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デッドバスター 
作者: KING ◆zZtIjrSPi.  (総ページ数: 151ページ)
関連タグ: 友情 バトル 
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*144*

「かぐやさーん!」
「聖!」

―――コォォォォォォ……。
 飛行船から降りてくるかぐやを見るや否や聖は思いっきり駆け出してかぐやに抱きついた。
 難なくロケットのように飛びかける聖をかぐやは難なく受け止める。
 それを見た秀也は一瞬殺意を出しかけたが、仁が肩に手を置くことで我を失わずに済んだ。

「神宮寺、それより言うことがあるだろ」
「あ……」
「?どうしたのよ?」

 櫟が横目で聖を睨む。
 ハッとしたように聖はゆっくりかぐやから離れた。
 そして決まりが悪いように目を伏せた。
 
「……実は……勇魚司令官が……」
「――――……!」




             No38   事の末路




 クローディアが放った最後の攻撃、つまり日本を破壊する彗星を勇魚が命がけでそれを守ったこと。
 聖からその話を聞いて急いで走って会議室へ向かう。
 そこが、彼の仕事場だったから。

(……いっつもわたしには厳しかったけど……でも……!)
「勇魚さん!」

 バタン!と思い切り扉を開くと、そこに勇魚はいなかった。
 勇魚ではなく、そこには雁渡隊がいた。

「やぁ。思ったよりも元気そうだね、かぐや」
「雁渡さん……」
「あ、かぐや!おかえり!」

 箒で手際よくサッサと埃を掃く雁渡。
 そんな彼女の声に花江もようやくかぐやの存在に気が付いたようで。
 うれしそうに雑巾がけを放棄しながらかぐやに駆け寄った。


「……勇魚さんは」
「お察しの通りだよ。司令官殿は身を挺して我々を守ってくれた」
「……遠征に行ったわたしたちよりも英雄ってわけね」
「そんなことないさ。みんな、やるべきことをやった。それは勇魚司令官殿も同じ」

 そう言って雁渡しは机に寄りかかる。
 かぐやはハッと気が付いたように彼女らに言う。

「……葬式はしなかったの?」
「今しているよ。私たちは療養として出ることを梶原さんから禁止されてしまったけれど。ほかのB〜Cランクの隊員が弔っているよ……」
「……で、私たちは勇魚さんがよく使っていたこの会議室をせっかくだからってことで掃除していたの………」

 黙々と作業をやっていた西園寺が口を開いた。
 彼女は叩きでパンパンと埃を払っている。
 かぐやはその様子を見て「へえ」と感心したように声を出した。

「どうりで勇魚さんの話がわたしに入ってこなかったわけね」
「……それもあるけど、飛来君が気にしてたトップギアは?」
「問題ないわ。ただ……病院の人が言うには普通の人間なら死んでるはずの血液4/3が採られていたのにも関わらず生きている……けど、意識はいつ戻るかわからないって……明日かもしれないし、何年も先かもしれないって……」
「そうか……」

 雁渡は少し悲しそうに目を伏せた。




「――――……くじら」

 病院のあり一室にて、くじらと郡司はそこにいた。
 ピッピッピ……。と心音を計測する機械の音が病室に木霊する。
 そっと郡司は息を吸うだけのくじらの手をそっと握る。

「ずっと、待ってるからな。……目が覚めたらずっと一緒にいよう」

 そう言った郡司の目はとても優しげだった。



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