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*60*
「……げほっ。空悟……って、いない!?」
花京院の如月の攻撃によって、一室の壁が破壊される。
土煙によって視界が見えない。ようやく視界が晴れてきたと思い咳払いをしつつもあたりを見渡す。
だが、そこに花京院の姿は見えなかった。
「壁を破壊してまで逃げた……!?」
彼の突拍子のない行動に唖然とするかぐや。
(……でも、バスター本基地の壁はかなりの強度を誇る。殲滅者の攻撃でもなかなか崩れないはずなのに……!戦場の死神っていうのは伊達じゃないってことね)
破壊された壁から身を乗り出しかぐや。
「だからといってここまで来たんだから諦めるわけないでしょ!すぐに見つけてやるんだから!」
そう言ってかぐやは飛び降りた。
※
「花京院か?ああ、Bランクの癖して人間離れした戦闘能力持ってる奴か。姿は見たことこそはあるが、話したことはない」
第二資料室で調査を続けていた郡司は偶然、瀬良、草薙と麗に遭遇した。
彼らは任務先で排除した殲滅者の事後報告による書類をまとめているようだった。
淡々と話しながら草薙は資料を書き留めている。
麗は思い出したように書類の取り出しをピタリと止めた。
「確か、圧倒的実力で殲滅者を皆殺しにしてきた“戦場の死神”って言われてますよ。俺も模擬戦で10本勝負したんですけど3本しか取れませんでした」
「どうせめんどくさい案件に手でも出したんだろこのポッキーSランクは」
皮肉たっぷりの瀬良の言葉に郡司は「うぐ」と喉の奥から息を漏らす。
今回のことはかぐやが大半なのだが何か言ったら手痛いことを言われることはわかっていたので黙っていた。
「だがなぜ奴の名が出てくる?」
草薙は目線をこちらにも向けずに書類を書きつづける。
彼の問いに郡司は唸るように言葉を発した。
「……かぐやが、帝さんの死んだ本当の理由と、首飾りについて知りたいらしくてさ。こうやって資料室で手当たり次第あの人の情報探してるんだけどさ。全然出てこないんだよ。第一資料室のある部分なんか破られてた」
「ええ!?資料を破ったら梶原さんの鉄拳が飛ぶって七不思議があるのに……!?」
「なんじゃそりゃ。初めて聞いたぞ」
「仁君から聞いたんです。バスター七不思議」
「下らねぇ」
さあっと顔を青くする麗に呆れながら草薙は彼を見る。
初耳、と言わんばかりに瀬良の口元がへにゃりと歪む。
草薙も何か思い出したのか、顎に手を当てる。
そんな彼に郡司は不思議そうに見つめる。
「どうしたの?草薙。何か思い当たる節があんの?」
「……!おい、草薙」
何かを察したように瀬良は草薙を見据えるが、彼もどこか進まない様子だった。
いつもは淡々とはっきりとしている口調のはずなのに、今回はどこかおどおどしていた。
「これを花京院本人に行ったらタブーだと思うんだが……オフレコにするんなら言っとく」
「うんうん、するする」
「……妙に信用できないな」
「だ、大丈夫ですよ。2人とも。俺が知ってる郡司さんはそんなことしないので」
疑いのまなざしで草薙は郡司を見る。瀬良も同様なのかジトーッと郡司を見る。
この隊の良心、麗はまあまあと2人を宥めていた。
草薙は「まあ、いいか」と呟き、ジッと郡司を見た。
そして、口を開いた。
「―――――――――帝さんは花京院が唯一心を許せる存在だった」