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ろくきせ恋愛手帖
作者: むう  (総ページ数: 113ページ)
関連タグ: 鬼滅 花子くん 2次創作 オリキャラあり 戦闘あり ろくきせシリーズ 
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 〈光side〉

 ずっと前に花子が言ったように、死んでしまった奴の運命を変えることはできない。
 でも、霊が見えたり、それに干渉する力が与えられたのは。
 そのどうにもならない部分をどうにかするためだって、オレは今でも思っている。

 でも……。
 今回の事件でオレを悩ませるのは、誰を責めたらいいか分からないことだ。
 三葉(みつば)の時は、明らかにアイツ(つかさ)が悪い。
 それは事実で、オレはアイツを一生許さねえ。

 でも今回の件は?
 亜門は刻羽に会いたいという純粋な思いのままに、アイツを呼び出し。
 アイツは「あもんの願いを叶えたい」という思いのままに睦彦の記憶を消し。
 そしてオレを含め、後の面々も、二人に協力したいという思いで作戦を呑んでいる。

 確かに、睦彦の『亜門の死に関する記憶』を奪ったって聞いたとき、本当なら今すぐにアイツに怒鳴り返したいところだった。
 何しやがったんだって、雷霆状を突きつけて、このまま消滅させてやっても良かったんだ。


 でも……。
 
 つかさ『ってわけでェ、みんなにキョーリョクしてほしいんだよねー!』
 一同『………は?』
 
 つかさ『サクラと夏彦とあまねと胡桃沢にはOKもらってるから、あとの人OKか教えて』
 光『……は、花子!? お、お前なんで……。いつもなら絶対こんなことしねーくせに……』


 花子は言った。
 刻羽と会うことで、瀬戸山が未練を晴らし成仏できるならいいんじゃないかって。
 刻羽の記憶が無くなっても、あとからまたつぎ足せばいいって。
 そんな願いすら叶えられないなら、あの子は永遠に天国へは行けやしないって。
 

 筋は通ってるし、花子が間違ったことを言っているわけじゃない。
 でもなんだろう、さっきから胸にしがみついているこの感情は。
 そしてそれはきっと、オレなんかより睦彦のほうが大きいはずだ。


 睦彦「………………」
 魔理沙「ごめんな睦彦。私も、霊夢たちも、皆協力した。でも、これでいいだろ?」
 無一郎「………そう、これが最善の方法」
 善逸「失望させたなら謝るよ。俺の頭ならいくらでも下げる!! でも分かってくれるだろ!?」

 
 睦彦は何も言わない。亜門も。
 ただ、俯いて肩を震わせるだけだった。
 睦彦だって、亜門に会えて嬉しくないわけではないだろう。

 でも、亜門が死んでいること、そして自分の記憶が操作されていたことのショックが大きくて。
 仁乃ちゃんやオレたちが協力したことも、喜んでないわけではない。
 オレたちの気持ちも、多分痛いほど分かっているんだろう。
 でも、それでも。


 
 「―――――――っざけんな!!」



 突如、このしいんとした空気を揺るがすような怒号が響き渡る。
 一同は驚いて、声を上げた者へと視線を移した。
 叫んだのは、睦彦ではない。亜門でもない。

 拳を震わせて、涙をこぼしながらつかさを睨んでいるのは、なんと宵宮だった。
 宵宮はつかつかと歩き出すと、つかさの胸倉をグッと掴んだ。

 つかさ「っ!? 宵宮……」
 有為「ふざけんな、お前は、なんてことを………っ!」

 有為「睦彦くんが、どういう気持ちで過去の話をボクにしたのか、貴方は想像できる!?」
 つかさ「よ、よいみや、苦し……」
 有為「人が死ぬってどういうことか、ちゃんと分かってるの!? 理解してるの??」


 その言葉を機に、つかさの態度が激変した。
 彼の周りを黒杖代が旋回し、風は渦を巻く。
 低い低い声で、つかさはポツリと呟く。


 つかさ「知ってるよ、………死ぬってどういうことか」
 有為「―――――-っ」
 つかさ「………分からないのは宵宮のほう。あもんは俺に願ったんだ。それでいいじゃん」
 

 良くねえよ。なにも良くねえよ!!
 誰が望んで、こんな結末を喜べるんだよ。
 そう怒鳴りたいのに、さっきの亜門の悲痛な叫びが、口に出しかけた言葉をまたしまい込ませた。


『もう死んだ奴が、運命なんて変えられるわけないだろ』

 そう言った亜門の表情は、何もかも諦めたように暗くて。
 それでも必死に笑おうとする様子がとっても痛々しくて。
 

 そんな顔しないでほしい。笑ってほしい。生きててほしい。
 そう誰よりも強く願ってるのは、その願いが一番強いのはオレじゃない。


 睦彦「………ホント、好き勝手してくれるよなぁ」
 カナヲ「睦彦?」

 呆れたように睦彦が言い、肩をすくめた。
 今の今まであんなにショックを受けていたはずなのに、どうして急に態度が変わったんだろう?
 もしかして睦彦は、もう全部、諦めてしまったってのか?

 花子「………刻羽。……ごめん。こんなことするつもりじゃ、……なかったんだ」
 睦彦「……そっか」
 花子「よ、4番に頼んで、絵空事の世界に連れ込んだりとか、か、考えたんだけど、ヤシロが反対したから……」
 睦彦「そっか」


 絵空事。七不思議が4番のシジマメイが作る、虚構の絵の世界。
 オレは前に柱やかまぼこ隊、東方陣たちと一緒に、2回目のエソラゴトの世界に行った。
 仁乃ちゃんが、鬼化したときだ。(詳しくはろくきせ最終章をcheck!)

 花子がエソラゴトの世界に睦彦を連れ込まなかったのは、きっと……。
 ちらりと、横に立っている先輩の表情を伺う。
 ま、そういうわけだよな。

 
 睦彦「……しっかし、そっちが俺抜きでコソコソやってたんなら話が早(はえ)ぇな」
 亜門「刻羽、何を――」


 亜門が戸惑いの表情を見せる。
 そんな彼に、睦彦は安心しろとニカッと愛嬌のある笑顔を見せた。
 そして袴の隠しから、『あるもの』を取り出し、またニカッとほほ笑む。

 
 睦彦「じゃ~~ん!」


 睦彦がオレたちに掲げて見せたもの、それは。
 一冊の本だった。
 黒い装丁の表紙。背表紙に『瀬戸山亜門』と書かれた、分厚い一冊の本だった。

 

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