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*130*
―――ズズズズ……。
「……何……!?」
まず真っ先に花江が音に反応する。
―――ゾゾゾゾゾ……。
「どこから……?」
花江と同じく、西園寺も反応する。
ジャッと3人は固まった。
そしてハッとしたように雁渡は叫んだ。
「―――伏せろ!!!!」
――――ジャゴン!!!!!!!
その言葉に従って一気に頭を下に下げる花江と西園寺。
その瞬間、背後にあった建物すべてがバラバラに切り刻まれていた。
No32 月の剣
「建物が一気に……!」
呆然とする花江の隣で悔しそうに嗤う雁渡。
「……これが奴のソウルブレイブか」
「ご名答。私のソウルブレイブは月の剣と言ってな。半径1・5・10・15メートルにある円形に存在する全ての物は全て切り刻む」
「……だからさっき雁渡さんの体中に切り傷が……」
ハッと先ほどの雁渡の件がはっきりした西園寺。
それだけではない。
先ほど自分と花江が放った遠距離攻撃についても合点がいった。
「――本来なら朔椰。貴様のあの攻撃で死んでいたはずなのだが……?」
「……一応、体中に薄くシールドを貼っていたんでね。まさかここまで斬撃が強いとは思わなかったよ」
ゴットフリートは近寄りながら言う。
近寄るのはおそらく、自分の範囲内である5メートルに合わせるためであろう。
雁渡は自虐するように笑い、体中にある自らの傷を見た。
花江はそっと雁渡に耳打ちした。
「……隊長。下がりましょう。そろそろ奴の範囲に入ります」
「ああ、そうしよう」
「残念だがもう遅い!」
ゴットフリートは叫ぶ。
そして、棒を横に振った。
―――ザンッ!
3人は斬られた感触を覚えた。
戦う前無線で雁渡に体中にシールドを貼っておけと言われていたが、そんなもの意味をなさないように思えた。
「がっ……!」
「くっ……」
「うっ……!」
体中切り刻まれる感覚。
ズザザと、3人は滑り込むように倒れ込む。
ハァハァと息が漏れる。
体を見たら案の定、傷だらけだった。
(これがソウルブレイブ……!?勝てる気が……しない……)
ふと、脳裏で西園寺はそう思った。
そう思うと、自然に体が震えてきたのだ。
「霊奈……?」
「……違う……。そんなわけ……」
そっと声をかける花江。
まるで自分の体ではないみたいだ。
そう思ってしまう西園寺。
「………」
百戦錬磨の実力者である雁渡ですら何も話さなくなってしまった。
そんな彼女たちなど露知らず、ゴットフリートはまたこちらへ近づいてゆく。
「そろそろ終わりにしようか!」
『―――雁渡』
死刑宣告のようなゴットフリートの声と同時に無線機に冷静な梶原の声が入る。
伏せていた雁渡はバッと起き上がる。
そして無線機に耳を当てた。
『南東部の殲滅者200体はこちらで排除した。君たちの所にソウルブレイブの反応があった。すぐに行く!』
「梶原さん……」
力強い梶原の声。
このまま彼に頼りたいぐらいだ。
だが、これでは雁渡隊の名が廃る。
「いえ、梶原さんが来る前に倒して見せます。行くよ、花江、霊奈!」
「「はい!」」
2人も、覚悟ができたように立ち上がった。
もう、弱音は吐けない。