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*55*
よくある町並みをヒーローが市民と共に歩きながらナレーションが始まる
【この町は私が住んでいる素敵なところだ、自然豊かで市民の笑顔も眩しい、こんな所で暮らせる私は幸福者だ、だからこそ皆のために平和を目指して活動しなくてはならない】
とその時だった、ヒーローの目の前で女の子が横断歩道を飛び出しトラックが駆け出す、テレビの内容にも関わらず立香は咄嗟に叫ぶ
「危ない!」
『今助けるぞ!』
その声に答えるようにヒーローは目に見えないほどのスピードで走り、トラックに轢かれる前に女の子を横断歩道から離した
『大丈夫かい?次は気を付けるんだよ』
優しく語りかけた後歩道へ女の子を送り、ヒーローはまた歩き去っていく
「...やっぱりこの人は凄いよ、私の憧れた正義のヒーローだよ」
...
その後もヒーローは超脚力で木の風船を取ったり、不思議な力で平地を公園に変えたり、持てる力で人々を助けてながら、第一話が終わろうとしていた
しかし、作中でヒーロー以外から『ありがとう』という感謝の言葉が出てくることはなかった...
そして次回予告が流れる
『次回も私はヒーローとして平和のために生き続ける!テレビの前の皆も困ってる人、危ない目に合いそうな人は助けにいこう!待っていても何も始まらないぞ!』
立香は涙を流しながらDVDの停止ボタンを押す
「いい話だなあああああああ」
「う、うん そうだね」
立香のあまりの熱狂ぶりにジャックも軽く引いていた、この男が何かにのめり込んだ姿を見たことあるだろうか?これにのめり込んだから今の立香があるのは分かっているのだが...
「おかあさんは これをみて 『正義』を知った...」
「ああ、こうやって見てみると初期は誰でも出来るような、でも何故かやれないような事をやって、怪人と戦ってたのは結構後なんだなぁ...ふふっ、誰かのために頑張れるあの人は素敵だなぁ」
「おかあさん お腹すいた」
「ああごめんごめん、すぐ買い物に行ってくるから」
立香が鞄を抱えて外へ行き、鍵をかけた後ジャックは再びDVDを再生し正義の味方の続きを見る
少なくとも今テレビでやっている作品よりは面白い気がしたからだ。