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*131*
「その眼……。どうやら覚悟ができたみたいだな」
「ああ。済まなかったね。不甲斐無い戦い方をしてしまった」
「構わん。ただ私の信念は1つ―――我が主の命を果たすのみ!」
「避けろ!」
――――ズバン!
再びゴットフリートの攻撃が飛ぶ。
雁渡の声とともに花江と西園寺は大きくジャンプした。
そしてそのまま西園寺は空中でガンスタイルを発砲した。
「ぐっ!」
弾をゴットフリートは腕で受け止める。
タン、と西園寺が着地するとホッと一息ついたように呟いた。
「やっと……一撃いれられた……」
「さっきの攻撃で大体はわかったよ。確かにあなたの攻撃は凄まじい。だけどあなたのその剣の範囲に入らなければ問題ない!」
そう言って雁渡はサイクロンの刃を伸ばし、そのままゴットフリートを居合切りする。
居合切りした彼女は後方ジャンプへ遠ざかる。
ヒュンッと勢いよくリカバリーの弓を弾く花江。
「さっきのお返しさ!」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
雁渡の十文字切り。
そして花江の100にも及ぶ弓矢。
それを直撃した彼は痛みに悶えていた。
しかし、胸に手を置き、不気味に笑う。
「いいぞ……私が求めていたのは……!我が主よ!この国もまだ捨てたものではなかったぞ!月の綻び“ムーン・アルテミス”!!!!」
――――キィィィィン……。
と、モスキート音のようなものが3人の耳に入ってくる。
そして……。
――――ズドドドドドドドドドドド!!!!!!!
その瞬間、周りにあるすべてのものが切り刻まれていく。
地面も、建物も。
どれが空でどれが地面がわからなくなるほどに。
「わ、わあああああっ!隊長!」
「……足場が……!」
「落ち着いて、2人とも!さっき、私が言ったとおりにするんだ」
冷静な雁渡の言葉にハッと顔を上げる2人。
そして静かに頷いた。
No33 勇者たち
「この技で私は国を1つ落とした。この最大と言える技でな。だが……あと2回しか使えん。その1回は……貴様らを殺すために使おう」
崩れ落ちる雁渡達にゆっくりと歩み寄るゴットフリート。
首だけ起こして3人は彼を睨みつけていた。
(……さっき、あれほどダメージを食らったのに……タフネスすぎないか!?)
立ち上がろうとガリ……。と土ごと引っ掻く花江。
そして隣にいる雁渡のスゥと息を吸う音が聞こえた。
「今だ!走れ!」
その言葉を聞いて、花江と西園寺は一気に走り出した。
しかも、ゴットフリートの目の前、1列になって駆け出す。
彼はひどく驚いていた。
「真正面から……!?まさか!」
「ああ、そのまさかさ!」
「「はああああああああああああああああ!!!!」」
花江は、リカバリーを構える。
違う点は先ほどまで広範囲重視の分散型攻撃だったが、今回は攻撃力を高めるためにストライドを込めた一撃を放った。
そして西園寺も同様、複数の発砲を止め、ストライドを込め、一撃を放った。
「うぐうっ!?」
――――−ドパンッ!
と、それらを直撃されたゴットフリートは後方へ吹き飛ばされる。
そして、最後に―――……。
「行けええええええええええええっ!」
―――スパァァァァァンッ!
雁渡によるサイクロンの一撃がゴットフリートの心臓を貫いた。
立ったまま、血を流す彼は不思議そうに雁渡を見た。
「……どうして月の剣の弱点がわかった?」
「私たちを攻撃した瞬間、気が付いたのさ。月、と言っても満月。円型のようにしか攻撃できない。だから、あなたへの真正面はガラ空きだったわけさ……」
「……天晴れだ」
ズシャッと、サイクロンが抜かれる。
そのまま崩れ落ちると思っていた。
しかし。
彼はガッと力を込めて雁渡の肩を掴んだ。
「!?」
「隊長!」
その様子に花江が驚き、駆け寄ろうとするが彼の範囲内だ。
迂闊に手が出せない。
「言っただろう。全身全霊。月の綻びはまだ終わらない!」
「雁渡さん……っ」
西園寺が手を伸ばした。
もうだめだ。
そう思った瞬間だった。
「その手を放してもらおう」
――ザシュッ!
「ぐあああああああっ!」
「何……」
上空から斬撃が飛んだ。
ゴットフリートの両手は切り裂かれていた。
驚いた花江と西園寺は上を見上げた。
そこには通常ブレイブ最強の男、梶原一心が降り立っていた。
「……光栄だ……最後に……一心……。貴様に出会えて……このゴットフリート……一生に後悔……無し…」
ゴフッと血を流しながらゴットフリートはそういうと、今度こそドサッと倒れ込んだ。
彼を見ながら梶原は雁渡達を見た。
「3人とも、大丈夫か!?酷いけがだ、医務室へ行こう」
「あの」
花江が傷口を手で押さえながら呟いた。
「かぐや達は大丈夫でしょうか……?」
「ああ、アイツらならきっとやってくれるさ。絶対に」