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*120*
「……気を抜くな、仁、美也子。奴の雰囲気が変わった」
「わかってるよ、そんなこと。殺気がビンビンだぜ」
「……うん」
髪の毛まで凍りそうなイリヤの冷気。
秀也の警戒の言葉に仁と美也子は同時に頷いた。
そして3人はジャッと半歩下がった。
「らぁぁぁぁっ!」
―――ヒュゴッ!
上空から仁の槍による突きがイリヤを襲う。
イリヤはその攻撃を読んでいたかのように手のひらを仁に突き出す。
そして、氷のつぶてを放出する。
「させないっ」
パンパンと仁に襲い掛かる氷のつぶてを美也子が輪廻で撃ち落とす。
上からは仁の攻撃で受け止めるのは手一杯だろう。
そう考えた秀也は下から如月を振り上げる。
「甘い」
淡々と呟いたイリヤ。
きっと1瞬にも満たない2人の攻撃を腰を曲げてズザザッと低空ジャンプすることで難を逃れた。
そしてコキッと首の関節を鳴らしたイリヤは面倒くさそうに言い放った。
「……やっぱ3人はごちゃごちゃいるからサクッと殺せないんだよね。クローディア様の儀式は早く始まったほうがいいし……。あ、そうだ」
パン!とイリヤは両手を合わせた。
ズズズ……。と氷の牙が美也子を囲む。
「美也子!避けろ!」
「キャアアアアア……」
「……くそっ!」
仁が美也子に向かって叫ぶ。
だが、氷の牙は美也子の伸長をかなり越してしまい、彼女が飛ぶのには無理があった。
秀也は如月で1本、氷の牙を切り裂くと美也子の背中を思い切り押した。
「……秀ちゃん!」
美也子の悲痛の悲鳴もむなしく、彼は氷の牙が囲む氷のドームと化したところに閉じ込められてしまった。
クツクツとイリヤはその様子を見て笑った。
「仲間なんか助けようとするからこうなるんだ。じゃ、お二人さんは【一旦】ここで休んでてよ。俺は秀也ってやつと戦ってくるから」
「おい待て――――!」
「こいつを殺したら次はお前らを殺してやるよ」
ズズズ……。と氷のドームに入っていくイリヤ。
入っていく彼の目は殺意しかなかった。
No26 凍て付く躰
「……ここは」
「俺の氷のドームさ。俺のソウルブレイブ――氷の主のね。アトラスのおさがりってのが唯一気に食わないけどさ」
白い息を吐きながらドームを見上げる秀也。
そんな彼に説明するのは悪裂な笑みを浮かべたイリヤだった。
その表情は残酷、という言葉がぴったりだろう。
だが秀也はそんなことに屈せず、ガンスタイルを彼に向ける。
「氷のドーム……?そんなもの、撃ち落とせば簡単に抜けられる」
「残念。このドームは俺を殺さないと出られない仕組みさ。アトラスなんかと一緒にすんな。もちろん外部からの攻撃からでも出られない。とっとと出るのが得策だけど生憎俺にそんな気はない。――――このまま時間が過ぎれば凍傷か凍死だね、君」
スウ……。と唇を人差し指で撫でながら妖艶にイリヤは嗤う。
秀也はそんなこと構わずガンスタイルと如月を両手に持つ。
「だったら貴様を殺す。それだけだ」