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ミリオンズOFだぁぁぁぁぁ(←ちがう)
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〈光side〉
ずっと前に花子が言ったように、死んでしまった奴の運命を変えることはできない。
でも、霊が見えたり、それに干渉する力が与えられたのは。
そのどうにもならない部分をどうにかするためだって、オレは今でも思っている。
でも……。
今回の事件でオレを悩ませるのは、誰を責めたらいいか分からないことだ。
三葉(みつば)の時は、明らかにアイツ(つかさ)が悪い。
それは事実で、オレはアイツを一生許さねえ。
でも今回の件は?
亜門は刻羽に会いたいという純粋な思いのままに、アイツを呼び出し。
アイツは「あもんの願いを叶えたい」という思いのままに睦彦の記憶を消し。
そしてオレを含め、後の面々も、二人に協力したいという思いで作戦を呑んでいる。
確かに、睦彦の『亜門の死に関する記憶』を奪ったって聞いたとき、本当なら今すぐにアイツに怒鳴り返したいところだった。
何しやがったんだって、雷霆状を突きつけて、このまま消滅させてやっても良かったんだ。
でも……。
つかさ『ってわけでェ、みんなにキョーリョクしてほしいんだよねー!』
一同『………は?』
つかさ『サクラと夏彦とあまねと胡桃沢にはOKもらってるから、あとの人OKか教えて』
光『……は、花子!? お、お前なんで……。いつもなら絶対こんなことしねーくせに……』
花子は言った。
刻羽と会うことで、瀬戸山が未練を晴らし成仏できるならいいんじゃないかって。
刻羽の記憶が無くなっても、あとからまたつぎ足せばいいって。
そんな願いすら叶えられないなら、あの子は永遠に天国へは行けやしないって。
筋は通ってるし、花子が間違ったことを言っているわけじゃない。
でもなんだろう、さっきから胸にしがみついているこの感情は。
そしてそれはきっと、オレなんかより睦彦のほうが大きいはずだ。
睦彦「………………」
魔理沙「ごめんな睦彦。私も、霊夢たちも、皆協力した。でも、これでいいだろ?」
無一郎「………そう、これが最善の方法」
善逸「失望させたなら謝るよ。俺の頭ならいくらでも下げる!! でも分かってくれるだろ!?」
睦彦は何も言わない。亜門も。
ただ、俯いて肩を震わせるだけだった。
睦彦だって、亜門に会えて嬉しくないわけではないだろう。
でも、亜門が死んでいること、そして自分の記憶が操作されていたことのショックが大きくて。
仁乃ちゃんやオレたちが協力したことも、喜んでないわけではない。
オレたちの気持ちも、多分痛いほど分かっているんだろう。
でも、それでも。
「―――――――っざけんな!!」
突如、このしいんとした空気を揺るがすような怒号が響き渡る。
一同は驚いて、声を上げた者へと視線を移した。
叫んだのは、睦彦ではない。亜門でもない。
拳を震わせて、涙をこぼしながらつかさを睨んでいるのは、なんと宵宮だった。
宵宮はつかつかと歩き出すと、つかさの胸倉をグッと掴んだ。
つかさ「っ!? 宵宮……」
有為「ふざけんな、お前は、なんてことを………っ!」
有為「睦彦くんが、どういう気持ちで過去の話をボクにしたのか、貴方は想像できる!?」
つかさ「よ、よいみや、苦し……」
有為「人が死ぬってどういうことか、ちゃんと分かってるの!? 理解してるの??」
その言葉を機に、つかさの態度が激変した。
彼の周りを黒杖代が旋回し、風は渦を巻く。
低い低い声で、つかさはポツリと呟く。
つかさ「知ってるよ、………死ぬってどういうことか」
有為「―――――-っ」
つかさ「………分からないのは宵宮のほう。あもんは俺に願ったんだ。それでいいじゃん」
良くねえよ。なにも良くねえよ!!
誰が望んで、こんな結末を喜べるんだよ。
そう怒鳴りたいのに、さっきの亜門の悲痛な叫びが、口に出しかけた言葉をまたしまい込ませた。
『もう死んだ奴が、運命なんて変えられるわけないだろ』
そう言った亜門の表情は、何もかも諦めたように暗くて。
それでも必死に笑おうとする様子がとっても痛々しくて。
そんな顔しないでほしい。笑ってほしい。生きててほしい。
そう誰よりも強く願ってるのは、その願いが一番強いのはオレじゃない。
睦彦「………ホント、好き勝手してくれるよなぁ」
カナヲ「睦彦?」
呆れたように睦彦が言い、肩をすくめた。
今の今まであんなにショックを受けていたはずなのに、どうして急に態度が変わったんだろう?
もしかして睦彦は、もう全部、諦めてしまったってのか?
花子「………刻羽。……ごめん。こんなことするつもりじゃ、……なかったんだ」
睦彦「……そっか」
花子「よ、4番に頼んで、絵空事の世界に連れ込んだりとか、か、考えたんだけど、ヤシロが反対したから……」
睦彦「そっか」
絵空事。七不思議が4番のシジマメイが作る、虚構の絵の世界。
オレは前に柱やかまぼこ隊、東方陣たちと一緒に、2回目のエソラゴトの世界に行った。
仁乃ちゃんが、鬼化したときだ。(詳しくはろくきせ最終章をcheck!)
花子がエソラゴトの世界に睦彦を連れ込まなかったのは、きっと……。
ちらりと、横に立っている先輩の表情を伺う。
ま、そういうわけだよな。
睦彦「……しっかし、そっちが俺抜きでコソコソやってたんなら話が早(はえ)ぇな」
亜門「刻羽、何を――」
亜門が戸惑いの表情を見せる。
そんな彼に、睦彦は安心しろとニカッと愛嬌のある笑顔を見せた。
そして袴の隠しから、『あるもの』を取り出し、またニカッとほほ笑む。
睦彦「じゃ~~ん!」
睦彦がオレたちに掲げて見せたもの、それは。
一冊の本だった。
黒い装丁の表紙。背表紙に『瀬戸山亜門』と書かれた、分厚い一冊の本だった。