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*42*
夜の7時半 ダ・ヴィンチが用意した野菜と肉を分けながら包丁を取り出す
「...今日は先輩は隣にいない」
立香が料理をする姿を彼女は何回も見てきた、慣れていたからこそ一人で料理することにどこか寂しさを感じていた
「ダ・ヴィンチちゃん」
「どうしたんだい?」
「藤丸先輩はどうして資金面に余裕がないのに魔力補給に料理という手段を使っているのでしょうか、血液採取やカルデアの電力変換等方法は沢山あるのに」
「一番一般的なのは料理だ、彼みたいな魔力を持たない人間がサーヴァントに供給するには食事をさせるしかない、まあ手を抜く輩が多いのも事実だが」
「では何故先輩はわざわざ手料理を?」
「...そうすれば喜ぶと心から思っているからさ、今時はいないぞそんな奴」
「そうなんですか」
「ほら、ぼーっとしてると怪我するぜ?」
「あ、すみません」
マシュは野菜を刻んでフライパンに入れ、人参ともやしじゃがいもを炒めていく、火の扱いも経験を得て段々慣れていった
「でしたら、何故他の先輩は料理を行わないのでしょうか?失礼ながら資金面や生活費が最低質なのは藤丸先輩で、他は食費に当てても足りる額を貰えているのに」
藤丸立香は一番給料が少ない、何故かというとマシュを除けば一番最後に雇われたからだ
長く滞在しているものは給料も多いが、わずか数ヵ月の立香程度では貧乏暮らしもやむを得ないほどしか与えられない。
だが最も異例の早さで令呪を与えられた彼の事だ、いつか彼自身が驚くような金額が飛んでくるだろう
その時立香は...どうするだろう?そんなことを考えながらマシュは肉を捌き、一枚ずつ焼いていく
「それにしても随分とあの男を気に入ったようだね」
「はい、いけませんか?」
「いいや?彼は他の奴と比べたら性格面ならまだマシだが、良い人間かと言われるとそうでもない」
「悪い人...?」
「悪人って訳ではない、ただ善人としてはどこかおかしい所がある...我々的に言えば『混沌・善』という奴だ」
「おかしい所とは?」
「ロマニの報告を見るに向上心はあるようだが、それが自分に向いてない、出世欲とかそういうのさ」
「言われてみれば確かに、彼は生活を楽にしたいとは言っていますが成り上がりたいという話は聞いたことも...」