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*145*
「……今日も来ていたのね、郡司」
「ああ、ここが一番落ち着くからな」
ガラリと開いた窓の病室。
ここは未だ目覚めないくじらの病室だった。
フッと微笑む郡司に苦笑しながらかぐやも彼の隣に座った。
「くじらを目の前にして言うのもなんだけど……アンタ、隊を作りたいって言ったのウソだったんでしょ?こんなことがなかったら死ぬまでくじらと会えなかったから」
「……そうだな、そうかもしれないな」
さあっと入ってくる風になびかれながら郡司は答える。
かぐやは何も言わず次の郡司の言葉を待っている。
「半分そうであったし、半分そうじゃなかった。くじらと二度と出会えなくなるかもって言われたときに俺は半分自暴自棄になってた。そんときにはお前もいなかったから。だからお前と再会して、お前をくじらの代わりにしていたのかもしれない。口調も、性格も全然違うけど、お前らは根本的にどこか似ていたからさ。嗤える話だろ?」
どこか皮肉気に郡司は嗤った。
きっと、こうなったのもかぐやに対しても自分を責めているのだろう。
それを感じたからこそ、かぐやは思いっきり郡司の頭にチョップした。
「せいやっ!」
「いったぁ!何すんだよかぐや!」
「アンタがうじうじしてるから喝入れてやったのよ感謝なさい!」
「んな横暴な……」
うっすらと涙目になりながら痛む頭を抑える郡司。
フン!とかぐやは踏ん反り帰りながらガラッと扉を開けた。
「じゃあ、わたしは帰るわね。……2人の邪魔して悪いし」
「……え、あ、う、うん」
意地悪そうに、仕返しするようにかぐやは少し舌を出してピシャリと扉を閉じる。
最後の言葉の意味が最初分からなかった郡司。
だがようやく言葉の意味を理解した郡司は顔を真っ赤にして爆発した。
No39 意気地なしと天邪鬼
「きょーもかぐやは郡司さんと一緒にトップギアのお見舞い行ってたぜ」
「仲良くなっちゃうねぇ〜……」
「何が言いたい」
蒸し暑い部屋の中、下敷きでパタパタと風をあおりながら三城隊は書類整理をしていた。
テキパキ作業していた秀也だったが、仁と美也子の言葉に作業していた手をピタリと止まらせる。
「だってよー。いつまでたってもお前かぐやに告白しないし」
「見てるこっちがじれったくなっちゃう」
「黙れ。お前たちにつべこべ言われる筋合いはない」
「つれないねぇ〜」
ピシャリと言い放つ秀也に仁はつまらなそうに口をとがらせる。
暑い、と愚痴をこぼしながら美也子は部屋の扉を開ける。
風を浴びたいのだろう。
だが、しばらくすると2人に手招きして呼びかけた。
「秀ちゃん仁ちゃん。……あれ、かぐやちゃんじゃない?」
「え?」
「は」
そう言って2人は美也子の言うとおり窓をのぞいた。
そこには燦々と照りつける太陽の下、かぐやが歩いていた。
それだけならまだよかった。
仁が何か気が付いたようにスッと指差した。
「あれ……アイツ、泣いてね?」
「え?どれ〜?」
確かに、こちらからの角度からは見えにくいが、ポタッと頬を伝う雫が流れ落ちていた。
「――――っ!」
「あ、秀也!」
「どこ行くの〜?」
バッと物凄い勢いで秀也は走りだした。
思わず声をかける2人だったが、それにも構わず秀也は走り去っていく。
「……で、どーすんだよこの果てしない書類」
「頑張るしか、ないよ〜」