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*150*
――――3年後―――
「へぇ、またお墓参り行ってたんですか」
「また、じゃねぇよ。お盆と彼岸の日だけだ」
――――キィィィィ……。
花京院が空港から姿を現す。
トランクを引きずりながらクールに歩く彼を少しからかう様に、櫟が近寄ってきた。
そんな彼を鬱陶しそうに花京院は睨みつける。
「……リムの故郷がフランスだからな。祖国に、両親のとこに埋めてやったほうがいいだろうと思ってな」
「恋人だもんね〜」
軽口を飛ばした瞬間、ゴツン!と櫟の頭に花京院の拳骨が飛ぶ。
あきれたように彼はため息をついた。
「くだらねえこと言ってんじゃねえ。さっさと行くぞ」
「やーっぱり。手紙やメールでは何だかんだ言ってたくせに、行くんだ。【あの2人】の結婚式」
「……うるせぇ」
そう言った花京院はどこか楽しげだった。
エピローグ 壊れることのない幸福
「……櫟…遅い……。もう花嫁と花婿着替えているのよ……」
「まぁまぁ、霊奈。そう言わずに。櫟もしっかり花京院さんを連れてきてくれたんだしさ」
花京院と櫟が式場につくと、静かにだがゆっくりと怒りを見せる西園寺の姿があった。
そんな彼女を宥めるように花江は彼女の肩に手を置いた。
2人の姿はいつもの戦闘服ではなく、式に合った正装をしていた。
彼女たちだけではない。
雁渡や瀬良隊、聖までもが正装をしていた。
「うう……っ。ぐすっ……」
「泣くな聖!祝ってやろうじゃないか。彼女らの晴れ舞台を」
「はいいい……」
聖の目から涙があふれる。
それを元気づける梶原。
だが聖の涙腺と止まることは知らない。
聖だって男だ。大抵のことでは泣かないのだが、今回、今日は特別だった。
なぜなら―――……。
「みんな!花嫁のほう、着替え終わったよ。すっごく綺麗だ」
バタンと荘厳な赤い扉を雁渡しは思い切り開ける。
彼女の表情からしてきっと「綺麗」というのは真実なのだろう。
みんなそわそわしていた。
それから間もなくない後、雁渡が開けた隣の扉も開いた。
「こっちも終わったぞ」
フーッとやり切ったような表情で瀬良・麗・草薙が出てくる。
だが、やり切った感の瀬良とは真逆に麗と草薙は少しげっそりしていた。
「あ、アイツ……。部屋の物を壮大に壊したぞ」
「三城君って不器用だったんだなぁ、意外に。そのせいで体重減った気がする」
「女子か」
コツン、と草薙は麗の頭に軽くチョップする。
そして時計を見ながら瀬良は歩み出る。
「じゃあ、行くぞみんな。後はウエディングプランナーたちに任せて俺等は式内に行こう」
みんなは、このときあえて新郎新婦の様子を見に行こうとはしなかった。
式が始まってからの楽しみにしようと思ったからだ。
※
わー!わー!と歓声が上がる。
新郎新婦は外に出る。観客も外に出る。
この行為は花嫁が花束を飛ばすのだ。
次の幸せな花嫁に幸あれと―――……。
「秀也――!お姫様抱っこしろ!抱っこ!」
「かぐやちゃーん!こっちこっち!」
騒がしくはやし立てるのは仁と美也子だった。
この2人のうるささは3年前からずっと変わっていない。
それを見越している秀也は敢えて怒鳴る。
「うるさい!言われなくても」
「ひゃあっ!行き成り過ぎるのよっ」
「大人しくしろ!」
仁に言われた通り綺麗に着飾ったかぐやをお姫様抱っこする秀也。
だか驚いたかぐやは反射的に彼の頬をつねった。
「もう!狙いが定まらないじゃない!」
「外すなよ、【三城かぐや】」
「……!わかってるわよ!誰だと思ってるの!?」
挑発するような秀也の言葉に乗るようなかぐやの言葉。
そして大きな歓声の中で両手で思い切りブーケを振りかざし――……。
「えいっ!」
宙に放る。
フワフワと、ゆっくり。
特に女性陣が採ろうと必死になっていた。
中でもすごいのは聖だった。
「かぐやさんが触ったブーケは俺のものだ―――!!」
「気迫が違う……!」
「出た、かぐやバカ」
松○修造にも負けないぐらいの勢いでブーケに突っ込んでいくのは聖。
それを見た花江と西園寺は呆れたような表情で見ていた。
聖は勝利を確信した。
ブーケは後5センチで掌に……。
だが、その瞬間風が靡いた。
「あ――――!」
それでも無理矢理ブーケを採ろうと必死だった聖の悲鳴。
これは、ブーケを取れなかった悲鳴ではない。
ある、人物に向けてのものだった。
「お。間に合ったみたいだな、秀也とかぐやの結婚式」
ブーケを受け止め、さっそうと現れたのは……。
「郡司!」
かぐやは思わず大きな声で叫ぶ。
そんな彼女を見て郡司はニッと笑う。
「せっかく俺が来たんだ。パーティーはこれからだろ?」