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*61*
「……撒いたか」
ハァ〜と安心しきったように花京院は小さなため息をつく。
そこは、一般市民の立ち入りが許されていない警戒区間。瓦礫や、使用慣れていない家などがある場所だ。
そして、彼はある場所に立ち止った。そこは、怒りと悲しみの場所。
(……アイツの顔がちらついて頭痛が止まねぇんだよ……っ!)
脳裏に浮かぶのは、雨の音。
そして心の浮かぶのは―――――――……。
No10 想い
「住宅街にもいない市街地にも、どこにも!どこにいったのよアイツ〜〜っ!」
ムーッと顔を膨らませながらかぐやは地団駄を踏む。
勢いのまま飛び出してきたのはいいが、結局はそのあとが問題だった。
手当たり次第探すしかなく、特徴を市民の人に聞きまわったが全然情報は得られなかった。
「次はどこに行けばいいのかしら……」
「たい焼き食うか?」
「ええ!……え?」
「よっ。かぐや」
「やっほー」
ズイ、とホカホカ焼きたてのたい焼きがかぐやの口元に運ばれる。
思わず目を輝かせたかぐやだったが、聞き覚えのある声の人物たちに思わず我に返った。
そこにいたのは仁と美也子であった。
「会うのこの前の決戦以来だな〜」
「決戦は決戦でも“血戦”だったけどね。3対1でわたし戦ったんだから」
「まぁまぁ、そんな固いこと言わずにさ〜」
のんびりとした口調で3人はちょうど近くにあったベンチに座り、先ほど仁がくれたたい焼きを頬張っていた。
前の血戦がウソのようにこうやってゆったりしているのも、仁と美也子のなせる業だろう。
すると、仁はかぐやの顔を覗き込んだ。
「秀也は会議に出てて今日は一緒に出掛けられなかったんだよな〜。そういえばさ、さっきまでお前全速ダッシュしてたけどだれか探してたのか?」
「あ―――――――――っ!!!!」
仁に言われて思わずかぐやは大声を上げた。
驚いた美也子は思わずたい焼きを落としそうになった。
今、自分はたい焼きを食べている場合ではない。
「わ、わたし空悟探さなきゃ!逃げられたのよ!」
「空悟……?花京院さんか?あの人なら少し前に警戒区域内に入ってたけどな」
「うん。なんか神妙な顔してたよ〜」
同意を求めるように仁は美也子を見る。
美也子も頷きながら最後のたい焼きの一口を口に放り込んだ。
かぐやは急いでたい焼きを書き込むとダン!と一歩踏み出した。
「仁!美也子!たい焼きありがとう!でもわたしもう行かなきゃ!」
「そうみてーだな。じゃあ、また今度会ったらサシの勝負してくれや」
「私もね〜」
「……わかったわ。返り討ちにしてあげる!!」
勝気な笑みでそういうと、かぐやは走り去っていった。
すると、ブーブーとサイレンが響き渡った。
『南西・北東にて殲滅者出現。隊員は即座に対応するように。なお、近くにいる住民たちはただちに避難せよ』
「……じゃあ、私たちはちょうど近くの南西だね〜。行こう、仁ちゃん」
「はいはい。秀也もそろそろ来るころだろうしな。……あれ」
「?どうしたの〜?仁ちゃん」
先ほどまで飄々とした笑みを浮かべていた仁が少し真面目な顔になる。
そんな彼を見て美也子は首をかしげた彼に説いた。
「かぐやが向かったのって……北東じゃあ……」