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*63*
「おい」
全七巻の『正義の味方』を手提げ鞄を右手にかけ、左手でクーを引っ張りメイヴは立香を追いかける
「何?」
「何も全部借りることはねぇだろ」
「マスターの趣味くらい把握しておいてもいいじゃない、彼のことだからやましい物では無いに決まってるし」
「そうかい」
...
「見てよジャック!珍しいよ!」
立香はジャックと歩いている最中公園を発見する、それも滑り台やブランコ、ジャングルジム等が付いている昔ながらのものだ
最近の公園は次々と遊具が撤去されていった物寂しいものばかりなので、立香の言うとおり珍しいものとなっていた
「いっぱいあるね」
「ああ、時間もあるし遊んでいくかい?」
「うん!」
立香は荷物をベンチに下ろし、ブランコに座るジャックの背中を押す
「ふふふ...懐かしいなぁ、私も小学生の頃はこうやってブランコに乗ってたなぁ...」
「いまはのらないの?おとなだから?」
「大人でもブランコに乗りたいときなんてあるよ、でもさ...危険らしいから」
「危険だから皆消すの?」
「...そうらしいね、消して、消して、都合の悪いものは消えて、そしていつの間にかなんでもかんでも無くなっていた」
立香の表情は段々寂しげなものになりながらもブランコを正確に押す
「おかあさん あの正義の味方っていうひとも 邪魔な人は消すのかな」
「それはないよ、あの人は何かを邪魔だと思ったことはない...むしろ、怪我をしないように積極的に助けるような人だ」
「おかあさんもそうなの?」
「私ももし出来るのであればそうなりたいよ」
「わたしたちもそうなりたいな」
「ああ、約束する...私は皆を守る、その為に私はここまで生きてきたんだから」
ジャックは揺れるブランコから飛び降りて立香の肩に乗り、公園から抜けていく
すれ違いになってメイヴがブランコに座り、足を使って一人で揺らす
「ねぇ、クーちゃん」
「なんだ」
「変わらないわねあの男...他人が救われることに一生懸命になれるのに、自分のことに関してはとことん諦めて後回しにして...令呪を手にいれる前ならよっぽど良いところもあったはずなのに」
「そうか、満足したか?」
「いいえ、まだまだ...彼、今はどんなもの食べているのかしら」