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*140*
「ちょっと!?どういうことなのよ!ちゃんと説明しなさいってば、ねえ!」
かぐやはクローディアの肩を揺さぶる。
だが彼はピクリとも動かない。
郡司は「やめろ」とだけ言った。
何もできない自分にかぐやはギリィ……。と歯を食いしばった。
「……日本にいる有能なバスターに任せるしかない。それか……」
途中で言うのをやめた郡司にかぐやは首をかしげる。
急かすように瀬良が「帰るぞ!」と叫んでた。
慌てて2人も乗り込む。
(……それか…いや、考えないでおこう)
No37 司令官として
「……隊長、何ですかあの光…!」
「真っ直ぐバスター本部基地に向かっている……?」
「まずい……あそこにはほかの隊員や勇魚司令官が!」
上空を指差す花江。
そこを見上げると真っ直ぐ、本基地を突き進む彗星のような光が見えた。
眩しそうに梶原は空を見上げると焦るように呟いた。
西園寺がギュッと雁渡の服の裾を握った。
「……行きましょう……雁渡さん……。何だか…嫌な予感がします……」
「そうだね、行かねば」
「そっちは頼む。私は住民の避難の手助けをして来る」
「了解」
梶原の言葉に雁渡が答える。
3人はお互い顔を見合わせる。
そして同時に頷くと、ジャンプし、本基地へと向かった。
※
「い、勇魚司令官!なにやら彗星の様なものがこちらへ……!」
「……ああ」
バタバタと慌しくBランク隊員数名が会議室に入ってくる。
わかっている。
そう呟くと勇魚はガラッと会議室の窓を開けた。
クローディアが放った彗星は確実にこっちへと向けられている。
(――ついに、この日が来たのだな。これでようやく使命を果たせる。お前のようにな……。帝……。)
フッとどこか自虐的に勇魚は微笑む。
そして振り向き、入ってきたBランク隊員たちに告げる。
「君たちは急いで全バスター隊員を地下のシェルターへ。急いでくれ」
「は、はい!」
ビシッとBランク隊員は答えると再び慌しく走り去っていった。
「……さて、司令官として最後の仕事に入ろうか」
そう言うと、勇魚は机の引き出しから如月を出す。
いや、正確には如月の小太刀版のようなものを取り出した。
―――勇魚さんならぜってぇ大丈夫だって!バスターも安泰だな!
「……言ってくれるな、帝」
(……ようやくお前を犠牲にしてしまった私の償いの時間が来たようだ)
彗星がバスター本基地まで直撃するまで、あと10メートル。
スッと勇魚は小太刀を横に構え、そのまま動かなくなった。
「神光国家の荒ぶる魂よ。この国を破壊する代償として私の全てのストライドと命を捧げよう。……吸い尽くせ!」
―――彗星、直撃まで1メートル以下。
豪風を吹かせながら彗星は勇魚の小太刀に吸い込まれていく。
「ぐぅぅぅぅぅ……!」
それに比例するように勇魚の腕が皺くちゃになっていく。
そして、彗星は完全に小太刀の中へ吸収された。
その様子を見た勇魚はやり切ったかのようにフッと優しく微笑んだ。
「ここまでだ……。後の未来“こと”は……みんなに……」
―――サアッ。
勇魚は砂となって崩れ落ちた。
命を使い果たした代償。
最後に彼が思い浮かんだのは、かぐやや郡司、若い世代たちだった―――……。
「……司令官」
その10分後に雁渡隊が到着した。
勇魚のスーツと、大量の砂を見て雁渡は事の現状を理解した。
そして、彼のスーツを抱きしめると、ポト、ポトと涙を流した。
「……お勤め、ご苦労様でした。勇魚司令官……っ!」