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*24*
〜赤根葵によるこれまでのお話〜
陰陽師・宵宮有為ちゃんとの約束で大正時代に行く予定だった花子隊。
しかし、寧々ちゃんと光くん(と夏彦先輩)が噂の無限階段につかまってしまう!?
花子くんは慌てて、二人を探しに行ったけれど、果たしてどうなるのか。
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〈花子side〉
俺は、高等部2階、理科室前のA階段の前へやってきた。
あの噂が本当なら、少年とヤシロはきっと今頃、無限階段にとらわれている。
早く助けないと!
よし、と決意を固めて、俺は階段に一歩足を踏みだした。
そのとたん。
バチィィィィィィィィィィィィィ!!!
花子「!?」
俺の体は階段からはじき出され、数メートル先の廊下に吹っ飛ばされた。
目には見えない壁みたいなものがあって、階段へ行くことが出来ないのだ。
結界、ってやつだろうか。
花子「まじか……。これじゃあどうすれば………」
??「あら、来たのね」
不意に、涼やかな声音が聞こえ、顔を上げる。
A階段の踊り場に、一人の少女が立っていた。
おかっぱ髪に赤いスカート。
………やっと、おでましか。俺は彼女を睨み返す。
花子「俺の助手たちを返してほしいんだ。勝手なことをされては困るんだけどね」
女の子「あら、同じ七不思議同士なのに、私と敵対したいの?」
………は?
七不思議同士だって? 俺と君が? なんで?
だって、お前はこの学園に迷い込んできた霊じゃないのか?
女の子「学園に隠された七不思議8番目を知ると、不幸が訪れる。そんなことも知らないの?」
花子「じゃあ、まさか君は」
女の子「ええ」
女の子は薄く微笑むと、胸の前に手を当てて堂々と言い張った。
ただ、その口調からは感情が感じられない。
女の子「七不思議が8番目、『無限階段』の八雲よ。よろしくね、七番」
花子「? 花子ではないのか」
女の子「あら、あなただって本名は花子ではないでしょう? まあそれはいいとして」
女の子—もとい八雲は、おかっぱ髪を揺らすとその場で一回転した。
無邪気な相貌が、猫のように細くなる。
八雲「なぜ、七不思議8番が公に知られてないのか、貴方は知ってる?」
花子「いや、全く」
八雲「あら、リーダーなのに」
ちょくちょく、八雲の悪意のないひとことがグサッと刺さる。
八雲「学校の怪談9つの決まり、第四条。『学校に同じ系統の怪異があってはならない』」
花子「つまり、ミサキ階段や俺がいるせいで、姿を現せなかったってこと?」
八雲「ご名答」
八雲は嬉しそうに手を叩いた。
会話でのやりとりでは、特に危険な感じはしない。
でも彼女は確かにヤシロたちを階段に閉じ込めた。
やっぱり、放送室メンバーが関与しているのだろうか。
花子「ん? じゃあなんでキミは、今ここにいるんだ」
八雲「愚問ね。そのまんまの意味で、私を縛る対象がいなくなったからよ」
花子「———まさか」
俺がゴクリと息を飲むのと同時に、八雲はニヤリと笑って、背中に隠していたものを見せる。
その掌の中には、擦傷をいくつも負い、ぐったり倒れている狐がいた。
花子「2番!!」
ヤコ「う゛………ッ」
花子「お前、なんてことを!!」
いや、この場合、事態を引き起こした放送室メンバーが悪いのか?
でも今はそんなことどうでもいい。
俺は白状代を八雲めがけて投げつけようとし………。
八雲は、ふらっと姿を消した。
その反動で、掌の2番が投げ出されて俺の横にボンッと落ちてくる。
花子「2番!! 大丈夫!? ど、どうしよう誰か人ッ」
ヤコ「う…ん」
今は2番をどこか安全な所へ!
誰か頼れる人……。
1番は……だめだ、あの赤髪の少年はもう帰宅しているだろうし、
3番は、うーん……。
4番はあからさまに俺を嫌っているし。
そうだ、土籠!
あ、今は職員会議中だっけ……。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!?
誰か、誰かいないの?
……………いる。
でも、彼らが協力してくれるだろうか。
いや、今は迷っていられない!
花子「2番! もうちょっと辛抱して!」
俺は2番を腕に抱えて、廊下をまっすぐに走る。
ヤシロ、少年、もうちょっと待ってて!
向かうは、高等部2階の放送室。
放送室メンバーの元へ、俺は向かった。