』
『ふーん、…あ!目の色が変だね。』
人形は、目の色が片方ずつ違っていた。
ただ、それだけ。
後はとてもキレイな、人形で。
『そう、それだけなのにね。だから、貰ってきちゃった。』
『男の子、女の子?』
男カ女か分からないが、手に優しくリボンがつけられている。
『さぁ…、グレイはいらないわよね。』
男の子だもん、母が笑いながら呟く。
いつもならここで、うんと頷くはずなのに。
このときは、ただこの人形が欲しかった。
『欲しい!なんか、なんでだろう?欲しい!』
『え?…ふふ、この人形もグレイのものになって嬉しいと思うわ。』
母が優しく笑う。
その笑顔に、グレイもつられて笑った。
『じゃあ、名前だな!』
『そうね、じゃあ……結城?』
『それ…東洋じゃね?』
『あらら、そうね。』
クスリ、母はそんなように笑う。
すると、偶然にも紙芝居屋さんの声が聞こえた。
『アリアとアイリの物語ぃ〜。』
『……そうだ!アイアリーで、どうかな?』
『いいわね、じゃあその人形さんを大切にね。』
『うん!!』
(……そうだ、アイアリー…。)
「昔、君が名前をつけてくれたんだよ。」
「!」
いつのまにか、地に足が着いている。
少し戸惑っていると、ここは君の意識だからと笑われた。
「…あの頃は、一番幸せだった。」
「………。」
「何処へ行くにも連れてってくれてさ、レイガって人は優しく撫でてくれて。」
「っ、」
ちくり、何処かに痛みが走る。
アリアは、グレイの頭を撫でて目を伏せた。
「…破滅の冬の流星をレイガが渡したのは、本当に偶然なんだ。」
「……そ、か…。」
「だから、レイガもグレイも悪くない。」
ここが自分の意識と言うなら、ここで泣いても良いだろう。
いきなりそう言われたアリアは、目を見開いている。
グレイはペタンとその場に座り込み、声を抑えて泣き出した。
「ご、めん…っ忘れてて、ごめんなさい…!」
「グレイ…は悪く…ないよ…。」
また、違う記憶が流れ込んでくる。
『あの子達に、魂を打ち込んだのが間違いだった…。』
『兆年孤独唄を、使うなんて…。』
『私に、生きている資格などない…。』
『あの子達は、目的を果たすのだろうか…。』
『果たして、男の子とやらに会って…。』
『人形に戻るのだろうか…。』
『魂を奪い合うのだろうか…。』
『…氷の造型魔導士よ…。』
『すまない…。』
「っ!」
「…シャロットの、死ぬ前の記憶。」
「人形、に戻るって…?」
聞くと、アリアは寂しげに笑う。
「打ちこめられた魂は、目的を果たすと消えてしまう。」
「!」
「僕はアイリに魂を奪われて、アイリと魂が合体してしまった。」
どうやら、魂と魂が合体すると目的は同じになるらしい。
力も得て強くなるが、器がないと抑えきれないという。
「だから、今…。」
「どうやら、グレイの仲間が戦ってるみたい。…耳を澄まして。」
す、と目を閉じた。
光景が時間の流れみたいに、流れていく。
『グレイ、起きてええ!』
『目ぇあけて!オイラだよ〜!』
『グレイさん、目を開けてください!』
『意識が吸い込まれるわ!融合しちゃうわよ!』
『この鏡に纏わりつく鎖を千切るぞ!』
『グレイ様!大丈夫ですよ、ジュビアが助けますから!』
『グレイっ、出てきて欲しいのね!』
(ルーシィ…ハッピー…ウェンディ…シャルル…エルザ…ジュビア……リッカ…、)
『寒い世界でも、私を必要としてくれる人がいる!』
『怪物倒しよ!』
『…俺は、変わった!』
(イムサ…メア…キク…)
『怪物、減らないのか!?』
『だが今、仲間が増えたぞ!』
『酒飲みたいんだから、邪魔だよ!』
『漢ぉぉぉ!』
(リオン…じーさん…カナ…エルフマン…みんな…)
『男、ノコ…アタシ、一緒に、笑う、いられる…。』
(…アイリ…)
『グレイ!待ってろよおおおおお!』
(………ナツ……!!!!)