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*89*
「……おいしいですね」
「……そうね」
ロビーのソファにて、かぐやとくじらは売店のたこ焼きを食べていた。
無表情ながらもくじらの表情は嬉しそうであるが、破壊された壁の一件もあるのか、かぐやはどこか顔が引きつっていた。
(……わたしもかなりの古株だけどこの子はみたことないわね。……新入りにしてはSランクだなんてありえないけど……)
「私はこれを食べたらすぐに消えますね。勇魚司令官の目を盗んでここに来たんです」
「?え、勇魚さんから?」
「はい」
ムッシャムッシャ音を立てながらくじらはたこ焼きを完食した。
どこかかぐやを察したように呟くくじら。
その横顔はどこか憂いを帯びていた。
「でも、ひさしぶりに人と話せてよかったです。……これでもう何も思い残すことも……」
「え?何よ、最後聞こえなかったわ」
「ふぁふや〜(かぐや〜)」
間抜けな声がかぐやの背後から聞こえてくる。
そこにいたのは寝起きだと一発でわかる郡司だった。
かぐやは呆れながら彼に近寄る。
「何よもうその寝癖!アンタ土曜日だからって浮かれすぎよ、シャキッとしなさいシャキッと!ねぇ、くじら」
「……っ!」
そう言ってかぐやが振り向いた瞬間、そこに彼女はいなかった。
先ほど買ったたこ焼きのゴミもなくなっていた。
郡司は1瞬目を見開いた。
そしてかぐやにゆっくりと語りかける。
「今……くじらって……」
「そうよ。神代くじら……って言ってたわ。Sランクですって。中学生みたいだったけど」
「……そう、か」
「いくら寝起きだからって曖昧な返事はやめなさいよね」
怪訝な目でかぐやは郡司を見つめる。
だが、そんな彼の顔を見た瞬間、ギョッとした顔になった。
なぜなら、彼の顔は真っ青だったからだ。
「ちょ、アンタ顔真っ青よ!?具合でも悪いの?」
「……なんでもない……」
(くじら。何で俺から姿を消したんだ……?)
――――ブー!ブー!
そこに、殲滅者が出没したというブザーが鳴った。
『南部に殲滅者出現!隊員はすぐ対応するように!出現数50!』
「ご、50ですって!?」
「いくらなんでも多いな」
「でも……行くしかないでしょ!」
そう言って2人は廊下を走り出した。
※
「昔、あれほど破壊したはずですがまだいたのですね」
破壊された瓦礫の突起物に立ちながらくじらは50もある殲滅者をボーっと見つめる。
そしてスッと手を突き出した。
ブワッと周囲に風圧が起こる。
「――――数だけでは私を殺せませんよ、クローディア。私がいる限り、世界は終わらせない」