コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

音色に君をのせて(完結。番外編更新中)
日時: 2017/04/08 08:54
名前: Ria (ID: L2AVnGiq)

眠れ眠れ


緑の息吹たちよ 健やかに


小さき華


芽生え 風になびく 僕の唄









初めてその歌声を聞いたのは、裏庭で。

声が高く、伸びのある綺麗な透明感のある声。

でも、どこか声に儚さを感じる。

触ったらすぐに消えてしまいそう—。

私はその歌声を、目を閉じて聞いていた。






——————————






初めまして、Ria(リア)と言うものです(^ ^)
更新は不安定です。
少なくとも1週間に1度の更新を目指して頑張りますが、更新できない時もあると思います(・_・、)
その時は気長に待っていただけると嬉しいです。
コメントも大歓迎です。
よろしくお願いします。


☆8月10日参照100!☆
☆8月18日参照200!☆
☆9月9日参照300!☆
☆9月21日参照400!☆
☆10月8日参照500!☆
☆10月23日参照600!☆
☆11月4日参照700!☆
☆11月9日参照800!☆
☆11月18日参照900!☆
☆11月26日参照1000!☆
☆1月3日参照1100!☆
☆2月20日参照1200!☆
☆3月21日参照1300!☆
☆4月5日参照1400!☆


目次

>>1-74 本編

>>75 あとがき

>>80 キャラ紹介

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16



Re: 音色に君をのせて ( No.36 )
日時: 2016/08/19 20:49
名前: Ria (ID: 31lZGh9F)

窓から入ってきた風が、カーテンを踊らせる。

私の楽譜も、ページが次々にめくれていった。

「風が答えてくれたみたいだ」

鈴音はハラリと落ちた楽譜に手を伸ばす。

こういう時でさえ、素晴らしいって思う。

自然に耳を傾け、声を聞く。

自然は喋りなどしない。

でも、彼が言うと本当にそうじゃないか、と思える。

「本当に自然が似合うね」

笑顔が眩しい女の子には、ひまわり。

そんな風に、彼の後には。

自然が見えるのだ。

「俺も…伴奏が入ったらもっと素敵になると思う」

今の彼は、まるで。

小さき華。

「ね、あの曲。題名なんて言うの?」

彼の答えをじっと待つ。

「イノチノ唄。自然のひとつひとつが主人公なんだ」

きっと、普通の人が聞いたら、首を傾げるかもしれない。

でも、私は歌を聞いた時から。

「素敵な題名だね」

だからこそ、意味を理解することが出来る。

私はきっと、誰よりも。

この歌が大好きだ。

Re: 音色に君をのせて ( No.37 )
日時: 2016/08/23 22:39
名前: Ria (ID: 31lZGh9F)

外は大雨が降っていた。

けれど、私には関係なかった。

ひたすら、遠くに走った。

雨音は私を拒んでいるのか。

激しく振り続けた。

喧嘩。

家でピアノを弾いていたら、怒られた。

それだけなのに。

大好きなことを辞めろなんて、私には耐えられなかった。

「(どうして分かってくれないの…)」

そんなに双子の姉の方に期待していた。

なのに、死んでしまった。

残ったのは、私。

だから—。

「っうわぁあああっ…!」

私なんて…。

そう考えると、いつの間にか自然と涙を流して叫んでいた。

「風邪ひくよ」

気がついたら、隣に誰かが立っていた。

鈴音。

「でも、雨に濡れたい気持ち、分かるなぁ」

彼もまた、傘をささずに濡れていた。

Re: 音色に君をのせて ( No.38 )
日時: 2016/08/27 07:08
名前: Ria (ID: PBOj5esF)

どのくらい泣いていたのだろうか。

鈴音は、何も言わずに隣に居てくれた。

私が落ち着くと、2人で近くの橋の下へ移動した。

雨は、冷たかった。

髪の毛から雫が地面へと落ちる。

「しばらく止みそうにないね」

ずっと、泣き叫んでいた。

だからだろうか。

少し喉が痛い。

「雨ってさ…なんかいいよね」

鈴音は橋の下から手だけ出して、濡らしていた。

「雨が上がると…空には虹が出て」

私と向き合う。

「当たり前の事だけど、凄く暖かい気持ちになるんだ」

〝そうだね〟

「…?美鈴…?」

もう、完治していた。

そのはずなのに。

〝また…届かない…〟

私は、目の前の鈴音にすら声が届かなくなっていた。

Re: 音色に君をのせて ( No.39 )
日時: 2016/08/28 09:16
名前: Ria (ID: 31lZGh9F)

鈴音は、すぐに病院を勧めてくれた。

しかし、私は首を横にふった。

鈴音は何も言わなかった。

それが少し、嬉しかった。

「でも、親には話した方がいいよ」

〝イヤ〟

声は出ていないのに、彼は理解していた。

「言葉で伝えるのって、1番分かりやすいと思うんだ」

歌も同じだよ、と続ける。

「口では言えないこと、書いちゃえば伝わるんだよ」

親に期待されていない、私。

家の中はとても居心地が悪くて。

〝怖い〟

伝えるのが、怖い。

声が出なくなった時、私は親に伝えた。

自業自得だって言われて、ため息をつかれた。

今でもそれを覚えている。

当たり前だけど、その言葉だけで。

私は必要とされてないんだ、と実感した。

「…俺、病院で待ってるよ」

気が付くと、空は晴れていた。

鈴音は儚げに笑って、歩いていった。

〝待ってる…?〟

彼が病院で待ってる意味が、分からなかった。

Re: 音色に君をのせて ( No.40 )
日時: 2016/08/30 20:05
名前: Ria (ID: 31lZGh9F)

声がまた出なくなってしまったことを、紙に書いて伝えた。

予想通り、母はため息を漏らした。

いきなり家を出て、濡れて。

そして、声が出なくなって。

「全部アンタのせいだから」

そう言いつつも、病院に行く準備をしてくれた。

〝なんで、話さないといけないの?〟

私の心配なんかしていない。

なのに、本当の気持ちを打ち明けたって。

〝何も変わらないでしょう?〟

だったら。

自分の気持ちを押し殺して。

もう、これ以上—。

「早く乗りなさい」

口では言えないこと、書いちゃえば伝わるんだよ。

〝でも、私は…変わりたいから〟

そう思えたのは、鈴音のおかげなんだ。

まずは、身近なことから。

私は自分の気持ちを書いた紙をポケットにしまい。

そして、急いで白い紙に鉛筆を走らせた。

気持ち悪いって、思われても構わない。

私は少し背の高い母をつついた。

「何—」

恥ずかしくて、目を合わせる事は出来なかったけれど。

やっと。

前に進めた気がする。

〝ごめんなさい、ありがとう〟


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16