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【第十二話】
『我が愛しき紀行録』
「クーちゃん!遠出するわよ!」
ある日の事、立香の元を離れたサーヴァント女王メイヴはソファーに寝転がるクー・フーリンを引っ張り起こし、クーは嫌そうな顔をしながらメイヴを睨む
「俺を巻き込むな、てめぇ一人で行けよ」
「そういうわけにはいかないわ、あの男が令呪を手に入れた以上誤発で何が起こるか分からないもの、クーちゃんがいてくれないと怖くて動けないわ」
「ちっ」
クーは諦めて肩を鳴らし玄関を開け、メイヴがそれを追うように靴を履く
「で、何しに行くんだ」
「さっきも言ったけど藤丸立香は令呪を手に入れた、つまり給料は格段に上がっているはずよ、偵察する必要があるわ」
「...くだらねぇ」
...
メイヴとクーは電車を乗り継ぎ、立香達の住む町へとやってきた、田舎と都会の間のような平凡な所で店やコンビニがそれなりにある住み心地のいいところだ
「この町に来るのも随分久しぶりねー!」
「お前この間行っただろ」
「あの時は好きで行ったわけじゃないからいいのよ!」
クーの肩に張り付き手を掴みながら歩くメイヴは、人混みの中からジャックと手を繋いで歩く立香の姿を目撃する
「見つけたわ、追いかけるのよ!」
「なんで俺がこんなことを...」
...
立香が歩いていった先はレンタルショップ、ちょうど一週間が経ち『正義の味方』を返却し新しい巻を借りようとした所だ
メイヴとクーはその姿を背後から眺める
「妙ね...」
「DVDを見るくらい普通だろ」
「あいつの家、テレビもないし観たい作品も特に無さそうだったのに」
「お前はあいつを何だと思ってんだ」
「らっしゃい」
「ひっ!?」
メイヴ達の後ろには本屋にあるような埃取りを振る黒ひげの姿があった
「あ...あなたサーヴァントね、なんでこんなところに」
「バイトでござる、まだまだ欲しいフィギュアが多いんでち」
「もう、邪魔しないでよ」
メイヴが振り向くと既に立香の姿はなく、メイヴは鞭で黒ひげに八つ当たりする
「ぶひぃっ!こんなところでご褒美はまずいですぞ!」
「あなたのせいであいつ見失ったじゃない!」
「ん?立香殿を探していたのでござるか?あの人昔見ていたドラマを借りに来てたんであります」
「は?昔のドラマ?」
「おん、なんでも『正義の味方』というタイトルで...」