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*128*
「……そうか聖君、花京院君が……。わかった。そちらの討伐ご苦労様。残りはこっちに任せてくれ」
ガガガ……。と耳につないでいた黒い無線機から手を放す雁渡。
どこか悲しげに話す彼女を見て花江は不思議そうに顔を見つめた。
「どうしたんですか?あっちで何か?」
「……いや、花京院君たちが戦ったソウルブレイブ保持者は――彼の元恋人だったらしい。討伐したようだけどね」
「……映画でよくありがちなパターンね……。まぁ、よくやったとでも言っておくべきかしら……」
そう淡々と言い放つ西園寺。
西園寺は麗の一件から花京院を快く思っていないのだろう。
だが、ソウルブレイブ保持者を倒したことによって少し株が上がったのだろう。
あまりにも冷淡な言い方に花江は妹をあやすように頭をグリグリした。
「こーらー霊奈!またそうやって嫌な感じの言い方を……」
「……!来るよ、構えて2人とも」
「「!」」
隊長である雁渡の声にバッと2人はブレイブを構えた。
確かに前方から殲滅者が3体。
だが、こちらで倒せないという相手ではなかった。
「大半は聖たちが倒してくれたからね。楽勝さ」
「そうやって……油断しているから死ぬのよ……」
「ゆ、油断はしてないよ!?」
呆れたように横目で花江を見つめる西園寺。
言葉をかき消すように慌てて花江は手をブンブン振った。
微笑を浮かべながら雁渡は声を張る。
「無駄話はそこまで!」
そう、3人がこちらへ向かってくる殲滅者に突撃しようとした瞬間だった。
生命の反射か、3人は突然立ち止まる。
―――ドォォォォォォォン!!!!
突然の轟音が3匹の殲滅者の上から落ちてきた。
あまりのことにいつも冷静に対処する雁渡ですら言葉を失った。
そんな彼女の代わりと言わんばかりに唸るような低い男の声が砂煙とともに現れた。
「ほう……。リムの奴はやられたな。嘆かわしい。伝達によるとレオンやイリヤもやられおって……。これでは忠義を果たせるのは私だけか……」
空を見上げながら何なら呟くゴットフリード。
そしてすぐさま、3人の姿を黙認すると、雁渡の顔を見てニイと口元に弧を描く。
「……雁渡朔揶、だな」
「……合っているよ。何か用かな侵入者さん」
「ずっと……アトラスがここに来る前から水晶でお前たちを見ていた」
そう言ってゴットフリートは懐から水晶を取り出す。
それにはこの日本が見えるのだそう。
威圧。
ゴットフリートの威圧で3人は蹴落とされそうになる。
西園寺はゴクリ……。と生唾を飲む。
(……此奴……ヤバい………!)
「見ていたとは、さすがの私でも知らなかったよ」
「かぐや、秀也、郡司、一心……そして朔椰、お前はとても興味深い!!!!」
ギョロッと目があった瞬間、恐ろしいほどの寒気に襲われる花江。
思わず、足が動かなくなっていた。
それは西園寺も例外ではなかったようだった。
そんな2人を解きほぐすように雁渡はポン、と肩をたたいた。
「――落ち着いて2人とも。あれはただの脅しみたいなものだ。ゆっくり、深呼吸して」
「……!」
2人は雁渡の言うとおりに深く深呼吸した。
そしてゴットフリートは楽しげにバッと両手を広げた。
「さあ、始めよう。闘いを」
――――ゴオッ!!!!
彼の闘志が風圧となってこちらへ襲い掛かってくるようだった。
3人は体勢を崩さないように足で大地を踏みしめる。