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ろくきせ恋愛手帖
作者: むう  (総ページ数: 113ページ)
関連タグ: 鬼滅 花子くん 2次創作 オリキャラあり 戦闘あり ろくきせシリーズ 
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*64*

 今日は、クラス各チームに分かれて創作ダンスを披露する、リズムダンス大会がありました!
 疲れたぁぁ……。今日は休んで明日勉強しよ。
 みなさん、一週間お疲れ様でした―。
 癒しのご提供でーす(癒し?)
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 〈亜門side〉

 刻羽が掲げて見せたもの、それは一冊の本だった。
 背表紙にはなぜか、僕の名前が書かれたり、それを除けば真っ黒な表紙。
 その本は、確か……。

 寧々「16時の書庫の本!? ど、どうして睦彦くんが持ってるのっ?」
 蜜璃「16時の書庫……って、なんだったかしら?」
 桜「あら、知らないんですか。では、ここらへんで行くわよ。せーのっ」


 ☆教えて 土籠 16時の書庫とは?☆

 16時の書庫っつーのは、かもめ学園が五番目、俺が管理する書庫のことだ。
 その名の通り、16時になると現れるその書庫には、学園にいる人物の記録が書かれた本がある。
 白い本は生きてる奴。黒い本が死んでる奴。
 過去も現在も未来も、学園でそいつが何をしたか、これからなにをするか。
 まァその本には全部乗ってるっつーわけだな。


 そうだ、これはあの、口が耳まで裂けてて、やたらとドSな蜘蛛野郎の本だ。
(『土籠先生だ』)
 それをなぜ刻羽が持ってんだ? しかもなんで僕の本を……。
 さてはあの野郎、刻羽にいらないことを吹き込みやがったな。この蜘蛛野郎め!
(『土籠先生だ』)


 ルーミア「なんだその本? 土籠の本だよなー?」
 パチュリー「ええ、そうね。彼の本をなぜ貴方が持っているの?」


 それは僕も聞きたい。
 どうやってその本を手に入れたのか、教えてほしいし、それに……。
 もしその本に、僕の恥ずかしい思い出とか乗ってたらっ!!

 その暁には今すぐ刻羽の手から本を奪い取り、可燃ごみに入れて捨ててやるっ!
(土籠『やめろ!!』)


 亜門「刻羽、なななな、なんでそれをッ」
 睦彦「つかさたちが裏で協力してたように、俺もある人と協力してたっつーこと」

 刻羽は実にあっけからんといい、ある人物を指で指し示す。
 向けた人差し指の先にいたのは、先ほどから眼鏡の奥の瞳を細めている、土籠。
 そして、腕を組みながら話し合いを見守っていた、七不思議が8番。


 つかさ「………ふーん。イガイだね。5番はあまねの言うコトなんでも聞きそうだけどな」
 土籠「………は?」
 輝「まあ、先生は七番のことが大好きですからね。僕も意外でしたけど(ニコッ)」

 つかさと源(兄)の言葉を聞き、蜘蛛野郎は一瞬凍った。
 ギョッとした顔つきで二人の顔を順番に眺め、

 土籠「だれが七番サマを好きだって?」
 花子「エッ違うの!?」
 土籠「お前はちょっと黙ってろ!」

 ふぅーっと蜘蛛野郎はキセルを吹き、チラッと横目で花子を見ると、もう一度溜め息をついた。
 

 土籠「確かに俺はコイツ(つかさ)に協力してるが、全てを許しちゃいない。そこの8番もだ」
 八雲「ええ。死を乗り越えていかなければ、何も変わらない」

 土籠「死に関する記憶を消す、ねェ……。コイツに協力している限り、反することはできない。そもそも俺は、瀬戸山の未来も刻羽の未来も知っている。口出しするだけ無駄だ。……だからあるヒントを与えるだけにした」

 ヒント?
 一同が首を傾げるのと同時に、刻羽が16時の書庫の本をペラペラとめくりながら言葉を紡ぐ。
 誰かに聞かせるためでもなく、自分のために言っているようだった。
 独り言、それと同じ感じだったけど、独り言とは違う言葉の一つ一つの重みがあった。


 睦彦「なんでこの本が黒いのか、なんで未来に関する記述がないのか、早く分かればよかった…」
 亜門「………そういうことか」


 僕はもう死んでいる。
 人が一度死んだら未来はもうない。
 どんなに足掻こうが、世界の仕組みにあらがろうが、結局灰になってハイサヨナラだ。
 過去に叶えられなかったことはもう叶えられない。
 それが死者に与えられた決まり。

 睦彦「記憶に干渉されてるせいかな。何度読んでも、内容が全く頭に入ってこなかった。さっき読んで理解したはずの内容も、全部忘れてしまう。おかげで俺は亜門に何があったのか、結局知ることは出来なかった。………知ってるハズなのに」


 でもさ。
 

 睦彦「でもさ。俺と亜門を会わせてくれたこと、すっげー嬉しかった!」



 そう言って刻羽は笑った。
 すげー明るい、おひさまみたいな笑顔だった。
 真夏のひまわりのような、そんな笑顔が彼にはよく似合う。


 なんでそんなに喜べるんだよ。
 だって、僕は、僕たちは、お前の記憶を奪ったあげく、お前の気持ちも聞かずに話を進めて。
 本当は、怒ってるんじゃないのかよ。
 なんでそんなに、なんでいつもお前は―――。


 亜門「な、なんで」
 睦彦「確かに、ちょっとショックもあるけど。それでも………」


 もったいつけるようにそこで一旦言葉を切り、刻羽はニヤニヤとこっちを見た。
 なんだよ、とこっちも口をとがらしてやると、そのニヤニヤはニタニタに変わって。


 睦彦「お前がそんなに俺のことが好きだったなんてな!」
 亜門「……………ち、違っ」
 睦彦「初対面で俺のこと殴ったくせに、結局そーいうことだろ。このツンデレ馬鹿が」

 誰だ、コイツに要らない知恵を入れやがったのは。
 思わず周囲を見渡し、僕はある人物を視界にとどめる。
 そいつは刻羽と同じくニタニタしながら、僕たち二人のやりとりを見物していた。

 やっぱりてめーか、花子!!
 刻羽をからかうだけでは飽き足らず、果ては僕や胡桃沢さんまでする気だな。
 

 亜門「う、う、うっせーな!! チビに言われたくねえよこの、チビチビチビチビ!!」
 睦彦「チッ……チビじゃねーよ、だいたい158のやつが157㎝をチビっていうのは違う!!」
 亜門「と、と、とにかくお前のことはっ!!」


『お前がそんなに俺のことが好きだったなんてな!』


 悪いかよ。文句でもあんのかよ。
 いいだろ、好きになったって。
 僕はお前に出会い頭に暴力を振るったし、本音は言わないし、感じ悪かった。
 でも、何でそんなことをしちゃったのかって考えたら、全ては一つの感情からだった。


 嫉妬。
 刻羽みたいになりたい。刻羽みたいに強くなりたい。
 なんで僕だけ、なんでお前だけ。
 そう言う感情に、自分が勝手に支配されてただけだ。

 
 睦彦「俺のことは?」
 亜門「お、……お前のことはっ………嫌いじゃない!!」
 睦彦「俺も、お前のことが好きだ」


 本当にずるいよな、お前って言う人間は。
 照れることなく素直に好きって言えるんだから。
 そっちだってあんなに僕のことを嫌ってたくせに。


 
 睦彦「運命なんて変えられるわけない、だっけ? じゃあ大丈夫だ!」
 亜門「何がだよ」
 睦彦「なにせ、俺らは【奇跡起こしの達人】だからな!」


 まず、胡桃沢やお前と出会ったのがはじまり。
 そのあとにかまぼこ隊に会って、花子達に会って、宵宮の家に行ったこと。
 一緒に鬼を倒して、東方キャラに会ったこと。
 一緒に笑い、恋し、泣き、ケンカし、また笑ったこと。


 睦彦「だから、大丈夫だ!」
 亜門「……………ありがと」


 なにが大丈夫だ。
 何を根拠に、そんなことが言えるんだ。
 でも、根拠のない言葉こそ、一番勇気を貰えるって分かっているから。
 
 四年前、最後に交わした『また明日』という言葉。
 刻羽がお見舞いに来る前に、ちょうど余命宣告をされた。
 そんな僕にかけてくれた、『また明日』という言葉がどれだけ嬉しかったか。

 だから僕は、にっこりと笑い返した。
 

 亜門「ぜってーに負けないからな! 色対抗リレー!」
 

 


 

 

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