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*148*
―――あれから1か月後。
かぐやと秀也のカップルは仁と美也子によって瞬く間に広がった。(そのあと秀也から厳罰正拳を受けたが)
瀬良隊や雁渡隊や梶原さんにも祝福された。なぜか。
聖は「あとのことは任せましたぁ……っ」と号泣していたし、櫟は楽しそうに聖にティッシュを渡していた。
ただ、それだけのことであって変わらなかった。
ただ、変わったのは――――……。
最終回 先導者
――場所はバスター本基地屋上。
「本当に、行っちゃうのね」
「ああ、早くくじらが目覚める方法を見つけてやりたいんだ」
変わるのは、郡司がバスター本基地から出て旅に出ること。
彼は旅に出るような大きなリュックを背負っている。彼の目的は、未だ目覚めない、もしかするといつ目覚めるかわからない彼女を目覚めさせる方法を見つけるための旅だった。
彼が旅に出るのは早朝で、誰も来ていない時間だった。
郡司はこのことをかぐやにしか伝えていなかった。
かぐやは寂しそうに郡司を見る。
そんな彼女を見て困ったように笑うとくしゃくしゃと彼女の頭を豪快に撫でた。
「な、なにするのよ!髪の毛グシャグシャになっちゃうじゃない!」
「はっはっは。いやースマンスマン。……寂しそうな顔してたからさ」
「……別に、行くなら行きなさいよ。くじらが待ってるんじゃないの?」
ムスッと拗ねたようにかぐやはそっぽを向く。
そんな彼女を見て郡司は飄々といつもの笑みを浮かべているだけだ。
「……ああ。もう行くよ。あと、かぐやと秀也末永く幸せにな」
「言われなくてもよ」
「聖にもちゃんとかまってやれよ、アイツ結構寂しがり屋だからさ」
「……知ってるわよそんなこと」
「困ったら秀也や瀬良隊や雁渡隊に頼れよ。アイツらは頼りがいがあるから」
「そんな困ったことがあったら頼ってあげてもいいわよ……」
「仁と美也子と櫟はやりすぎるところがあるからな、ちゃんと調整してやれよ」
「わかってるわよ!!」
大きな声でかぐやは叫ぶ。
じゃないと、もう二度と会えなくなってしまうかもしれない彼の前で泣いてしまうかもしれない。
だが、涙は目から零れ落ちる。
「やだもう……っ。よりによってアンタの前で泣くだなんて元エース失格じゃないの……!」
「……俺も、悲しい」
いつもの飄々とした郡司ではない。
本当で、真実ありのままの心情をさらけ出したような彼の声がかぐやの耳に入る。
「本当ならお前らとドンチャンやりたい。でも、俺はくじらが全てで、大好きだから。そのためならなんだってやってやりたい」
「……郡司……っ」
ボロボロに泣くかぐやをそっと優しく抱きしめた。
かぐやもしがみつくように彼の背中に手を回す。
「……でもさ、これが永遠の別れじゃない。きっと会えるから」
「……じゃないとっ……承知しないわよ……!」
そっとかぐやから離れると、郡司は「じゃあ」と呟いてがっと飛び降りるために一歩を踏んだ。
「【またな】。かぐや」
「ちゃんと成果見つけてきなさいよ、バカ郡司!」
「―――ありがとう」
そういうと、彼は高くジャンプして飛び降りた。
彼の姿はあっという間に見えなくなった。
「……死んだら…許さないんだから……」
泣きながらも、どこか笑っていたかぐや。
そんな彼女の表情は誰にも知られることはなかった。