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6人の役者
作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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*46*
♯38 「楓 瞳(カエデ ヒトミ)」
今、私は住宅街を猛ダッシュしている。
手に抱えているのは、新しいレターセット、新しいペン一式、そして自分好みの箱だ。
お祭りがあるから、お金はたまたま持っていた。
そのほかには、いつももらうお小遣いが関係しているのだが、今それを話している時間はない。
もうとっくに息切れをしているけど、私の足がとまる事はない。
目的地につくまでは。
「・・・だい、じょうぶ、か、な・・・」
もう、こんな少ない言葉でも、とぎれとぎれに言ってしまう。
息をはきながらだから、自分でも聞き取りにくい。
さっき買ったものを落とさないように気をつけながら、私はある人に電話をした。
「あー、もしもし、雫?」
「え、瞳!?」
よく、分かったなと、感心するぐらい早い反応だった。
「今さ、雫の家の前にいるんだけど・・・」
「え!?」
携帯から、カーテンを勢いよくあける音と、目の前の白いレースのカーテンがあくのが同時なのを確認して、私は手を振った。
もちろん、部屋にいる雫に。
「どうしたんですか、いきなり・・・」
「ちょっと、相談事があるんだけど・・・」
「いいですよ、鍵、あけますから入ってください」
「分かった」
電話をきってから、しばらくして玄関のドアが開いた。
「おじゃまします」
さっそく中に入る。
雫の部屋も、柏と同じで2階にある。
「どうしたんですか。めずらしいですね、相談なんて」
「あー、うん」
私のあいまいな返事を聞いて、雫は質問を変えた。
「その荷物は? またあそこにいったんですか?」
「そうだよ。やりたいことがあって」
「そうなんですか」
雫は、こんなしゃべり方だけど、華と同じくらい仲がいい。
もしかしたら、華以上かも・・・。
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