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デッドバスター 
作者: KING ◆zZtIjrSPi.  (総ページ数: 151ページ)
関連タグ: 友情 バトル 
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「……唯一破かれずに残っていたのはこの一冊だけだよ。ほかはもう破けていて読めなかった」

 片手でパタン、と本を閉じる雁渡。
 話を聞き、放すことがなくうつむくかぐやと秀也。花江も同様だった。
 彼女はチラリと、郡司が出て行ったドアを見た。

「でもまあ彼は私が話す前から知っていたようだが」




              No21.      覚悟




「お前が1人で……?冗談か?飛来」
「冗談じゃないさ。くじらは俺が助ける」
「許可できない。第一神光国家へどうやって忍び込む気だ」

―――会議室。
 点滴を引きずりながら郡司は飄々とした物言いで勇魚に言う。
 勇魚は怪訝な顔で彼を見ていた。
 郡司は即答した。

「俺のデータゾーンで敵を避けます。それで神殿まで……」
「無理だな。いくらお前の未来予知があっても敵1人には会うだろう」

――データゾーン【DZ】。それは生まれつき、あるいはあることで普通の人間にはできない技能を持つ能力のこと。あくまで人間のできる延長線なため、火を噴いたりなどの超人的なことはできない。
 勇魚は郡司の意見を真正面から否定した。
 郡司はそれに目を細めて、勇魚の座っている机をバン!と叩く。

「……頼むよ勇魚さん。じゃないと俺はバスターを辞めてあっちへ行く……!」
「できると思っているのか?」
「できるさ。くじらの為ならなんだって」
「竜堂――かぐやはどうする気だ?」
「……!」

「かぐや」の一言で郡司の体が固まった。
 辞める、と言ってもやはり彼女のことは気にかかるのだろう。
 少し彼は黙った後、ゆっくり口を開く。

「……アイツなら大丈夫。秀也がいる。そんで聖だって。だから俺ぐらいいなくたって大丈夫さ。だから、許可してくれ。勇魚さん……!」
「……それは」
「俺からもお願いします勇魚司令官」

 バタン!と大きな音を立てて会議室に入ってくるのは息を切らした瀬良の姿。
 ゼエゼエ言いながら入ってくる。
 そしてズカズカと歩き、郡司の頭を鷲づかんだ。

「病人の癖に何医務室抜け出してんだバカ!ったく、雁渡も雁渡で何でこのバカクソエリートを止めなかったんだよ」
「……何の用だ」

 頭が痛くなるほどの瀬良の罵詈荘厳。
 だが、勇魚はいつもの冷静さを失わずに瀬良の顔を見上げる。

「もう一度言います。飛来、いや、俺たちをトップエデン救出のために神光国家へ行かせてください。お願いします」
「……トップエデンは気にするな、と言ったのだろう?」
「そのようですね。俺もさっきかぐやに聞いたばかりなので。確かに、俺とトップエデンは数回顔を合わせた程度の面識です。ですが、仲間の味方は俺の味方です。どうか、許可をください」

 深々と。
 ゆっくりと瀬良は頭を下げた。
 勇魚は立ち上がり、窓の向こうの空を見上げる。

「……だが遠征に行く人間は」
「問題ありません」

 そう言って机上にバサッと書類を置く。
 それは、署名だった。
 その分厚さに郡司は目を見開いた。

「瀬良……。俺のために」
「勘違いすんな。お前がクソすぎて目が腐る前に何とかしたいだけだ」
「……雁渡隊、B・Cランクほとんどの隊員が……。それに、梶原君までか……」

 バラバラッと書類をめくる勇魚。
 感動したように郡司は瀬良を見るが彼は侮蔑するような視線だ。
 書類を見終えた勇魚は……。

「……いいだろう。許可しよう。ただ、遠征に行く人選はこちらで決めさせてもらう」

 その言葉に郡司と瀬良は嬉しそうに口に弧を描いた。




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