完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*15*
れんこんチップスをテーブルに乗せ、四人で輪になって一個ずつつまんでいく
「そういえば先輩はどうして料理を始めたんですか?」
「え?独り暮らしをするなら普通じゃないかな?コンビニ弁当やカップ麺ばかりじゃ体に悪いし」
「...とは言っても最初はご飯を炊いたり味噌汁を作った程度で、おかずは買ってばかりだったさ」
「じゃあ、いつからハンバーグ等を作るように?」
「ジャックが来てからかな」
「おかあさん、いつもていねいにつくってくれるから」
「へぇ...本当に珍しいな、日本のDチームで手料理を英霊に与えてるのは男性だと君ぐらいだよ」
ああ、熱心になれるとはそういうことだったのか...
確かに手を抜いてる人も少なくはない、だが生きている人間と過ごす以上健康面には最大限気を使うべきなのだが...
「私は言うほど凄くないですよ、一度失敗してしまいましたから」
「失敗?」
「...私は一度、英霊に受け入れられなかったもので」
忘れもしないあの頃、私はある英霊の管理係となったが、私はあの人を満足させられるほどの人間ではなかった
無理もない、今のような生活をジャックがどう思っているのかは知るよしもないが、間違いなくあの人は嫌っていたのだから...
だからせめて、料理だけはちゃんとしたものを与えたいと、そういう一心で...
「ジャックを召喚したときは失敗したくないとずっと思っていた、でも」
「でも?」
「...ジャックと一緒にご飯を食べて仕事して寝て、またご飯を食べる生活が大好きになっていったんだ」
「ありがとう、おかあさん」
「何言ってるんだ、ありがとうを言うのは私の方じゃないか...」
「マシュ、君は中々見る目があったようだ」
「...そうですね」
「で?その英霊ってなんて名前なの?」
名前...そういえば、召喚した瞬間ぐらいだな、名前を言ったのは
「...確か、メイヴという名だったような」
「女王か!確かにここの生活は窮屈だろうなぁ」
「そうですね、私にはとても相応しくない人を呼んでしまったんです」
「だから次に会うときは...もう少し、少しでも彼女に追い付けるほどの人間になろうと思ってるんです」
窓から空を見ると綺麗な雪が降っていた、あの人の服も雪のように白くて綺麗だったな
女王メイヴ...貴方は私の挫折点であり、目標です
いつか私が貴方のそばに居ても恥ずかしくない存在になれるように、私はもっと頑張ります
『END』