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*58*
朝、立香がいつものように目を覚ますが不思議と膝と肩の部分が押し付けられたかのように重みを感じる...何度も瞬きをして目を凝らすと、目の前に女性が...
「うおっ!?」
「おはようございます」
「え、ええと...誰ですか!?」
女性は立香の体から離れると丁寧に頭を下げ正座をしながら立香の方を見て話す
「申し遅れました、わたくしは清姫(キヨヒメ)あのますたぁ...××様に仕えるサーヴァントでございます」
「サーヴァント...清姫...ああ!昨日の!」
立香は昨日の告げた約束を思い出す、男は今頃彼女との暮らし方を考えている頃...サーヴァントが姫となると身分の違いによる扱い方に頭を悩ませるのも何となく分かる、女王のマスターであった立香は男に同情した、どんなに善人でも悩みたくもなるだろう
「マスターが今日武者修行を行うとのことで遠くに行ってしまいました」
「...ところで貴方、いつ私のアパートに入ったんですか?」
「深夜です」
「あの、寝る頃窓も扉も鍵を閉めていたんですけど」
「こじ開けてきました」
「こわっ!!」
立香は慌てて玄関の方を見ると鍵の部分が壊れて使い物にならなくなっていた、いくら古くボロい家とはいえ女の子がこじ開けられる耐久性と、壊れたにも関わらず深夜気づかなかった自身の呑気さに立香は冷や汗を流す
「うわぁ...後で直しておくか」
「おかあさん どうしたの」
「ジャック...あまり気にしないで、ほら朝御飯作るから...三人前皿用意しないと」
立香は玄関に重しを乗せて最低限のバリアを用意し、食器棚から皿を取り出す...その姿を清姫は何も言わず隅から見つめていた
...
朝食の後も...
「ジャック、図書館にいこうか」
「うん!」
「.....」
「あ、一緒にどうですか?」
「はい 」
...
「もしもし大家さん、鍵壊れちゃったので新しい奴に付け替えたいのですが...え?結構かかります?わかりました」
「.....」
....
「おかあさん、あれ食べたいな...」
「ん?牛丼か...いいね、夜作ってあげるよ」
「わーい!」
「.....」
....
「清姫さんってなんかおとなしい人なんですね」
「そうでもないですよ」
立香は気付いていない、これまでの行動を清姫がずっと覗いていたことに...鍵をこじ開けられても目を覚まさなかっただけはあるだろう