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*8*
「新しいポッキーの味が出たんだよ、辛子角砂糖味。食う?」
「食べないわよ。ていうか……」
コポポ……とペットボトルに入っている麦茶を勝手に郡司に注がれながらかぐやはありえないものを見ているかのように顔を蒼くした。
「何で私の家“ここ”にいるのよ!?」
ドン!!とかぐやはテーブルを思い切りたたく。
「おおっと」と零れそうになる麦茶を守りながら郡司はポッキーを口に入れる。
そう。ここはかぐやの家であるアパートである。
かぐやは何とかして郡司を遠ざけようと家までのルートを錯乱させてみたがそれは無駄に終わり、今に至る。
「だってさ、せっかく再会“あえた”のにまた別れるなんてあんまりだろ。それに……お前がどうして表舞台からいなくなっちまったのか見当付いちゃったからな。見捨てるわけにはいかないよ」
麦茶を啜りながら郡司はどこかさみしげに外を見る。
普段は掴みどころがなくてどこか強かとすら思う郡司。だが今のその言葉に嘘偽りはないのだろう。
だからこそその言葉を聞くと胸が張り裂けそうになるのだ。
「……それより、みんな元気?聖もBランクになったって聞いたけど」
「ああ。元気だよ。8年前、お前がいなくなったって聞いてしばらくワンワン泣いてたけど今はちゃんと強くなってる」
「当たり前よ。基礎は私が叩き込んだんだから!そこらのBランクじゃあ勝てないに決まってるじゃない」
「戻って……やらないのか?」
――自分で話を逸らしたのに結果的にはつらくなる。
それを郡司はわかっていたのだろう。いとも簡単に話を革新的なところへと持っていかれる。
かぐやは改めて心理戦には向いていないと自覚した。
カタン、とペットボトルを置くとかぐやはグッと歯を食いしばった。
―――お兄ちゃん、死んじゃやだ………!!―――
「……今更戻って何になるのよ。また【あの日】みたいになるわ」
「俺さ、隊を組みたいんだよね」
「……?」
突然の話題の転換にかぐやは眉をひそめた。
そんな彼女を気にせず郡司はポッキーを頬張り続ける。
「俺Sランクだけどさ勇魚さんに特例で隊組むの許可してもらったんだよね。だからさ、アダプターで一撃必殺のお前に……」
―――ヴゥゥゥゥゥン!!
五月蠅く鳴り響くサイレンが町中に鳴り響く。
かぐやは我先にとイアンばかりにベランダのカーテンをシャッと開けると、そこには殲滅者が街を蹂躙していた。
「……今はそれどころの話じゃない様ね!」
ガララッと窓を開けると高くジャンプした。
すたっと隣の家の屋根に着地するとかぐやは部屋にいる郡司に叫ぶ。
「郡司!アンタは街の人を守って!私は殲滅者を駆除しに行くわ」
「……相変わらず、だな」
郡司は頭を掻いてつぶやいた。
あの時の頼もしくて気丈な少女は、まだ輝いている。
彼女に続く様に郡司も部屋から飛び降りた。