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*146*
―――かぐやが、泣いている!?
そんなこと、絶対あってはならない。
昔俺が今度こそかぐやを守るってそう誓ったはずだ!
だからもう、泣くな――――……!
「かぐや!」
「秀也?」
息を切らして物凄いスピードで走ってくる秀也にかぐやはぎょっとした顔になった。
そして間髪入れずにがっと思いっきり肩を掴まれる。
驚きで言葉がでないかぐやに秀也は豆鉄砲を食らったような表情へ変わった。
「……泣いて…ない?」
「はぁ?」
No40 コクハク
「今日暑いから額に汗が伝っただけよ!わたしが泣くわけないじゃない」
「……勘違い、か…」
2人は木陰が涼しいベンチに座った。
呆れたようにかぐやは言った。
恥ずかしそうに秀也は額に手を置く。
あとで仁と美也子絞めよう。
そう思った秀也であった。
「……まさか、それだけのために来たの?」
「……悪いか」
どストライクに核心を突かれたため、秀也はきまり悪そうにぶっきらぼうに言った。
顔をそむける秀也にかぐやはクスリと笑った。
「相変わらず変わってないのね、その不器用さ」
「うるさい。変わってたまるか」
「ちょっと、拗ねないでよ!」
もう!とじれったそうにかぐやは秀也の耳を引っ張る。
これが仁や美也子だったら思いっきり蹴り飛ばしているが相手は昔ながらの思い人、かぐやだ。
そんなことするつもりもないし、そんなことすら思わない。
(……これが惚れた弱みというものか)
火照った頬を冷ますために秀也は額に手を当てる。
しばらく黙っていた2人だったがふと、かぐやが口を開いた。
「……最近ね、郡司がちゃんとわたしの顔見てくれないの。くじらがいるから後ろめたいって顔してるのよ。……わたし、どうしたらいいのかわからなくて」
少し悲しそうにかぐやは微笑んだ。
いつも気丈な彼女がこんな顔すること自体珍しい。
郡司が、いつもより憎たらしくなる瞬間だった。
「……アイツはアイツだろう。トップギアとのことは知らん。アイツなら勝手に自己修復でもするだろう」
「そう、よね」
サアッと吹き抜ける風が頬を撫でる。
秀也の言葉にますます表情が暗くなった。
それを察した秀也は慌てて慰めようとするが、出てきた言葉は―――……。
「……かぐや。お前、郡司が好きなのか?」
言ってしまった。
何を言っているんだ、俺は。
全然話と関係ないじゃないか―――……。
秀也がどうしようかと口をパクパクさせているのと同時にかぐやの顔が真っ赤になっていく。
「なななななな何言ってるのよ!バカ!そんなこともわからないの!?わたしが、あれだけ、あれだけ―――――っ!どうして何もわからないの!?もういい秀也のバカ!」
ガタッとベンチから立ち上がるとかぐやは全力疾走して立ち去って行った。
そんな彼女の姿が見えなくなるまで呆然としていた。
「………振られた………」