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*129*
(……リカバリーが当たらない……っ)
ドドドドドド!
と、花江は先手必勝と言わんばかりに素早く背中からリカバリーを取り出す。
そしてそれをゴットフリートに向かって打つ。
1つだった矢が幾千にもなって彼に襲いかかるはずだった。
だが、彼に直撃しようとした瞬間、すべての矢が圧し折られたかのように地へ落ちてしまっていたのだ。
「……正面からの攻撃ならどうかしら……?」
西園寺はそう言ってゴットフリートの背後からガンスタイルを何発も打ち込む。
だがそれも花江のようになってしまう。
しかし西園寺が攻撃したのはそれだけではなく。
ガンスタイルに取り付けてあるガンナイフでゴットフリートに斬りつけようとした、その瞬間だった。
(……斬られる……っ!)
背中を斬れる、と思った西園寺だったが、嫌な寒気が彼女の背筋に走る。
これ以上攻撃しようとしたら死ぬ。
そう思った西園寺は低空後方ジャンプで雁渡たちの元へ戻った。
「……ほう、なかなか筋がいい。貴様の教育の賜物か?朔椰」
「……いいや、彼女たちが勝手に育ってくれるだけさ」
(……霊奈が攻撃をためらった。この男、余程の実力者には間違いない。花江の攻撃をすべて無傷でいられるのもあり得ない……。まずは……)
少し考えた後、雁渡しはサイクロンを取り出した。
それを居合をするように構え――一気にゴットフリートに攻め寄った。
「……隊長っ!?遠距離でも傷を与えられなかったのにどうして接近戦を…!?」
「………雁渡さんには何か考えがあるのよ……」
驚いたように花江は一歩出た。
脂汗をかきながら西園寺は言う。
だがなぜ遠距離攻撃でもダメージを与えられないゴットフリートに攻撃を仕掛けたのか。
それは西園寺も一緒だった。
「……居合か!なかなかの正確さと速さだ」
「それはうれしい言葉だよ」
「……だが」
ギチギチと金属音が響く。
ゴットフリートは武器を持って雁渡に対応しているわけでもないのにだ。
彼の直前で攻撃できない仕組みになっていた。
ゴットフリートはニタリと笑う。
そして―――。
―――――ザシュッ。
その瞬間、雁渡の体中切り傷だらけになった。
それと同時に血も舞った。
「!?隊長!」
ガクンと膝から崩れ落ちる雁渡に花江と西園寺が駆け寄る。
西園寺は落ちたサイクロンを慌てて拾った。
その様子を見てゴットフリートは悲しげにため息をついた。
「……朔椰。貴様の実力はそんなものだったのか?私は楽しみにしていた――なのに、このザマとは……」
「……あなたにこの人の何がわかるっていうのよ……」
「ちょっと、霊奈!」
怒りをにじませた西園寺の声音に花江は慌てて止める。
だが、雁渡は空笑をしながらサイクロンに手をかける。
そして、ゆっくりと立ち上がった。
「……それは心外な言葉だなぁ、神光国家の使者よ。私はまだ3割ほどしか実力を出していないのだが?」
「……ほう……」
再び、ニタリと雁渡とゴットフリートは笑う。
そして、彼は懐から漆黒の棒を取り出すとそれをトン、と地につけた。
「―――ならば。勇敢なる貴様らを評して、私も本気を出そう。
……月の剣!」
No31 実力者