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*94*
「神光国家……!?まだいたの!?」
「そりゃあいますよぉ、アトラスはただの偵察程度にここに来てもらっただけぇ〜」
「テット、無駄話が過ぎるよ」
かぐやの言葉に舐め腐ったテットの返事が返ってきた。
そんなテットにニコニコと、だが嫌悪感を隠さないイリヤは吐き捨てるように言い放つ。
「うっせーなっ。わかってるわよぉ、【クローディア様】のためなんですもの。ドラゴンは確実に奪っていきますっ!!精々足を引っ張らないでよね〜イリヤ」
「それはこっちのセリフだよ、大した攻撃もできないくせに」
「――――来ます」
かぐやはくじらたちにどういうわけなのか説明を求めようとした。
だが、それよりも先にテットとイリヤが飛び掛かってきた。
そのため、仕方なくかぐやは斧、郡司は如月を取り出した。
「リザルテ!!」
「効かないでっすよ〜。こんな攻撃ぃ」
――――ドドッドドドド!
と、複数のリザルテを飛ばす。
だが、テットは手のひらから黒い円盤のようなものを取り出す。
そこにリザルテは吸い込まれてしまい―――。
「郡司、後に飛んできます」
「うおっと」
ドドドドド!
と、郡司の後ろからリザルテが現れ、彼に向かって発射させた。
おかしい。確実に自分のリザルテはテットに飛ばしたはずなのに。
「おかしい、って思ってますね〜。姫君。おかしくて正解ですよ。さっきの攻撃はあたしのソウルブレイブの能力ですぅ。相手の攻撃を異次元に閉じ込めて、違う場所へ発射する――1つのわ・ざ♪」
「……やってくれたわね!」
なら。物理的の斧の攻撃なら。
これなら吸い込まれる心配も、また味方も攻撃することもないだろう。
「待て、かぐや!」
郡司の制止の声が聞こえる。
だが、止まるわけにはいかない。
テットはわざとらしく甲高い声を出した。
「キャッ!怖ーい!……イリヤ、何とかしなさいよー!」
「君のその声なんとかならないかな?気に障りすぎて君の声帯凍らせたくなるよ」
「はあっ!」
ブン!とかぐやは2人まとめて縦一閃に斬る。
だが、その瞬間。
ビキビキビキビキ……。
と、見覚えのある者と音が響いた。
「……氷!?」
イリヤが掴んだ斧。
普通だったら手が切れているか、大量出血は免れないはずなのに。
だが、イリヤは敢えてつかみ、自分の手と斧を凍らせていたのだ。
そのせいで彼の手から斧が引っこ抜けない。
「放しな……さいよっ。斧が凍っちゃったじゃない!」
「嫌だなぁ。それをやるために僕がいるんだから。君は面白いね」
「何ですって!」
じたばたと牽制を続けるかぐや。
だが一向に氷が解けることはなかった。
下から郡司とくじらは不思議そうに呟いていた。
「アトラス以外にも氷使いがいたのか……?」
「わかりません。もしかしたら……」
どこか冷や汗を掻いているようにも見えるくじら。
その問いに笑顔でイリヤは答える。
「その通りですよドラゴン。アトラスが死んだ後釜みたいなものですね。ああ、少し間違えました。アトラスは弱かったから【生】を手放しました。そして僕は彼の何倍も強いので――気を付けて下さいね」
そう微笑んだイリヤの表情は悪魔のようだった。