コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 君と進む未来なら【お知らせ】
- 日時: 2014/02/17 12:53
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)
はじめましての人ははじめまして、瑞咲と申します。
以前書いていた小説は結局続けることができなかったのですが、夏休みを利用してまた新しい小説を書こうと思います。
続かなかったらごめんなさい。でも精進しますので…!!
今回は乙ゲー風で書いていきたいと思います!
祈祷師の少年少女のお話です。
文才とか皆無ですがお楽しみください!
あとコメください!!
————<目次>—————
ストーリー >>1
登場人物 >>2
用語説明 >>3
プロローグ1 >>4
プロローグ2 >>5
【共通編】
第一話>>06 第九話>>18 第十七話>>30 第二十五話>>50
第二話>>07 第十話>>19 第十八話>>31 第二十六話>>57
第三話>>10 第十一話>>29 第十九話>>33 第二十七話>>60
第四話>>11 第十二話>>21 第二十話>>34 第二十八話>>63
第五話>>14 第十三話>>25 第二十一話>>38 第二十九話>>68
第六話>>15 第十四話>>27 第二十二話>>41 第三十話>>77
第七話>>16 第十五話>>28 第二十三話>>44 第三十一話>>80
第八話>>17 第十六話>>29 第二十四話>>47
【圭太編】
第一話>>85 第六話>>102 第十一話>>122
第二話>>89 第七話>>105 第十二話>>125
第三話>>90 第八話>>106 第十三話>>131
第四話>>95 第九話>>113
第五話>>96 第十話>>117
【旭編】
第一話>>142 第六話>>164 第十一話>>178
第二話>>145 第七話>>165 第十二話>>183
第三話>>147 第八話>>170 第十三話>>188
第四話>>152 第九話>>176 第十四話>>194
第五話>>155 第十話>>177
【凌輔編】
第一話>>198 第六話>>214
第二話>>199 第七話>>218
第三話>>205 第八話>>219
第四話>>206 第九話>>223
第五話>>207 第十話>>226
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- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.14 )
- 日時: 2013/07/29 17:57
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: KZLToguX)
【第五話】
家を出てから、私達は南に向かって歩いていた。
二ノ宮家は住宅街にあって、ここから二十分ほど歩けば駅に着くという。
「まずは駅周辺からだなー」
「そうだね。白金高校もあるもんね。…そういえば沙依さんって、夏休み中は白金高の課外に出るんだよね」
旭の言葉に頷く。
「そうだよ。クラスは一組みたい。四人とも白金高だっけ」
「うん、クラスはバラバラだけどね。一組なら旭と同じだな」
智晴が言い、圭太が旭の肩を叩いた。
「アサがサヨをエスコートするってさ。な、アサ!」
「うぇ!?う…うん」
微かに頷くのが見えた。
「そっか。じゃあよろしくね」
「よ…よろしく、沙依さん」
…う〜ん、何か気に食わない。
私は旭の顔を覗き込むようにして言った。
「ねぇ、その『さん』付けはやめてもらいたいんだけど」
すると、旭はおどおどし始めた。
「えぇっ!?で、でも…」
すると、今まで黙っていた凌輔が口を開いた。
「これから嫌でも共に悪霊を払うことになるだろ。『さん』じゃよそよそしくてこっちがうざったく思う」
智晴も笑いながら言う。
「だな。せめて『ちゃん』にすればいいだろ。…ってか凌輔、それってお前が名前呼び捨てしたいからだろ…ぎゃっ!」
「うーるーせーえー!!」
凌輔が智晴に跳び蹴りをかましているのをよそに、旭は私に向き直った。
「じゃあ…沙依ちゃんで」
「よし、おっけー」
そう返事をすると、旭は照れ臭そうに笑った。
それからお互いの話をしながら、私達は歩き続けた。
「サヨっていつから力が使えるようになったんだ?」
「えーっと、確か小一の時だったかな。皆は?」
「だいたい皆小三くらいからだな。で、 一緒に払うようになったのは小四の時からだったっけ」
「なあなあ、沙依の高校の制服ってセーラー?」
「そうだよ…っていきなり何その質問!?」
「だってさ!よかったな凌輔」
「ちちち違ぇよ!セーラー派じゃねえよおれ!!」
「ずっと気になっていたんだけど、凌輔って身長何センチ?」
「一六二センチだよ。ちなみに僕らは一七十代」
「出鱈目言うな、一八〇だ!!てか変な質問すんな!!」
「一八〇って言い訳するには無理があると思うよ?」
「ほんとだから!!」
「この中で一番頭がいいのは誰?」
「そりゃオレ——」
「いーや、智晴だな。何だかんだ言って圭太が一番悪いだろーが」
「んなことねえよ!」
歩いているうちに、いつの間にか駅の近くまで来ていたようだ。
「いつの間にか人が増えてる!あ、時計塔もあるんだ」
「駅周辺が一番栄えているからな〜、白金町は」
その時、数十メートル先にあった時計塔が、十二時を示す鐘の音を鳴らした。
「ほら、昼飯」
ふいに凌輔が、私の鼻先に紙袋を突き出してきた。
「わっ!いつの間に買ってきたの!?しかも全員分!?」
「へっ、おれは俊足だからな」
得意げに胸を反らす凌輔を見ていたら、何だか可愛く思えてきて、気が付いたら頭を撫でていた。
「こ…こら!何してんだよ!子供扱いすんな!」
「あ、ごめんごめん。私、可愛いもの見るとつい頭を撫でちゃう体質なんだ」
「可愛い言うな!」
不満げに口を尖らせながら、凌輔が残りの紙袋を三人に渡す。
「これ、俺らが通い詰めてるパン屋の商品なんだ。あ、代金はいらないからな」
「え、いいの!?」
そういうことにはつい遠慮がちになってしまう私に、圭太がぽんと肩を叩いた。
「当ったり前だろ!今日ぐらい奢らせてくれよ!」
「ありがとう」
圭太の仕草や言動には、安心感が含まれているようだ。
昼食を済ませた私達は、今度は駅のバス停に向かっていた。
「これから無料バスに乗って、少し田舎の方に行ってみよう」
「無料バスなんてあるんだ!」
「まぁ、白金町も東京とかと比べりゃあ田舎だしな」
駅に着くと、ちょうど無料バスが到着するのが見えた。
急いで乗り込み、バスに揺られることおよそ十五分。
「わぁ…ザ・田舎って感じ!」
窓越しの風景は、駅周辺とは打って変わって、田園が広がっていた。
「白金の約六割はこんな感じだよ」
隣に座る旭が説明してくれた。
それからおよそ十分後、私達はバスから降りた。
四人に導かれ、少し歩く。するとすぐに、静かに佇む湖が視界に広がった。
「わぁ、おっきい!」
「これは白夜湖。結構有名な観光スポットなんだ。それとあともう一つ、オレ達に関係することがあるんだ」
「関係すること——」
尋ねようとしたところで、私の言葉は途切れた。
「ん?どうしたんだ、サヨ?」
「何かあった?」
どうやら四人は気付いていないようだ。だけど今、確かに感じた——!
「——近くに、悪霊がいる…!」
- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.15 )
- 日時: 2013/07/30 18:12
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: KZLToguX)
【第六話】
四人が目を見開いた。
「マジかよ!?」
「ぼ、僕はまだ感じないけど…」
「私の一族はもともと霊感が強いみたいだから。…取り敢えず、早く見つけないと」
私は気配がする方へ走り出した。四人も後に続く。
移動しながら、圭太が言った。
「オレさっき、湖のことについて言いかけただろ。あの続きなんだけど…ここ、悪霊が出やすいんだ」
「そうなんだ…。道理で霊力が強いと思った」
進んでいくうちに、気配はどんどん強くなっていく。
「おれももう感じるぜ」
「ああ。おそらくすぐそこに…」
智晴が言い終わらないうちに、その姿が見えた。
湖の上に漂う、黒い塊。
悪霊は、だいたいこんな姿をしている。
「…なんだ。結構雑魚じゃん」
「沙依ちゃん、そんなことまで分かるの!?」
「まあね。…ところで四人とも、武器は?」
私が訊くと、凌輔以外の三人がギクッと効果音がつきそうな表情になった。
「あぁ、え〜っと、その…凌輔君は用意できるんだけど…その…」
旭の言葉を遮って、圭太がバタバタと両手を動かした。
「ごっごめん!今はサヨとリョウで払ってくれ!後で説明するから!」
「わ、分かった」
私は小首を傾げたが、四人とも財布くらいしか持っていないため、武器があるわけないよな…とは思っていた。
だけど、何で凌輔は用意出来るのだろうか。確か凌輔の武器は槍のはずだけど…。
そう考えながら凌輔を見ていたその時、
「しゃーねえなぁ。まあ、任せとけ…よっ!」
凌輔が右腕を横に薙ぎ払った。
次の瞬間、凌輔の右手に一本の槍——緑色の布が巻かれた柄に、十文字の刃が輝く長い槍が現れた。
「えええええ!?」
ど、どういうこと!?マジック!?
呆然としている私に、凌輔が得意そうに言った。
「これがおれの特殊能力である空間転移さ」
その言葉で思い出した。
攻撃系祈祷師は、私のように「術」を使い祈祷する者と、「武器」を用いて祈祷する者に分けられる。
そして武器使いは、何らかの能力…特殊能力を持っているのだ。稀に持っていない祈祷師もいるらしいけど。
便利な能力だなぁ…と思っていたが、凌輔の声で我に帰った。
「湖の上か…槍じゃ攻撃しづらいな」
私は急いで竹刀入れから指揮棒を取り出した。
「逆に私にとってはラッキーだけどね」
指揮棒を珍しそうに見ている凌輔に言った。
「じゃ、率先して攻撃するから!」
「ぬ、抜け駆けすんなよ!」
軽く頷いて、私は指揮棒の先端を湖に向けた。
「水よ、我が命に従え!」
短く唱え、今度は指揮棒を悪霊に向ける。
「斬撃!」
すると、帯状の刃となった湖の水が、悪霊に向かって跳ね上がった。しかし、悠々とかわされる。
私は続けて水刃を放つ。
連続攻撃は得意技だ。悪霊の身体に次々と命中した。
攻撃しているうちに、悪霊は陸の上に移動していた。
私は凌輔を振り向いて言った。
「これで攻撃できるでしょ!」
「へえ…お前、やるじゃん!」
凌輔はニヤリと笑い、槍を構えた。
「たあああっ!」
銀色に光る刃が悪霊を射抜く。
すでに弱まっていた悪霊は、その一撃で消滅した。
- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.16 )
- 日時: 2013/07/31 12:27
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: KZLToguX)
【第七話】
「うおおぉ!サヨすげえ!」
一歩後ろで様子を見ていた三人が駆け寄ってきた。
「あれが術使いの技なんだ…!」
「改めて見るとすげえよな〜」
褒められることに慣れていないため、私は少しオロオロしてしまった。
「りょ、凌輔も凄かったよ!槍使ってるところもそうだし、特殊能力も!」
凌輔は例の如く、顔をみるみる真っ赤に染めた。
「なっ…せ、世辞とか聞きたくねえよ!」
そんな凌輔に智晴がやんわりと言う。
「取り敢えず凌輔、槍を戻そうぜ」
「おっと、そうだったな」
その直後、槍は瞬時に姿を消した。
「ほえぇ〜」
やはり驚いてしまう私に、智晴が説明してくれた。
「凌輔の特殊能力——空間転移は、遠くにある物を自分のもとにテレポートすることが出来るんだ。いつもは俺達の武器も一緒に召喚してもらうんだけど…」
凌輔が続けて言う。
「それがどこにあるか分からないと転移できないんだ。で、智晴達は昨日、武器を手入れ屋に出したから、武器がある場所が分からなかった、ってこと」
「へえ…なるほどね」
私は納得して頷いた。
「ねぇ、凌輔以外はどんな特殊能力を持っているの?」
まず旭が答えた。
「僕は視力向上の能力だよ。弓矢は銃と並んでこの能力が活かせるんだ」
「そういったことを考えて武器を選んでいるんだ。頭良いよねぇ…」
「俺は結界を張る能力。防音効果があるから、結界を張ることで銃声を消しているんだ」
「結界!?それはまた凄いね!」
「だろ〜?あ、これ凌輔の真似ね」
「おれそんなことしねえし!」
また智晴は凌輔に叩かれていた。
「皆凄いね。圭太は?」
すると、圭太から意外な言葉が返ってきた。
「オレ、持ってないんだ」
「——えっ?」
圭太はいつものように笑いながら続けた。
「オレの先祖や親父は持ってんだけどさ、何でかオレだけ持たないで生まれてきたんだ」
——その笑顔に一瞬陰りが見えたのは気のせいだろうか。
智晴が横から口出しした。
「でも、圭太は俺達の中では一番運動神経がいいよな」
圭太が笑って返す。
「ははっ、武器が刀ってこともあるしな」
それを見て、智晴たちはほっとしたような表情になった。
やっぱり三人とも、他の祈祷師とは違う圭太のことを気にしているんだ——。
圭太が明るく言った。
「よーし、悪霊も払ったことだし、町案内を続けんぞー!」
「そうだね、再開だね」
「おれ帰りたいんだけどブッ!?」
「ったく、一番楽しんでるのはどいつだよ〜?」
私は笑いながら、四人について行った。
「ただいまぁ〜」
午後五時頃、私は二ノ宮家に帰宅した。
「おかえり〜。どうだった?白金町は」
「田舎っぽいところがよかった!」
「そ、それ褒めてるの?」
「褒めてるよぉ〜」
私達は笑い合った。
「そうだ、サヨちゃん」
遥姉さんが思い出したように言った。
「なになに?」
「月曜から学校よね。だから明日、先生方に挨拶しに行こう」
「あ、そうだったね」
私が課外に参加する白金高校は、駅の近くにあった。校舎は私が通っているところより小さかった気がする。
「確か白金高って、男子が圧倒的に多いんだよね?」
「そうよ。元男子高だからね。一組には女子が一人いるって聞いたけど」
「え、一人!?」
それには驚いた。
「まあ、サヨちゃんならすぐに馴れるって!」
「そうかなぁ〜?」
首を傾げながらも、七日ほど通うことになる高校に思いを馳せるのだった。
- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.17 )
- 日時: 2013/11/30 17:19
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第八話】
月曜日の朝。
「あと少し…あと少し…」
そんなことを呟きながら、布団に顔を埋めていた時だった。
「おーい」
すぐ近くで声が聞こえた。
「——ぅん…?遥姉さん…?」
でも、遥姉さんにしては声が低すぎではないか…?とうつらうつら考え始めたが、
「ははっ、寝ぼけてんだな。圭太だぞ〜」
「あぁそう……ってえええええええええ!!??」
私は完全に目が覚め、がばっと跳び起きた。
するとすぐ横に圭太が立っているのが見えた。
「おはよー、サヨ!」
「けっけけけけけけ圭太ぁ!?」
自分でも顔が真っ赤になっていることが分かった。
だって寝顔見られたし、髪ボサボサだし、パジャマ姿だし!
「なっ何で圭太がいるのおおおぉぉぉ!?」
ここは居候させてもらっている二ノ宮家の二階にある空き部屋のはずだ。
そして私は居候中、この部屋を自室として使うことができるのだ。
「昨日、オレん家が一番ジュンさん家と近いから、
サヨを学校まで連れていくって約束しただろ?」
「時間が早いよ!だってまだ六時七分だよ!?」
「え?あー、ごめん!オレいつも五時起きだから早まっちまった!」
「早まりすぎだよ!?約束の時間は七時半だったよね!?」
「悪ぃ悪ぃ!まあ、早くサヨに会いたかったってこともあるんだけどなー」
「うぇっ!!」
圭太のその言葉に、私はドキッとした。
「…ん?どーした?」
しかし、圭太はいつも通りの様子だ。
もしかしたら、圭太は異性についてあまり意識しないタイプなのかな?
「…で、でも、来てくれてありがと」
とりあえず気を取り直した。
「おう!じゃあ、準備し終わるまで待ってるからな」
そう言い残し、圭太は部屋を後にした。
改めて気付いたが、圭太はワイシャツに赤いネクタイ、紺色のズボンという制服姿だった。
…学校に行くのだから当たり前か。
私も制服に着替える。ちなみに白金高の女子制服は、私の高校と同じくセーラー服だそうだ。
髪は洗面所で整えよう。私は黒のハイソックスを履き、部屋から出た。
それから急いで髪を縛り、朝食を食べて、玄関を出た。
「おまたせー」
「はいよー。じゃ、行こっか」
そこで待っていた圭太は、通学用のショルダーバッグの他に、竹刀ケースを持っていた。
「もしかしてそれ、武器?」
圭太が頷く。
「ああ。サヨに見習って、オレも持ち歩いていようかなーって」
「私もその方がいいと思うよ」
二人で歩き出す。
二ノ宮家から歩いて五分のところに住んでいる圭太は、いつも徒歩で通学しているらしい。
「他の三人はどこら辺に住んでるの?」
「アサは学校のそば、リョウとトモはオレん家より北の方だよ。
今度案内しないとなー」
「ありがとう」
会話を絶やすことなく歩いていたその時——
「…!」
悪霊の気配がした。それも強めの。
「これは…」
圭太も気付いたらしい。
「行こう、近くにいるぞ」
「うん!」
私達は走り出した。
圭太が携帯から電話をかける。
「トモ、今サヨといるんだけど、強い気配を感じたんだ。…ああ、通学路で。
…うん、アサは学校と逆方向だからリョウに伝えといてくれ。じゃ」
電話を切ると同時に、人型の悪霊を見つけた。
運のいいことに、周りに一般人はいない。
それぞれ竹刀ケースから武器を取り出す。
圭太は赤茶色の鞘から刀を抜き、身構えた。
「オレが先に切りかかる。サヨは隙を見て攻撃してくれ。
…行くぞ!」
「うん!」
圭太が悪霊に飛びかかった。
「はぁっ!」
閃光のような速さに回避できず、悪霊から血のごとく黒い靄が飛び散る。
反撃しようと襲い掛かる悪霊に、私は指揮棒を向けた。
「風よ、我が命に従え!——斬撃っ!」
風の刃が唸りをあげる。
よろめく悪霊にすかさず圭太が食らいつく。
「大人しく——しろよっ!」
そして、連続で切りかかった。
刀を使っている様子なんてドラマでしか見ないけどわかる。
——速い。そして、瞬発力や跳躍力なども優れている。
圭太は運動神経がいい。一昨日聞いたその言葉に、十分納得できる。
感心している間に、悪霊はだいぶ弱っていた。
私は足元に生える雑草に指揮棒を向ける。
「草花よ、我が命に従え!——捕縛!」
一斉に伸びた雑草が、悪霊を捕らえた。
「うりゃああああ!」
銀色の刃が悪霊を突き刺す。
しばらく悶えた後、悪霊は消滅した。
「ふ〜、朝から汗かかせやがって…」
圭太は刀を鞘に収め、流れる汗を拭った。
私も竹刀ケースに指揮棒をしまいながら、ある疑問を抱えていた。
なぜ、朝昼に弱い悪霊が、今も一昨日もその時間に現れたのだろうか?
- Re: 夕闇茜空【共通ルート】 ( No.18 )
- 日時: 2013/11/30 17:23
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: qZbNjnvV)
【第九話】
「圭太!沙依!」
声がした方を振り向くと、智晴と凌輔が走ってくるのが見えた。
「はぁ、はぁ…悪霊は?」
「今払ったところだ」
「そっか…遅れて悪いな」
私は思い切って、考えていたことを言ってみた。
「ねえ、疑問に思ったんだけどさ…」
「ん?どうした?」
「悪霊って、朝昼はほとんど出てこないのに、なんで一昨日も今日も…」
すると三人とも、はっとした表情になった。
「確かに…こんなこと滅多にないよな…?」
うーむ、と圭太が考え込む。
「…俺の予想なんだけどさ」
智晴が口を開いた。
「強力な悪霊が現れる余興かもしれないと思うんだ」
「余興?」
凌輔が首をかしげる。
「ああ。つまり、霊力が強くなり始めているってことだよ」
「…なるほどね」
智晴の言うことには充分納得できる。
「考えていても仕方がないことだし、取り敢えず学校に行こうぜ」
「そうだな…」
凌輔の言葉で、私達は歩き出した。
まだ早いためか、登校している生徒は数えるほどしかいなかった。
白金高の門を入ってすぐに、旭が駆け寄ってきた。
「旭、おはよう」
「あ、一緒だったんだ。おはよー」
「すぐに駆け寄ってくるとか可愛いぞアサ!」
「えええ!?か、可愛い!?」
おどおどし始めた旭だったが、気を取り直すと私に言った。
「えっと、確か今日は職員室に行くんだよね。
昨日行ったと思うけど、僕が案内するよ」
「ありがと。まだよく場所が分かんないんだよね」
守ってあげたくなる性格の旭だが、今は頼もしく思えた。
私と旭は三人と別れ、歩き出した。
「あのね旭、実は今朝…」
智晴から頼まれていたため、私はさっきのことについて話した。
「こんな朝から悪霊が出たんだ…確かに一昨日もおかしいなーって思ったんだよね」
旭はうんうんと頷いた後、思い出したように言った。
「そうだ!今日の午後、僕の親戚の祈祷師さんが、
強力な悪霊について詳しいことが分かったから話がしたいって」
「え、ホントに!?てか、旭の親戚?」
旭が頷く。
「うん。僕の従兄弟のおばあさんで、浄化系の祈祷師なんだ。
悪霊についてすごく詳しいんだよ」
つまり偉大な祈祷師なのだろう。ちなみに課外は午前中のみだ。
「そっか。会うのが楽しみだなぁ」
話しているうちに、職員室に着いた。
そして始業前になり、私は緊張しながら二年一組の教壇に立っていた。
白金高の課外は全員参加らしく、目の前には四十人ほどの生徒が着席している。
担任の早川先生(三十歳男性・独身)が紹介してくれた。
「えー、これから夏休み中共に学ぶことになる町田沙依ちゃんだ。
美少女だからって手ぇ出すんじゃねーぞ!」
…って紹介がそれかよ!
「えーっと、町田沙依です。少しの間ですが、よろしくお願いします!」
頭を下げ、恐る恐るクラスメイトの反応を見る。すると…
「きゃー!美少女!」
いきなり抱きつかれた。
「うえ!?な、何!?」
私を抱きしめているのは女子だ。
じゃあこの子は、確かクラスで一人の…
「あ、申し遅れたわね。あたしは要由奈!
このクラスの学級委員で唯一の女子よ。仲良くしてね、沙依!」
女子…由奈はにっこりと笑って言った。
「あ…うん!よろしく!」
すると男子陣から声が上がった。
「おいおい要ぇ、一人抜けすんなよ〜?」
「てか美少女マニアっての、本当だったんだな」
「俺だって町田ちゃんとは仲良くしたいな」
声がした方を見ると、そこには中の良さそうな坊主頭の三人組がいた。
「うるさいわよ三馬鹿!あんたたちは大人しくしてなさい」
由奈がキッと睨むと、三人は「怖え怖え」と言いながら静かになった。
…強いな、この子!
「あいつらは左から順に、山田、前原、西野よ。
三人とも野球部で、通称三馬鹿よ。まあ、仲良くしてやって」
「野球部なんだ。よろしくね」
三人に向かって言うと、「うっす!」と元気のいい返事が返ってきた。
「そういえば、時和と一緒にいたところを見たけど、あなたたち知り合いなの?」
由奈が訊ねると旭が答えた。
「うん、親が知り合い同士なんだ」
それは旭が考えてくれた言い訳だろう。
すると旭の隣席の男子がからかうように言った。
「おお〜、旭もついに彼女ゲットかぁ〜」
「えぇっ!?矢内君、か、彼女じゃないよ!」
旭は顔を赤くして返した。
「今はそうじゃなくても、その内なれるって!頑張れ時和!」
後ろの席の男子も続けて言った。
「高橋君!?そっ、そんなぁ…!」
なんだか微笑ましい姿だ。旭の様子を見て、
クラスメイトも和やかな表情をしていた。
きっと旭は、四人の中でもクラスでもいじられキャラなのだろう。
「分からないことがあったら何でも聞いてね!力になるから!」
「ありがとう」
由奈がウィンクして言った。
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