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デッドバスター 
作者: KING ◆zZtIjrSPi.  (総ページ数: 151ページ)
関連タグ: 友情 バトル 
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*130*

―――ズズズズ……。

「……何……!?」

 まず真っ先に花江が音に反応する。
 
―――ゾゾゾゾゾ……。

「どこから……?」

 花江と同じく、西園寺も反応する。
 ジャッと3人は固まった。
 そしてハッとしたように雁渡は叫んだ。

「―――伏せろ!!!!」

――――ジャゴン!!!!!!!
 その言葉に従って一気に頭を下に下げる花江と西園寺。
 その瞬間、背後にあった建物すべてがバラバラに切り刻まれていた。





             No32      月の剣




「建物が一気に……!」

 呆然とする花江の隣で悔しそうに嗤う雁渡。

「……これが奴のソウルブレイブか」
「ご名答。私のソウルブレイブは月の剣と言ってな。半径1・5・10・15メートルにある円形に存在する全ての物は全て切り刻む」
「……だからさっき雁渡さんの体中に切り傷が……」

 ハッと先ほどの雁渡の件がはっきりした西園寺。
 それだけではない。
 先ほど自分と花江が放った遠距離攻撃についても合点がいった。

「――本来なら朔椰。貴様のあの攻撃で死んでいたはずなのだが……?」
「……一応、体中に薄くシールドを貼っていたんでね。まさかここまで斬撃が強いとは思わなかったよ」

 ゴットフリートは近寄りながら言う。
 近寄るのはおそらく、自分の範囲内である5メートルに合わせるためであろう。
 雁渡は自虐するように笑い、体中にある自らの傷を見た。
 花江はそっと雁渡に耳打ちした。

「……隊長。下がりましょう。そろそろ奴の範囲に入ります」
「ああ、そうしよう」
「残念だがもう遅い!」

 ゴットフリートは叫ぶ。
 そして、棒を横に振った。
―――ザンッ!
 3人は斬られた感触を覚えた。
 戦う前無線で雁渡に体中にシールドを貼っておけと言われていたが、そんなもの意味をなさないように思えた。

「がっ……!」
「くっ……」
「うっ……!」

 体中切り刻まれる感覚。
 ズザザと、3人は滑り込むように倒れ込む。
 ハァハァと息が漏れる。
 体を見たら案の定、傷だらけだった。

(これがソウルブレイブ……!?勝てる気が……しない……)

 ふと、脳裏で西園寺はそう思った。
 そう思うと、自然に体が震えてきたのだ。

「霊奈……?」
「……違う……。そんなわけ……」

 そっと声をかける花江。
 まるで自分の体ではないみたいだ。
 そう思ってしまう西園寺。

「………」

 百戦錬磨の実力者である雁渡ですら何も話さなくなってしまった。
 そんな彼女たちなど露知らず、ゴットフリートはまたこちらへ近づいてゆく。

「そろそろ終わりにしようか!」
『―――雁渡』

 死刑宣告のようなゴットフリートの声と同時に無線機に冷静な梶原の声が入る。
 伏せていた雁渡はバッと起き上がる。
 そして無線機に耳を当てた。

『南東部の殲滅者200体はこちらで排除した。君たちの所にソウルブレイブの反応があった。すぐに行く!』
「梶原さん……」

 力強い梶原の声。
 このまま彼に頼りたいぐらいだ。
 だが、これでは雁渡隊の名が廃る。

「いえ、梶原さんが来る前に倒して見せます。行くよ、花江、霊奈!」
「「はい!」」

 2人も、覚悟ができたように立ち上がった。
 もう、弱音は吐けない。


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