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*147*
「瀬良さん……。俺はどうすればいい……」
「い、いや、今のままでいいと思うぞ……?」
どんよりした空気が給油室を漂う。
ただ瀬良はコーヒーを淹れに来ただけなのに運悪くそこに秀也がいた。
愚痴を聞かされる雰囲気を察した瀬良にとってはいい迷惑だ。
「かぐやに…振られてしまった……。何で分からない、もういいバカって言われてしまった……見捨てられた」
(……いやそれ普通の少女マンガだったらお前のこと好きパターンだぞ……?)
思わずそう言いたくなったがやめておく。
そう言えばますます面倒くさいことになるからだ。
あーと一言言いながらふと、思い浮かんだように瀬良は言う。
「なあ秀也。確かに幼馴染歴はあのボケナスSランクのほうが上だ。でもよ、8年も顔を合わせずに、それも自分を殺そうとした相手をあそこまでして分かり合おうとする奴なんているのか?」
「……それは……」
少し思い当たる節があるのだろう、秀也は言葉を濁した。
はあ、と瀬良はため息をつきながら軽く秀也の背中を押した。
「行けよ秀也。アイツ“かぐや”はお前を必要としてる。心配すんな。お前は飛来よりも誠実な男だからな」
「……はい!」
そう言って少し嬉しそうに微笑を浮かべながら秀也はバタバタと給油室の扉を開け、そのまま走り去っていった。
瀬良はコーヒーを飲み干すと、ふと麗と草薙に言われた言葉を思い出した。
「言葉が大人びすぎて逆におっさんに見えるってか……。もしかしてさっきのもか?」
それは神のみぞ知ることである。
※
秀也は走った。
とてつもない広さのバスター本基地を走って走って走りまくった。
かぐやを見つけるために。
気が付けば夕暮れになっていた。
だが彼女は見つからない。
秀也は息を切らしながら噴水前で息を整えていた。
「くそ……っ。どこに行ったんだ……!?」
「ど、どうしたのよ秀也、そんなに息を切らして……っ」
かぐやの言葉は最後まで発せられなかった。
その理由は、ガバッと秀也が彼女を抱きしめていたからだった。
かぐやは恥ずかしそうにジタバタするが男女の差があるため、彼の束縛から解放されることはなかった。
「こんなところでやめてよ秀也!」
「ここなら誰も来ない。……聞いてくれ」
静かに。
秀也は真剣に彼女に言う。
彼の真剣みが伝わったのか、うつむきながらかぐやは黙り込んだ。
「……正直、さっきお前が俺に言った言葉の全てはわからなかった。だけど、俺は、お前と会ったあの日からずっと、ずっと好きだった」
「――――……!」
その言葉を聞いてかぐやはバッと彼の束縛からスルッと抜けた。
そして―――……。
「そんなの。わたしだってアンタのことずっと好きだったんだから。言うの遅いのよ、バカ!」
顔を真っ赤にしてかぐやはモジモジときまり悪そうな表情になる。
一瞬、夢かと思った秀也。
だがこれは夢ではない、現実だ。
一歩踏み出して秀也は再びかぐやを抱きしめる。
「―――ずっと、ずっとお前を守る」
「わたしはただ守られるタマじゃないわよ」
そう言ってお互い笑う合う。
とても幸せそうに―――――……。