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- ずっと、いっしょだよ。
- 日時: 2012/11/08 20:54
- 名前: るな (ID: xEKpdEI2)
はじめまして!
るな といいます。
文章表現も、人としても未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします。
さて、記念すべき一作目は『ずっと、いっしょだよ。』です。
どうか最後までお付き合いください。
まずは主な登場人物紹介から。
・美並瑠々(みなみ るる)
性別:男
年齢:14歳
性格:優しくて姉思い
設定:幼いころから入退院を繰り返している。璃々とは双子。
・美並璃々(みなみ りり)
性別:女
年齢:14歳
性格:明るくて弟思い
設定:弟・瑠々の病気が治ると信じている。瑠々とは双子。
ヒーロー・ヒロインの設定はこんな感じです。
詳しいことは小説から感じ取っていただけたらなと思います。
続いてあらすじを。
幼いころから心臓に病気を患っていた瑠々は、病院生活が多かった。そんな瑠々を支えていたのは、瑠々の双子の姉・璃々だった。璃々は瑠々の病気が治ると信じていた。だが、瑠々は知っていた。自分の命が長くはないことを——。
ざっとこんな感じです。
では、はじまりはじまりー!です!
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- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.30 )
- 日時: 2012/12/19 17:18
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
ⅩⅣ‐②
初めて生で聴いた父さんたちの演奏は、すごく迫力があった。だけどなぜだか所々しか覚えてない。
また璃々を泣かせてしまった。
僕には璃々を笑わせることはできないのかな?
そんなことを思ってたから、全然聴けなかった。
「どうだった、公演は」
父さんが楽屋で僕に訊いた。
「いつもあんな演奏してるんだね。改めてすごいなって思った」
当たり障りなく答えた。父さんには悪いけど。
「瑠々は将来何になりたいんだ?」
「え?」
「どういう仕事がしたい?お前もあと三年後には就職だぞ?」
ここに来てまで父さんは、僕の将来を信じてる。
きっと璃々ほどではないだろうけど、それでも信じてくれてる。
「僕は、やっぱり病気のこともあるから限られてくるけど、みんなに迷惑をかけないような仕事に就きたいな。一人で暮らしてもいいって思ってる。まあ、璃々を一人にできる勇気はないから無理だと思うけど」
「そうか。良かったよ、それが聞けて」
何が良かったのかよく分からなかったけど、父さんはそれ以上聞かなかった。
「瑠々、ちょっとトイレに行ってくる。ここにいなさい」
「うん」
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.31 )
- 日時: 2012/12/20 17:25
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
ⅩⅦ
「璃々ちゃん、演奏どうだった?」
楽屋でお母さんが着替えながら訊いてきた。
「お母さんはやっぱり歌が上手だね。璃々もあんな風に歌ってみたいな」
「璃々ちゃんなら歌えるわ。お母さんの娘だもの」
お母さんは知らないんだ。私の歌が絶望的に下手だってこと。封印してたから仕方ないけど。
それに比べて瑠々くんは、すごく歌が上手。
合唱コンクールの時とか、瑠々くんがいれば入賞確実って言われてたくらい。
お母さんの血は瑠々くんがほとんど持っていっちゃったな。お母さん、頭もいいし。
私、お父さんに似ちゃったんだな。
「璃々ちゃんは将来何になりたいの?もうそろそろ考えているでしょう?」
「璃々は、看護師さんになりたいの。誰にも言ったことなかったけど。お医者さんは璃々には無理だから、看護師さんになって瑠々くんみたいな、病気の人に元気をあげたいの」
いつの頃からかそう思うようになった。病気の人を助けたいって思ってたこともあったけど、それよりも元気をあげたいって思ったんだ。
「そう。璃々ちゃんにも夢があって安心したわ。璃々ちゃん、私、お手洗いに行って来るわね。ここにいてくれる?」
「分かった」
お母さんは楽屋を出ていった。
私は興味本意でお母さんの化粧道具を見た。私も何個かは持っているけど、お母さんの化粧道具はすごく沢山あった。
「わあ…こんなに何に使うんだろ…」
思わず口に出してしまった。お母さんは美人だ。素っぴんでも。
だからこんなに化粧品、いらないと思うんだけど。
その時、ドアがノックされた。お母さんならノックはしないはずだ。
「璃々、いる?」
瑠々くんだ。私はドアを開けた。
「どうしたの?」
「今から中学校行こう」
「え、何で急に?」
「一年早いけど、タイムカプセル取りにいこう」
瑠々くんは私の答えを待たずに、私の手を引いてった。
「瑠々くん、そんなに走ったら発作が…」
「大丈夫。璃々と一緒なら」
「お母さん達には?」
「手紙書いといた。何にも心配しなくていいよ」
瑠々くんはそう言って私を引っ張っていった。
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.32 )
- 日時: 2012/12/20 17:28
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
ⅩⅧ
父さんがトイレに行ってから僕は、持ってきてたペンと紙を出して手紙を書いた。
『父さんへ
璃々と少し出かけてきます。ごめんなさい。でもすぐに帰るから心配しないで 瑠々』
僕は父さんの楽屋を出て、隣の母さんの楽屋をノックした。
「璃々、いる?」
「どうしたの?」
案の定璃々が出てきてくれた。
「今から中学校行こう」
「え、何で急に?」
「一年早いけど、タイムカプセル取りにいこう」
僕は璃々が返事をする前に手を引いて連れ出した。
「瑠々くん、そんなに走ったら発作が…」
「大丈夫。璃々と一緒なら」
本当に大丈夫な気がした。今なら何をしても平気な気が。
「お母さん達には?」
「手紙書いといた。何にも心配しなくていいよ」
璃々と手を繋いで歩いたのは何年振りだろう。
考えてみると、あまりこうして遊んだりすることはなかったな。
いつしか、降っていた雨はやんでいた。会館から中学校までは片道30分位だ。
あのまま走ってたら本当に発作が起きそうだったから途中で歩いたけど。
「…瑠々くん。何で急にタイムカプセルなんか…」
そりゃ気になるよな。急にだもん。
「うん?待ちきれなかったんだよ」
……なわけがない。
僕は怖かったんだ。
タイムカプセルを開けないまま死んでしまうのが。
璃々の手紙を見ないまま死んでしまうのが。
「璃々、こんなこと付き合わせてごめんね。せっかくの誕生日なのに」
「ううん、璃々は瑠々くんと一緒にいられて嬉しいよ。せっかくの誕生日なんだから」
「璃々」
「うん?なあに?」
「いや、なんでもない」
璃々が 「もう!」 って言いながら笑ってる。暗くても分かった。
だけど僕は、もう少しでこの笑顔を見ることが出来なくなる。それはずっと前から覚悟していたことだ。
でも、璃々の笑顔を見られなくなるのは僕だけにしてほしい。
僕が死んで璃々が笑わなくなったら、父さんたちが璃々の笑顔を見られない。
璃々、僕が死んでもずっと笑ってて…。
「瑠々くん、確かこの木の下だったよね?」
「うん。あ、スコップとか持ってこなかった。手、汚れても大丈夫?」
「いいよ、いいよ。じゃあ掘ろっか」
璃々は大杉の下を手で掘り始めた。それに続いて僕も掘った。
「あった…!これだよね、瑠々くん」
「うん、そうだね」
意外にもすぐに掘り出せた。僕たちは急いで穴を埋めて、病院へ帰った。母校とはいえ、夜だし、一応不法侵入だし。
戻っている途中からまた雨が降ってきた。やむ気配はなさそうだ。
病院の正面玄関を見ると、心配そうに辺りを見回す両親の姿があった。
「なんか、行きづらいね」
「でも、行かない訳にはいかないよね。雨、降ってるし。クシュン」
璃々は風邪をひく一歩手前だし…。
意を決して僕たちは玄関前に行った。
「瑠々、璃々!良かった、心配したんだぞ?あんな手紙で心配しないと思ったか? 」
「二人とも、こんなずぶ濡れになって…。風邪をひいちゃうから中に入りましょう」
僕たちは素直に従った。父さんたちが僕らを本当に心配してたから。
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.33 )
- 日時: 2012/12/20 17:56
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
ⅩⅨ
「二人とも、どこに行ってたの?本当に心配したのよ?」
お母さんが私たちに聞いた。
「ごめん。でも、これは僕ら二人の秘密だから」
瑠々くんが答えてくれる。私に質問が来ないようにしてくれているのか、瑠々くんはお母さんたちと私の間に入っている。
「だけどね、瑠々くん。お母さんたちは心配なのよ。それに瑠々くんはこの間まで意識が無かったんだから、いつ倒れてしまうか分からない体なんだから…」
「母さん、父さん。僕らを心配してくれるのは本当にありがたい。
確かに父さんたちは、僕らを置いて外国を飛び回ってた。それは普通なら許されないことだ。
でも僕らは、そんな父さんたちが誇りだったんだよ。自分たちの親が世界で活躍しているのは、人と違って誇らしかった。
しかも誕生日やクリスマスとかには必ず帰ってきてくれる。
こんなにいい親なんて、今時あんまりいないよ?父さんたちが僕らの親で本当に良かった。
だけど…
僕らはもう19歳になったんだよ。普通ならもう自立してもいいくらいなんだ。
さっき父さんが僕に、将来のことを聞いてくれて嬉しかった。僕は、自分のことを信じることはできないけど…、璃々には僕にはない未来があるんだよ。
だから…さ。僕らのこと、あまり心配しなくても大丈夫だよ。僕らは父さんたちの力が無くてももう生きられるくらいに成長したはずなんだ。父さん、母さん。僕らのこと、見守ってて」
お母さんは泣いていた。瑠々くんの話を聞きながら。私だって泣きそうになった。
「…そうだな。もう二人は子供じゃないんだよな。分かっていたつもりでも、実は分かっていなかったってことなんだな。瑠々、ビックリしたよ。お前がこんなにはっきりと物を言うとは思わなかった。瑠々、璃々。ごめんな、何も分かってなくて。でも、これだけは忘れるな。いくつになってもお前たちは、父さんたちの子供だ」
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.34 )
- 日時: 2012/12/20 18:13
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
ⅡⅩ
父さんたちに、あんなことを言ってしまった。父さんたちは僕らのことを心配してくれているだけなのに。
「瑠々くん、ありがとう」
でも、璃々が喜んでくれるならそれでいい。笑ってくれるならそれで。
「ううん、全然大丈夫だよ」
「瑠々くんが言ってくれなかったら、璃々、お母さんたちを説得できなかったよ」
病室の僕のベッドに二人で座って話してる。小さな頃からこのスタイルだ。二人で座っている時もあったし、僕は横になって璃々だけ座ってたりもしてた。
あと少しで、こういうことは出来なくなるんだろうな…。
「ねえ、瑠々くん。タイムカプセル、開けてみる?」
「そうだね。折角持ってきたもんね」
璃々がタイムカプセルを僕たちの前に出した。
さっきは暗くてよく見えなかったけど、やっぱり当時に比べれば随分色褪せている。しかも土がたくさん付いてるし。
「じゃあ、開けるよ?」
その時だった。急に胸が痛みだして、息が苦しくなる。何回なっても慣れない発作だ。
「瑠々くん!?大丈夫?大丈夫じゃないよね…。待ってて、今深織ちゃん呼んでくるから!」
「璃々っ…、行かなくていい…。ここにいて…」
璃々と離れたくなかった。そばにいてほしかった。それに、誕生日に独りはキツいから。
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