完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~ 110~ 120~ 130~ 140~ 150~
*149*
―――さらに、郡司がいなくなって1週間。
日常は、本当の意味で戻ってきた。
いくら神光国家を破壊したからと言って殲滅者が消えたわけではない。
「聖!右開いてるわよっ」
「すみません!……ぐっ」
アパートから引っ越し、かぐやの兄、帝の遺産から一軒家を買ったかぐやの庭にて。
聖とかぐやの特訓が行われていた。
秀也はその様子を椅子に座って眺めている。
カンカンと木刀の打ち合いでビシッとかぐやから右のわき腹に一本入る。
悔しそうに聖は手足をバタバタさせた。
「くーやーしーいー!なんでかぐやさんから1本取れないんだよー!」
「それはお前にムラがありすぎるからだ」
「秀也さん!でも……」
しゅん、とうなだれた様に首を垂れる聖。
ふう、とかぐやは一息つくと彼の頭をぐしゃっと撫でた。
「アンタはまだ若いんだから焦らないの!これからなんだから、アンタは」
「は、はい!よーし、頑張るぞ」
かぐやの言葉にフン!と意気込む聖。
かぐやはジュースを飲みながら聖に告げる。
「聖―。午後からまた再開するわよー特訓」
「もちろんです!」
「……二人っきりになれると思うなよ」
「ショ、ショウチシテマス」
かぐやが玄関へ向かった瞬間、秀也の鬼のような怒気が飛ぶ。
その怒気に逆らえない聖はカクカクとロボットのように固くなり、畏まった。
※
「はー、暑い。もう夏かー……」
燦々と照りつける太陽を見上げながらかぐやは長くため息をつく。
「打ち水でもしようかしら」
そう呟き、近くにあった桶を採ろうとした瞬間、何かがぶつかったような感触がした。
「ひゃあっ」
「わあっ」
コロンっと何かが転んだ。
まじまじとそれを見つめると、ぶつかったのは9歳ぐらいの幼い少年。
どこか不思議なオレンジ色の髪に綺麗な紫色の目の幼い少年。
少年はかぐやの顔を見るなりスクッと立ち上がってビシッと背筋を伸ばした。
「あ、あの!竜堂かぐやさんですか!?俺に、戦い方を教えてください!俺、殲滅者と戦える方法を知りたいんです!」
「そ、そうよ。行き成り何で……」
急に言われたその言葉。
思わず面喰ったように目を見開くかぐや。
豆鉄砲でも受けたような表情だった。
だが、幼いながらも真剣な少年の顔にどこか見覚えがあって。
思わずプッと吹き出していた。
「……いいわよ!そのかわり幾らあんたが小さいからって容赦はしないわ。頑張ってついてくることね」
「はい!」
キラキラと目を輝かせる少年。
そんな少年をみてかぐやは気が付いた。
嗚呼、かつての自分なのだと。
兄を尊敬していた自分とそっくりなのだと。
「ついてきなさい!」
そう言って後ろを振り向き、少年に手招きする。
何かを思い出したようにかぐやは少年に問う。
「アンタ、名前は?」
「――有人(ありと)!王城有人(おうじょうありと)です!」
嬉しそうに幼き少年――有人は言う。
そしてかぐやは思わざるを得なかった。
――これからも、今もずっと若きものが世界を救う。
だから自分たちが先導者にならないと、と。
デッドバスター finish!