日本語文章ルール 「13:間違えやすい語句(6)」
間違えやすい語句(6)
変換ミスや覚え間違いの多い言葉をいくつかご紹介します(さらに続き)
意外とまちがって覚えている言葉ってまだまだあります
【蟻(あり)のはい出る隙(すき)もない】
蟻の入り込む隙もない⇒×
■なぜ「入る」はだめなのか理由が不明ですが、「蟻が(狭い所から広い所に)出てこれないように完璧な処置をする」意味のようです。
■閉じ込められてる蟻のイメージ。「完璧に包囲している(されている)」感じでしょうか。
【後へも先へも行けない】
後へも先へも引けない⇒×
■「後<あと>」に「引く」ものなので「後に引けない」だけなら正しいです。
■「先<さき>」には「引く」ものではないので、「後」と「先」をあわせて使う場合「行く」という言葉をつかうようです。
■絶体絶命のピンチだという意味です。
【怒り心頭に発する】
怒り心頭に達する⇒×
■「怒り」という気持ちは、「心」や「頭」から生みだされる「感情」です。
■かりに「怒り」が心や頭に「達する」なら、「え、その怒りは一体どこからやってきた??」ということになるので、「怒り」は「心」や「頭」から「生み出される『発する』」のが自然で適当ですね。
■怒りが頂点に達したという意味合いよりも、怒りがふつふつとわいてきた/生まれてきたイメージでとらえる方が、誤用をふせげるかもしれませんね。
【一蓮托生】
一連托生⇒×
■仏教用語(概念)です。「なぜ蓮<はす/レン>?」と思いますが「皆一つの蓮<はす>の上に生まれ変わる」という仏教における来世<らいせ>の世界観ですから、これはイメージした者勝ちですね。
■蓮<はす>は、泥水の中から美しい花をさかせるところから、仏教はじめ宗教上の象徴として特別な植物とされています。
■「一連<いちれん>」という語そのものは「ひとつにつながりあって」という意味で「托生」に無理なくつながってしまうので、この語については、なぜ違うのか誤用なのか?と考えすぎない方がいいでしょう。
【一心同体】
一身同体⇒×
■「一身」「同体」だと、「『みんなの身体』が『一つの身体』であるかのように」みたいなトランスフォーマー状態に。ちょっと違うかな…。
■「一心」「同体」なら「『一つの心』と『一つの身体』であるかのように⇒『一人の人間』であるかのように」となりますから、「(みんなの)意思疎通/統一ができている状態」をあらわします。こちらの方が意味として最適です。
■体は一つにはなれないけど、心は一つになれる。前向きなプラスイメージに使われることが多い言葉です。
■人間は体だけでできているにあらず…。心もあってはじめて「人」となる。意外に深い言葉ですね…。
【未だに】
今だに⇒×?
■「未<いまだに>」は「~ない」と結びの言葉とセットでおもにマイナスイメージで使われる言葉のようです。
■「未だに」という語を漢語由来で読み解くか、日本語(かな)の「いまだに」で読み解くかで議論が大きく分かれるようですが、
試験対策的には、ひとまず「今」という語には「未」のときのようにもれなく「not」イメージがついてくるわけではないので不適、というイメージで理解するといいかも。
■一般(口語)的には、どちらを書いてもほぼ同じ意味合いで広く理解・使用されていますので、考えすぎると迷い込みそうですね。言語学者さんにおまかせしましょう。
【嫌気が差す】
嫌気がする⇒×
■一般にはどちらも広く使われており、衝動的な印象(ウガ~ッ!!度)を高めたいときには時間的に短い「差す」を、じんわりとくる印象(あ~あ…度)のときには「する」などでつかいわけられているようです。
■「嫌気」は株式用語で「嫌気<いやけ>する」という語があるので、紛らわしいですね。
■「差す」という言葉が、今一つピンとこない人は多いと思います。「あんまり良くない気持ち」を現すときによく使われます。
■「負の(嫌)」「空気/気持ち(気)」が「入ってきた/流れ込んできた(差す)」という、ちょとした油断で体に穴(?)があいて、普段なら受け入れない負の感情が中に流れ込んできてしまった(から、あらがえなかったのさ…フフ)というイメージでしょうか。
■病気にかかるイメージと似ていますね。だから自嘲的な意味合いで使われることも多いですね。
【違和感】
異和感⇒×?
■「違和感」が「ある」「ない」という用法が多いです。「違和感を感じる」というのは重ねがけとなるので誤用のようです。
■「違」は「まちがっている/合わない」イメージ、「異」は「○○と△△の差/重ならない部分」というイメージもついてきます。
■あえて「異」を当て字のように当てて使う用法もときどき見かけます。
■「違和感」は「その場面にしっくりこない感じ」という意味なので、少しマイナスイメージを帯びた「違」という語が最適とするようです。
【有頂天(うちょうてん)】
有頂点⇒×
■「有頂天ホテル」という映画がヒットしたので、もう間違える人はいないかもしれませんが…。
■「有頂天」とは何階層もある天界のなかで「最も最上位に位置する天界」のことです。
■もうその上に天界はないということで「この上ない(喜び)!」という状況や気持ちを表す言葉ですね。有頂天とはどんなところなのか気になりますね。
【取り付く島(しま)もない】
取り付く暇もない⇒×
■大海原で遭難した、小舟に乗っている人たちを思い浮かべると理解しやすいかもしれません。
■島ひとつ見えてこない状況は「(頼るものがなく)冷たく見放された感じ」「まったく期待の持てない」まさに絶望的なイメージです。
■「隙」さえあれば取りつける状況、なのではなくて、取りつく「場所」がそもそも存在しない状況を意味しています。かなり悲愴な語ですね…。
【的(まと)を射る、当を得る】
的を得る⇒?
■誤用について諸説あるようなので「?」としました。
■この語の使われ方の歴史的な変遷をみていくと「的を得<え>る」⇒「的を射<い>る」※今ここです⇒「的を得<え>る」となりつつあるようです。
■とはいえ、誤用扱いがまだ優勢のようなので、試験等では「的」は「射る」もので理解しておきましょう。
■また昔の読み方にもどってくる言葉も珍しいですね。このように動くからこそ言葉はおもしろいのですね、きっと。
【私では力不足です】
私には役不足です⇒×
■不足しているのは「(自分のもっている)力」か「(自分に与えられた)役」か。そこを考えるとわかりやすいです。
■「力」と「役」、使い間違えると正反対の意味になってしまうので、使う場面によっては十分注意が必要です。
■「力不足」は「私の力は大したことがないので…」という意味、「役不足」は「私に与えられた役が大したことないので…」という意味になります。
■「役」不足という言葉は、自分について語るときはまず使いどころがありません。相手の実力をほめたりヨイショするときに使うようです。
- 次は、さらに語句の意味は転じていく?……「間違えやすい語句7」 をご覧ください。
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