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*54*
「結局、資料室に行っても特に情報は得られなかったわ」
「前に雁渡さんが言ってた“王の鍵”か?」
「そうよ」
タンッと軽い音を立てながらかぐやと郡司は警戒地域の住宅の屋根を使い、移動していた。
ふと、郡司がかぐやにそう話しかけると彼女は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
ちなみに聖は別の殲滅者の対処へあたっている。
「首飾り以外にも兄さんのことが気になって隊員名簿とかを調べたの。でも全然出てこなかった。……むしろ、兄さんが亡くなった8年前の記録が全部ないのよ。ページが破かれていたわ」
「ページが……?」
ギョッとしたような表情を浮かべる郡司。
だが、次の瞬間何かを察知したのか彼はピタッと足を止める。
「おっと。とりあえず話はここまでだな」
「……殲滅者ね!ってヴァルヴォン……。最悪」
すぐさま斧を構えたかぐやだったが殲滅者の種類を見るとげんなりとした顔をした。
それも無理はない。
ヴァルヴォンは追い詰められると自爆したり高濃度の毒を吐きだしたりとかなり迷惑な存在であり、こちらもあまり攻撃力を持たないが装甲の暑さはザイナークの比ではない。ムカデ型で全長35メートルぐらいが特徴な殲滅者だ。
「こっからだと市街地に近いから自爆されたりすると困るわ。早く人がいないところに……」
「いや、俺等が出る幕は無さそうだ」
「どういうこと?」
抜いた如月を鞘に納める郡司。
いつもなら殲滅者を倒すために策を練り、叩き潰すのがモットーに等しい郡司にはあり得ない行動のためかぐやは思わず目を丸くする。
そして頭に何かよぎったのか横目で彼を見る。
「―――また何か“観た”のね」
「ご名答」
にやりと郡司が笑う。
フウ、とかぐやがため息をつくと彼女も斧を構えるのをやめた。
すると、ズドオオオン!と衝撃波が飛んだ。
もちろん、かぐや達のものではない。
「ったく……。ヴァルヴォンとかめんどくせぇ」
死骸と化した殲滅者の上に載っていたのは花京院だった。
タキシードを靡かせ、吐き捨てるように言い放った。
【観て】いた郡司にとっては彼が現れることは想定内だったらしく、あまり驚く様子は見られなかった。
「花京院さん。相変わらず仕事だと行動速いね〜」
「……久しぶりに会った隊員がお前かよ。救えねぇ」
見下ろすように花京院は郡司を一瞥すると、音なく着地した。
そして彼はかぐやの存在を視認すると眉間に皺を寄せる。
「誰だって面してんな。……一応名乗っとくが俺はBランクの花京院空悟」
「名前だけなら知ってるわ。私や郡司ほどではないけどかなりの古株よね。私は竜堂かぐや。覚えといて」
「……っ!」
ザワッと。
花京院の空気がざわついたような気がした。
素人でもわかる雰囲気の変化に郡司は少し口を開ける。
「……どうしたんだ?花京院さん」
「……っ。何でも……ねぇよ……っ!」
明らかに様子がおかしい。
うっすらと額に汗すら浮かべていた。
具合の悪そうな花京院にそっとかぐやは近づいた。
「ちょ、ちょっとアンタ大丈夫!?今すぐ医務室に……」
「触んな!」
かぐやが肩に触れようとした瞬間、パァァァンと花京院の手によって弾かれてしまった。
「……邪魔だ。俺はもう帰る……。二度と俺に関わるんじゃねぇ……」
フラフラと覚束無い足取りで花京院はバスター本基地へと帰って行った。
郡司はどうしても放っておけずに手を貸そうとしたが、花京院の人を寄せ付けない雰囲気を察知し、手を貸すのをやめた。
花京院が去った後、郡司は少し不安気にかぐやを見た。
「怪しいわね……」
「え?」
疑うような眼差しで空語が言った道筋を睨むように見つめるかぐや。
そんな彼女に郡司は豆鉄砲を食らったような何とも言えない表情になった。
郡司など気にせず、かぐやはズカズカ自宅まで足を運ぶ。
「さっきの行動!絶対何か隠してるわ!少なくとも兄さんのことについては」
「花京院さんがか?何で。あの人、すごく人嫌いで自分からは人に話しかけないような人だぞ?少なくとも帝さんと接点があったとは思えないけどなぁ」
「それを明日直接聞くのよ!それ以外策なんてあるわけないでしょ!」
1回決めたら止まらない。
それがかぐやだと言うことを嫌というほど知っている郡司は明日の命運を憂い、深くため息をついた。
※
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これからも頑張らせていただきます!