コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ずっと、いっしょだよ。
- 日時: 2012/11/08 20:54
- 名前: るな (ID: xEKpdEI2)
はじめまして!
るな といいます。
文章表現も、人としても未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします。
さて、記念すべき一作目は『ずっと、いっしょだよ。』です。
どうか最後までお付き合いください。
まずは主な登場人物紹介から。
・美並瑠々(みなみ るる)
性別:男
年齢:14歳
性格:優しくて姉思い
設定:幼いころから入退院を繰り返している。璃々とは双子。
・美並璃々(みなみ りり)
性別:女
年齢:14歳
性格:明るくて弟思い
設定:弟・瑠々の病気が治ると信じている。瑠々とは双子。
ヒーロー・ヒロインの設定はこんな感じです。
詳しいことは小説から感じ取っていただけたらなと思います。
続いてあらすじを。
幼いころから心臓に病気を患っていた瑠々は、病院生活が多かった。そんな瑠々を支えていたのは、瑠々の双子の姉・璃々だった。璃々は瑠々の病気が治ると信じていた。だが、瑠々は知っていた。自分の命が長くはないことを——。
ざっとこんな感じです。
では、はじまりはじまりー!です!
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.10 )
- 日時: 2012/11/26 17:29
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
Ⅴ
放課後。
僕は璃々と別れて、ある場所に向かった。
実は朝、下駄箱から上靴を出そうとしたら小さな封筒が入っていた。中を見るとこんなことが書いてあった。
『美並瑠々へ。
退院おめでとう。お前の愛する美並璃々が一番喜んでいるのではないか?さて本題だが、今日の放課後、大杉のところで待っている。誰なのかは後に解る。』
大杉っていうのは、この学校のシンボルで中庭にある。待ち合わせ等によく使われる場所だ。
「やっと来たか、美並瑠々」
「ずっと…待っていたんですか?僕が退院するまで」
「ああ。あの手紙を下駄箱に入れてからずっと」
「そうですか。それで?用はなんです、長居先輩」
「やめてくれ。ボクは昔のように『伶』と呼ばれたほうがしっくりくる」
長居伶——。
僕の主治医の長居先生の娘さん。
そう、娘。
伶姉とは璃々と三人でよく遊んでいた。ただ今は、長居先生と別居中。
長居先生の奥さん、葉子さんとケンカしているらしい。
「瑠々、父から伝言を預かっている」
「え?でも話なら病院でも全然…」
長居先生と話なんて、入院中じゃなくてもしてる。伶姉に伝言なんてしなくてもいいはずなのに。
「父は転勤する。ボクと母も、付いていくことにした。瑠々が次に退院するまで待ってもらっていたんだ」
嘘だ…。
長居先生は僕だけじゃなくて、璃々や両親にも好くしてくれてた。小さい頃から大好きだった。
「そして瑠々はめでたく退院。父は安心して転勤先に行ける」
「そんな…。転勤先はどこですか?僕の担当医は誰になるんですか?僕の悩み事、誰に打ち明ければいいんですか!」
長居先生はたくさん相談に乗ってくれた。なのに…。
「父は、ボクらはアメリカに行く。瑠々の担当医は父から話すらしい。悩み事は…手紙に書いてくれ。大丈夫だ。瑠々は独りじゃないから。あさってには日本を発つ。明日は璃々と病院に寄ってから帰ってくれ」
そう言って伶姉は僕に背を向けて帰っていった。
「伶姉!ありがとう。また逢おうね」
伶姉は振り向かないで手だけを振った。
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.11 )
- 日時: 2012/11/26 17:31
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
Ⅵ‐①
「今までお世話になりました。先生、アメリカに行ってもお元気で」
瑠々くんが長居先生に礼儀正しく挨拶してる。
「先生、璃々たちのこと忘れないでね?また、戻って来てね?」
「ああ。また逢おう」
長居先生はいつも瑠々くんのことを気にかけてくれた。そして私のことも。こんなにいい先生はいなかった。
それに、伶姉ちゃんまでアメリカに行くってなったら…。寂しすぎる。
「二人はずっと、私の子供だよ。絶対に忘れないから。きっとまた戻ってくるから」
長居先生は、私たち二人を胸に寄せて言った。
「またな」
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.12 )
- 日時: 2012/11/26 17:33
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
Ⅵ‐②
「新しく美並さんの担当医となりました、橋名深織です。よろしくお願いします」
瑠々くんの次の先生は30歳前後の若い女医さんだった。深織先生は大学病院で何件もの心臓病患者に関わってきたらしい。
私たちはペコッと頭を下げた。結構人見知りする。
「私のことは呼びやすい名前で呼んでね。私も二人のこと、下の名前で呼ぶから」
彼女のことは“深織ちゃん”と呼ぶことになった。瑠々くんが病院に来るとき以外は会わないけど。
それに当の瑠々くんは律儀に“深織先生”と呼んでる。
「璃々ちゃん、タイムカプセル埋めようか」
「うん、いいよ。でも…なんで?」
「僕ら14歳だ。ちょうど6年後、僕が生きているか分からない。もし一緒に居られたなら、二十歳になったときに開けたいんだ」
私はふと視線を下に向けた。
瑠々くんは私と一緒にいるの。ずっと、ずっと一緒に。離れたくない。
私には瑠々くんしかいない。私のわがままかな…?
「…大丈夫。僕は璃々ちゃんを置いて死なないから。ね?」
瑠々くんは私の思いを汲み取ったかのように言った。
数日後、学校の中庭にある大杉の下にタイムカプセルを埋めた。まあ、小さな箱だけど。
中には二通の手紙。私から瑠々くんへ、瑠々くんから私への。
「二人一緒でいられますように…」
私はそっと呟いた。
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.13 )
- 日時: 2012/11/27 17:46
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
Ⅶ
あれから5年。
たまに発作はあったけど、平和に暮らしていた。奇跡的に璃々も入れた高校での生活も充実していた。
だけど、やっぱり僕はダメだった。
ごめん、璃々。僕は二十歳まで生きられないかもしれない。
「瑠々くんっ…」
意識が戻ってきた。でも、目は開けられないし、口も動かない。その上体は何かに固定されているみたいだ。
「深織ちゃん!瑠々くんは死なないよね?璃々を置いて死なないよね?」
璃々、ダメだよ。深織先生を困らせちゃ。
そう言ってあげたいけど、口は開かない。
「瑠々くん…起きてよ…。目を覚まして。璃々に『おかえり』って言ってよ…」
ふと記憶を辿ってみる。
僕の最後の記憶は、教室…で授業を受けていた。なんの前触れもなく発作が起きた。胸は痛んで、息は苦しくなる。
これといって大した原因は見当たらない。
「璃々ちゃん、瑠々くんはきっと声を聞いてるわ。話しかけていれば目を覚ましてくれるはずよ」
そうだよ、璃々。ちゃんと聞いてるよ。
その時いきなり、ジェットコースターに乗っているかのような感覚に陥った。体が熱い。熱い。熱い。
「瑠々くん…?瑠々くんっ…」
「璃々ちゃん、大丈夫よ。外で待ってて」
「先生!血圧上がってます。体温も…39.8度ですっ」
「瑠々くん、しっかり!璃々ちゃんを泣かせちゃダメでしょう」
深織先生、分かってるんです。璃々を泣かせちゃダメだって、分かってるんです。
でも、体が鉛のように重いんです。
ふっと意識が無くなった。
- Re: ずっと、いっしょだよ。 ( No.14 )
- 日時: 2012/12/01 16:11
- 名前: るな (ID: D//NP8nL)
Ⅶ‐②
「瑠々くん…!良かった…」
「璃々…?」
だんだん意識がはっきりしてきた。声も出る。でもまだ体は熱い。頭も痛い。
「一週間も起きてくれないから…。もう、逢えないと思った…」
ぎこちなく動く腕で顔を覆っている酸素マスクを外した。
「ちょ、瑠々くん…ダメだよ。マスクはしなきゃ…」
反対の腕で璃々の顔を僕の顔に近づける。
「好きだ…璃々のこと…。異性として。…璃々ちゃんを置いて、死なないよ。だから…泣かないで…」
まだ完全じゃない呼吸なのに、酸素マスク外したからすごい苦しい。
でも、璃々の顔を一気に僕の顔と重ねた。
踏み込んではいけないところに僕は、一歩入ってしまった。
「な、何してるのっ?ダメだよ、璃々たちは双子なんだよ?こんなこと、許されないんだよ」
「分かってる…。ダメだなんて、そんなこと…分かってるよ…。でも…もう、抑えられない…。ずっと前から…想ってた…」
僕の手を外しながら、璃々は僕に言った。
「璃々だって…。璃々だって、ずっと我慢してた。頑張って瑠々くんと同じ高校に入ったのだって、璃々の知らない瑠々くんに、瑠々くんがなるのが嫌だったから。血が繋がっているってだけで、この気持ちを抑えなきゃいけないなんて…。ずっと辛かった」
璃々が堪えきれなかった涙を袖で拭った。
璃々はとても可愛い、僕の姉弟。そして僕の、最初で最後の初恋の人。
「泣かないで…」
璃々の涙を、手じゃなく身体で受け止めることができるなら、どれだけいいだろう。
璃々を包み込んで守れたなら…。
「瑠々くん…、とりあえずマスクしよっか…」
呼吸が苦しかったことも忘れていた。マスクは璃々が丁寧に付けてくれた。
「璃々ちゃん…ありがとう…」
「瑠々くん、前から思ってたんだけど、さ。…璃々のこと“ちゃん”付けで呼ばなくてもいいよ。無理してるでしょ?さっき、呼び捨てで呼んでたし。璃々はもう大丈夫だよ。18歳なんだから、そんな子供じみた呼び方されても恥ずかしいしさ。もう、小さな子供じゃないから…」
僕が璃々を『璃々ちゃん』って呼ぶ理由。璃々が僕を『瑠々くん』って呼ぶからっていうのもある。
でも実はそれだけじゃない。
あれは、僕らがまだ小学校に入る前のこと。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
この掲示板は過去ログ化されています。