コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 音色に君をのせて(完結。番外編更新中)
- 日時: 2017/04/08 08:54
- 名前: Ria (ID: L2AVnGiq)
眠れ眠れ
緑の息吹たちよ 健やかに
小さき華
芽生え 風になびく 僕の唄
初めてその歌声を聞いたのは、裏庭で。
声が高く、伸びのある綺麗な透明感のある声。
でも、どこか声に儚さを感じる。
触ったらすぐに消えてしまいそう—。
私はその歌声を、目を閉じて聞いていた。
——————————
初めまして、Ria(リア)と言うものです(^ ^)
更新は不安定です。
少なくとも1週間に1度の更新を目指して頑張りますが、更新できない時もあると思います(・_・、)
その時は気長に待っていただけると嬉しいです。
コメントも大歓迎です。
よろしくお願いします。
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目次
>>1-74 本編
>>75 あとがき
>>80 キャラ紹介
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- Re: 音色に君をのせて ( No.46 )
- 日時: 2016/09/04 18:13
- 名前: Ria (ID: 31lZGh9F)
〝鈴音…?〟
大輝が、鈴音に手を貸していた。
ゆっくりと立ち上がり、ナースに誘導されていく彼を、私は見ることしか出来なかった。
「美鈴ちゃん…」
乃亜は、私の手を強く握りしめた。
目からひとつ、涙が零れた。
「大丈夫。鈴音くんだもん」
「安静にしていてくださいってあれほど—!」
俺は、また鎖に繋がれている。
昨日みたいに皆で話したくて、美鈴の部屋に向かっている途中だった。
最近調子が良かったはずなのに。
急に視界が一転し、真っ暗になった。
そこからはあまり、覚えていない。
意識がはっきりしだしたのは、たった今。
「大丈夫か?」
ナースと入れ替わるように、大輝が入ってきた。
「大丈夫だよ」
「…嘘つけ」
大輝なりに心配しての態度だろう。
目が合うことも、向き合いもしなかった。
「心配した?」
「…そりゃあ…まぁ…」
大輝とは、昔から友達だったような感覚だ。
だんだん性格を掴んできて、俺もそれなりにいじるようになった。
「ありがとう」
「しばらく出歩くなよ」
「はーい」
大輝の背中が遠ざかっていく。
その背中が、鈴音にとっては羨ましくて仕方がなかった。
「自由に動けるの…いいなぁ…」
誰もいない部屋で1人、ぽそりとつぶやいた。
- Re: 音色に君をのせて ( No.47 )
- 日時: 2016/09/09 20:11
- 名前: Ria (ID: 31lZGh9F)
私はその日、初めて偽りのない笑顔を浮かべた気がする。
「手紙、読んだわよ」
いつもの、少しキツめの声。
ハキハキと喋るのは、母。
聞きなれた声なのに、何故か怖かった。
手紙には、私の思いが書いてあった。
いくら手紙とはいえ、あそこまで書く必要がなかったのではないか、と思う。
「美鈴」
あぁ、また言われるんだろうな。
美蘭、美蘭って—。
「ごめんなさい」
〝どうして、謝るの?〟
そう思うのも束の間。
私は母の胸元に埋まっていた。
暖かい。
それは、人だから、生きているから当たり前だけれど。
なんだか懐かしいような。
気持ちのいい心地よさがあった。
「美鈴も、大切な私の…子供よ」
きっと、母は泣いている。
声が、体が、震えている。
「今度…ピアノ聞かせてちょうだい」
離れる。
母は、真っ赤になっていた。
「な、何よ」
〝ありがとう〟
きっと、口の動きだけで、伝わったと思う。
私は、とびきりの笑顔を見せた。
- Re: 音色に君をのせて ( No.48 )
- 日時: 2016/09/11 20:37
- 名前: Ria (ID: 31lZGh9F)
久々の教室。
そっと深呼吸をする。
ドアを開ける時は、誰かしらその音に反応する。
私は、それが嫌でたまらない。
目線を下に落としながら、ドアを開けた。
「おはよう、美鈴さん」
「…おは…」
まだ、治ったばかりだから、だけではない。
きっと、いつも言われない言葉をに驚いたから。
声はかすれて、全部は言えなかったけれど、伝わったようだ。
教室はまた笑い声に包まれる。
「大丈夫…?」
席に座ると、隣の子が声をかけてくれた。
私は、声は出さずに、うなづいた。
「(どうして皆気にかけてくれるのだろう…)」
「美鈴ちゃん!」
振り向く。
そこには乃亜の姿があった。
私は、きっと乃亜が気配りをしてくれたんだ、と感じた。
「呼び捨てでいいよ、乃亜」
まだ上手く声は出せないけれど。
「そっか!改めてよろしくね!美鈴!」
きっと、私は1歩ずつ前に進めているのだと思う。
- Re: 音色に君をのせて ( No.49 )
- 日時: 2016/09/13 22:39
- 名前: Ria (ID: 31lZGh9F)
その一言は、突然過ぎて。
思わずピアノが乱れてしまった。
私は放課後、乃亜がピアノを聞かせて欲しいと言ったため、音楽室に来ていた。
鈴音といる時も、話しながら弾くことができる。
だから、いつも普通に会話をしているのだが。
乃亜がいきなり、こう言ったのだ。
「鈴音くんのこと好きなんだねぇ」
そう、この一言で。
私はピアノを奏でていた手を止めた。
「なんで?」
声は落ち着いているように聞こえるかもしれない。
でも、心臓の音はとてもうるさい。
「だって…ねぇ?」
乃亜はにこにこし始めた。
「…好きって…」
何なのだろう。
私は、ピアノを弾くことが好き。
でもそれは、乃亜の言う好き、ではない。
「…分からない」
「じゃあ!美鈴に質問!鈴音くんはどんな存在?」
「鈴音は…」
歌が上手で。
私のピアノが好きと言ってくれて。
来ない日は、寂しく思ったり…。
私は考えながら、乃亜に話した。
「大切な存在?」
大切な存在?
大切な存在。
「それって、恋じゃん?」
乃亜が嬉しそうに微笑んだ。
- Re: 音色に君をのせて ( No.50 )
- 日時: 2016/10/02 09:21
- 名前: Ria (ID: 31lZGh9F)
「好き…?」
誰が…?
鈴音が…?
私は急に顔が熱くなった。
「青春だねぇ」
乃亜が楽しそうに笑った。
「乃亜だって…!大輝とはどうなの!」
話題を逸らすようにとんでもないことを聞いてしまった。
流石に怒られ…
「ななな何言ってんの!?」
…図星だったみたい。
「言わないでよね…」
なんだか、微笑ましい。
恋の話、なんてした事が無くて、楽しかった。
「そうだ!今日放課後遊べる?」
「ごめん…今日なんだ」
「あぁ!そっか!んじゃあまた今度ね!」
「うん」
今日は—。
母に、ピアノを聞かせる日。
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